この1年の「スーツの変化」に思うこと

先日、とあるスーツ量販店の、路面店が閉店しているのに気付きました。

新型コロナウイルスの影響から、この1年で、衣料品は、極端に売れなくなりました。スーツなども当然売れなくなっていることに加え、ファストファッションブランドの低価格製品や、パジャマスーツ、作業着スーツといった、ライフスタイルの急速な変化に合わせた、新たな製品が人気です。

今回は、こうした状況から、僕が感じたことについて記したいと思います。

・僕とスーツ
僕は元々あまりスーツを着ません。
スーツは、20代の中頃、学会に出席するために買いました。それまては大学入学時の1着だけです。
学会ということで、あまりみっともない服装で行くわけにはいきませんから、父の助けもあり、それほど高価ではありませんが、お店の方のアドバイスに従い、体に合わせた‘それなり’のものを買いました。最終的に春夏2着、秋冬2着。それなりにしっかりした服装に見えますし、最初にしっかりしたものにしたので、実は今でも着ます。

スーツを着るのは、特に大事な用事や学校行事を除けば、学会と卒業式・入学式で年間20回程度、長く着られれば、最初に多少高くても、十分元がとれます。

ただし、形が古くなって、ファッション的には、春夏ものはちょっと厳しいです。(笑)

僕は普段はほとんどスーツを着ません。働くようになってからは、ジャケットにジーンズが定番です。今年に入り、暖かくなってからは、定番スタイルに、Tシャツ、スニーカーなんてことも。

気楽になったものです。

・学祭さんとスーツ
学生さんに就職活動の指導をするとき、特に男子学生さん(女子学生さんもすすめます)には、百貨店の、オーダーメイドのシャツ売り場を見に行くように言っています。
別にそこで買う必要はありません。売り場の人を見るのです。何か聞かれたら、「指導教官から言われて来た」と言うように指導しています。
すると、スーツの着方や選び方について、ちゃんと教えてくれます。嫌な顔をされたという話は聞きません。
百貨店ですから、物の価値を伝えて、将来の顧客として扱ってくれるのでしょう。

結局、アドバイスに従った学生さんの方が、就職活動の結果が良かったように思います。

やはり、身だしなみは大切です。

・世の中のスーツについて考える
昨今の状況はさておき、この10年ほどで、街中でカッコよくスーツを着ている人が少なくなったように思います。
別に高級品である必要はありません。似合っていればよいのですが、変に派手なものも、あまり良いとは思いません。ノートPCを持ち歩く人が増えたのか、自転車や、スーツに合わせたものならともかく、スーツに普通のリュックはどうにも、、、

別に‘普通’でいいのです。なんと言うか、微妙に気の抜けたというか、、、そんなスーツ姿が増えたように思います。

一方で、僕がよく知る経営者の方で、いつもとてもキレイにスーツを着こなされている方がいます。
知らない方は高級品だと思うてしようが(僕も最初そう思いました)、その方がスーツを購入しているお店を知っていますから、価格もわかります。オーダーメイドてすが、それほど高価でもありません。姿勢や立ち振舞い、話す言葉も含めて、スーッが引き立てます。

・スーツとは何か
スーツの変化を見ていると、これまでスーツを否応なく着ていた人たちが、スーツの着方が変わったり、買わなくなったことで、格安のものや、これまでスーツの役割にはなかっものが売り出されるようになったと感じました。

格差社会とは、あらゆるものの格差を指しますが、最終的には、僕は「決定権」の格差だと考えます。決定権の有無が、あらゆる格差の原因になるからです。
例えば「パジャマスーツ」で考えるなら、常にスーツ姿に見える状態を強いられながら働くということになります。オンラインで人と会うときだけ着替えるといった余裕さえ与えられないのでしょうか。

これが働き方改革と言うならお笑い草です。

1990年代、米国の経営学者がこんな考え方を提示しています。
■頭脳労働と肉体労働を分ける「ホワイトカラー」「ブルーカラー」はもはや存在せず、労働者のほとんどが「グレーカラー」ではないか。
■「グレーカラー」の対になるのは「ゴールドカラー」という人々で、自分の意思や感情に従い、他人の意見やルール、時間に縛られずに働き、生活できる人々。

上記の違いについての見解を思い出した僕は、最近のスーツの急激な変化は、資本主義の基本的な問題である格差、意思に関わらずスーツという‘労働服’を着なければならなかった労働者の、変化の象徴のように感じました。

『菊と刀』では、罰がなくても恥をかかないようにする文化と紹介された日本、みっともないという言葉を聞かなくなりましたが、、、

今後、スーツがどう変化するのか、、、もしかしたらその辺りが、私達の社会の行く末の、1つの指標になるかもしれませんね。

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