写真_2017-12-07_10_58_56

語られる物

気付けば睡魔に勝てず寝落ちし、朝6時にスッと目がさめる。
ベランダに出て、タバコに火を灯す。まだ空はオレンジ色を徐々に朝の色にかえていく道中。ここ数日の寒さを感じないほどちょうどいい涼しさだった。

いつもより早いご主人の足音を聞きつけて、猫たちがベランダに集まる。たいして広くもないベランダのベンチにおじさんと猫二匹が密集している。おそらくこの家で今一番暖かいのがここなのだろう。

手をつけられなかった積み残しの仕事と、荒れ果てたデスクを整理する。なんとか平常運転に戻るな…と一息ついて静かな家で業務を開始する。一つ一つ丁寧に閉じていく。仕事のイメージはいつもそんな感じだ。来年にまた開くものもある。本棚に並べる。気がつけば、そういうものがたくさん並んでいる。

一度閉じると2度と開かれないものも、もちろんある。
でも、そういうものは少しずつ減らしてきた。読まれない本は、開かない限り忘れ去られている。この自分ですらも。

色々な出来事を作る仕事をしている。自分が生きて関わるものごとが忘れ去られていくのは寂しい。一生懸命育てたものごとを育てた本人すら忘れてしまうというのは、この世界で一番悲しいことだと数年前に考えた。そこから、少しでも1日でも長く、色々な人の記憶に残り、また開きたくなる本のようなものを目指している。

どうだっただろうか。今朝閉じた本は、少なくとも僕は忘れないし、また来年に開いて、懐かしいなとほくそ笑み、今年はどんなページを増やそうかワクワクしたい。また来年、新しい章を生み出しましょう。

そして、机に積み上がった無数の本を開いて、この物語をどう進めるかに移り変わっていく。物事を作るということは物語を作るということ。語られるものを生み残していこう。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。