もういいよ
変わりゆく人間よりも、変わらない街並の方が胸を抉る。当時優しくしてくれた人に何年振りかに会って態度が変わっていたら「ああこの人は変わったんだよな」って諦めがつくのに、いつか二人で過ごした場所に足を運ぶと何だか懐かしい情景が浮かんで割り切れなくなるのは何故だろう。いつか時間が経ったらすっかり思い出になってしまった駅を巡ってみようかなと思うけど、同じ温度で火傷してしまいそうで、何なら想像しただけでしんどくてとてもじゃないけど行けない。何かの本で読んだ「もう君が住んでいないマンション」っていう状況に当時は感情移入できなかったけど、実家じゃなければその瞬間が訪れるのね。と一人暮らしを始める一か月前になって気付く。あとね、本当に好きな人からは好きな音楽を教えてもらわない方がいい。
今を変えたいわけじゃないけど、もう一度あの時の空気を吸いたいなっていう瞬間があるから、そういう瞬間をどれだけ人生にちりばめられるかだなあと思う。もうすぐ22年間過ごした場所での生活が終わるんだけど(だからしみじみ色々考えている)、そういう瞬間がどれだけあったのかなあ。これからどれだけ出会えるのかなあ。
この間、なんで結婚願望がないの?って話をしていて、「法的に結ばれるんじゃなくて、友達みたいに自分の意志で繋がってる方が強固な気がするじゃん」って答えた。そう言ったすぐ後で、みんな自分の意志で法的に繋がろうとするんだからそれは答えになってないじゃんと思った。そのくせ人は彼氏、彼女、友達、何にだって関係性に名前を付けたがる。私だってきっと例外ではないし、損得勘定も社会的な体裁もなく、ただ自らの自由意志だけで繋がってる関係なんてほぼ無いのだろうと思う。じゃあ何でだろう、好きで居続ける自信がないからなのか、ずっと繋がれておくのが嫌だからなのか、「意志で繋がる」なんて綺麗な言い方をしたけども、いつでも離れられるぐらいの距離感でいたいのか。自分でもよく答えは分からないけど、確実に自分に結婚願望がないことだけは確か。滅茶苦茶という漢字の通りに仕事を頑張るので見ていてください。
でも、そうは思えなかったことがある。一人で生きていくつもりだったのに、スーパーの帰り道に毎日これが続いても幸せだなあと思って本気で考えた。でも自分が続けたいと願った永遠を他人の手で終わらされるのは怖いから、いつも自分が壊してしまうね。多分もうそういうのは何もかも上手くいかないタイプの人間だから自分のことは諦めたし、仕事を頑張った達成感から得られる幸せだけ手にしていくことにした。一度だけ、だけど、たった一度だからこそずっと残ってる。
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