マーケティング 価値を考える:女子高生はなぜドトールにいないのか.2

先日、名古屋の金山駅で、ドトールコーヒーに立ち寄ったときのこと、、、女子高生さん、いました。

いきなりタイトルと違ってしまいましたが、、、彼女たちは「映え」には興味がないようで、隣同士、問題集のつきあわせをしていました。

さて今回は、前回からの続きです。

前回は「情緒的価値」に着目して説明しましたので、今回はもう少し具体的に考えたいと思います。

・情緒的価値の事例
親しいダイニングバーでのことでした。
ここの店長(バーテンダー)さんは、和食出身の職人肌タイプ。何人かで予約したとき、大人好みの料理のコースでした。僕は料理が好きで、そのことを知っている店長さんは、頑張ってくれたようです。テーブルにはかなり若い女性もいたので、あまり見たことがない料理に喜んでいました。

この頃飲食店では、女子会コースが流行っていて、このお店でもコースを用意していましたが、伸び悩んでいました。そこで僕は、「コストを落としてキラキラ感を出す」という提案をしました。
こういう言い方をすると、女子会コースのお客さんをナメている、と思われるかもしれませんが、そうではありません。
先に述べたように、この店長さんは職人肌です。普段のお客さんも、比較的年齢層が高く、舌の肥た方が多いです。そうした料理や食材は、若い女性にはあまり馴染みがありません。これを店長さんに伝えるのに、1番良い表現だと思ったからです。

その後このお店の女子会コースは、かなり人気になりました。

情緒的価値は、共感できるストーリーが必要です。またSNSで発信するとき、共感を拡散できる必要があります。例えば2,500円の女子会コースは、高級フレンチのような共感は生みません。「また来よう」とか、「次は他のお友達と来たい」というような、比較的手軽で、わかりやすい必要があります。
このお店の普段の料理は、女子会コースとは、共感のポイントが違っていたのです。

・情緒的価値と機能的価値のバランス
製品やサービスによって異なりますが、情緒的価値を重視するとき、機能的価値とのバランスも大切です。
例えばテレビ番組などで、とても安い、大盛りの刺し身定食を紹介しています。タレントが「オトク!」「安すぎる!」などと言いながら食べてみて、「新鮮!」「美味しい!」とコメントを重ねます。
ある日同じタレントが、違う番組で、高級料理のコメントをしていました。もろんコメント自体は違いますが、どちらもとても美味しいと言っています。
これはどちらも、機能的価値と情緒的価値のバランスが取れている状態と言えるでしょう。要は費用対効果が高い状態です。単に機能的価値だけで判断すれば、品質と価格は比例します。

・情緒的価値の変化
情緒的価値は、日本の、特にモノづくりが中心の地域では、軽視されがちです。しかし実はそれほど難しい話ではありません。
例えば「何を食べるか」と「誰と食べるか」と考えれば分かりやすいでしょう。大好きな人と食べる食事は美味しいものです。しかし嫌な人との食事は、美味しく感じられません。
顧客満足を考えるうえで、情緒的価値はとても重要な視点ですが、これが変化しています。
21世紀に入り、世界の産業の中心が、重工業からGAFAと呼ばれるIT企業に移りました。こうした企業の製品、例えばアプリケーションやデジタルコンテンツは、限界費用が極めて低い製品です。
限界費用とは、生産量の増加分一単位あたりの総費用の増加分を指します。簡単に言えば、製品を余分に1個作るのにかかる追加費用です。例えば製品を作るのには、設備や機械が必要です。余分に1個作れば、材料費と人件費はかかりますが、設備費は追加がありません。そのため、大企業が大量生産をすれば、それだけ儲かることになります。
しかしソフトウェアやデジタルコンテンツは、コピーするだけです。しかも今はネット配信てすから、販売コストすら僅かです。

実はこの10年ほどで、このような製品やサービスが急激に増加しています。

これらは多くの人にとって、とても安価に購入できます。今世紀に入り、「持っていない物」がなくなった時代、むしろ「もう要らない」というものも増えました。これを埋めているのが、情報サービスです。消費の多くがこうした製品(とここでは呼びます)に変わったことで、ものを持つこと自体に意味がなくなりつつあります。
そして消費者が求めるようになったのは、共感のストーリーを実現するものです。

こうした状況では、ものづくりの考えに基づいた「モノ・コト」は通用しません。例えば新製品を開発するときでも同じです。情緒的価値をうたい文句にしながら、機能的価値を追求した製品では、消費者が求める情緒的価値は生み出せないからです。

どのようなストーリーを提供できるのが、ビジョンとイメージが大切になります。


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