読者からの質問 chatGPTをどう捉えるのか

読者の方からchaGPTについてのリクエストを頂きました。この数ヶ月で、最もホットな話題の1つで、ぼくも色々な記事を読んでいます。
記事を読むと、とても優れているという話や意外と使えないという話、中にはお笑いのような話やディストピアのような話もあります。

僕も興味はあるのですが、AIについては全くの素人ですし、プログラミングについては全く解りませんが、以前、AIを理解するために、友人である先生の、こちらの本を読みました。

荒川俊也著『AIエンジニアのための統計学入門』2020,科学情報出版。
https://www.it-book.co.jp/books/100.html

ちなみにプログラミングの話の2章はちんぷんかんぷんでした。

さて、今回の会話形AIは、かなり優秀ということで評判になってきいます。僕はデザインの仕事とも関わっていて、この前からAIが書いたイラストや文章が、プロの仕事や著作権を侵すなどという話題も出ていました。
もっとも、インターネット時代になり、模倣や著作権侵害の話は既に大きな問題になっている訳ですから、AIの話はその延長線上と言えるのかもしれませんが。

そこで今回は、AIの話題(あえて問題とは書きません)について考えます

・経営経済学者が受けるAIの質問
僕の専門は、ご存知の通り経営経済学ですから、AIについて、最も多く受ける質問は、「AIに仕事を奪われる」という話です。

こ話題について、実はロジカルシンキングの講義で、学生さんに議論をしてもらったことがあります。
このとき、実は最初にわざと「ミスリード」をしました。学生さんにはこう質問しました。

Q1.人が‘機械’に仕事を奪われるという話を聞くが、‘AI’は人の仕事を奪うのか?

すると、ほとんどのグループで、コンビニエンスストアなどの単純労働などが奪われると答えました。

次に以下の質問をしました。
Q2.AIとはどんなものか?


ちなみに辞書には以下のようにあります。
コンピューターで、記憶・推論・判断・学習など、人間の知的機能を代行できるようにモデル化されたソフトウエア・システム。   (大辞泉)

学生さんたちは適切な答えにたどり着いてくれました。

そして再度、以下の質問をしました。
Q3.AIは人の仕事を奪うか?

学生さんたちは、まだ奪われないとか、基本的には奪われないと答えました。

さて、この議論の内容については、読者の皆さんで考えて頂きたいのですが、実は人類は、歴史の様々な時点で、「仕事を奪われる」という体験をしています。

・「仕事が奪われる」ということ
人類が大きく発展するたびに、「仕事が奪われる」という現象は発生しています。

解りやすい例が産業革命です。

第一次産業革命(19世紀)には、蒸気機関によって人の労働力が陳腐化、つまり価値が極端に下がりました。第二次産業革命では、大量生産により、作業が単純化され、人の技能(個人の持つ作業能力)が陳腐化しました。第三次産業革命は、電気化、自動化によって、専門職能が陳腐化しました。そして第四次産業革命では、人の判断力が陳腐化しました。

もう少し具体的に、私達の生活に近いところで説明しましょう。

1998年、木型師だった父の勤め先が工場閉鎖になりました。当時僕は大学院の博士課程、父の勤め先が厳しいことは判っていたので、意見を述べましたが、「お勉強と現場は違う」という言葉で一蹴されました。しかし失業した後、これからの産業や仕事の変化について急に質問を受けるようになり、CADを覚えましたが、元々製図能力が高いので、この技術を活かせるようになりました。

また違う例で、最近「使えない税理士」という話を聞きます。
コンピューターが普及する前は、全て手作業で帳簿を付けていたわけですから、税理士はかなり高度な頭脳労働でした。
しかしコンピューターが普及し、税理士業務が自動化されると、その役割として税務指導や財務コンサルティングなどが求められるようになりました。
同じ資格、同じ業務であっても、求められることが変わってしまい、それまで必要だった能力では、資格はあっても評価されなくしまったのです。

・AIがもたらすもの
それではAIが普及することによって、何が陳腐化されるのでしょうか。

AIは人工知能ですから、文字通り「知能」による労働が陳腐化されます。それでは知能労働とはどんなものでしょうか。

それは人が生活の中で、常に行っている「判断」を伴う労働です。
人は時としてミスをしますし、疲れもします。しかしAIは一定の条件下で、バグがなければ、適切な判断を下し、疲れることは(今のところ)ありません。ミスが事故などに繋がる判断を必要とする労働から、物理的に可能な範囲で導入されるでしょう。

ただし、先に述べた単純労働は難しいのではないでしょうか。

レジの自動化ならともかく、コンビニエンスストアの業務を全て自動化するロボティクス店舗か人型ロボットの導入には、かなりコストがかかりますから、低賃金の労働を代替することは難しいでしょう。
そして、このような説明をすると、人類には低賃金の労働しか残されなくなるように思われるかもしれませんが、そうではありません。

人にあって人工知能にないもの、それは「知性」だと、僕は考えます。

人の知性がもたらすものは、正しく今求められている豊かさの実現です。

こんなふうに考えて、将来を見据えてほしいと思います。

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