マネジメント 職種と働き方

先日、広告、グラフィックデザイナーの集まりがあり、面白い話を伺いました。

グラフィックデザインは、プロフェッショナルの分業で成り立っています。デザイナー、イラストレーター、フォトグラファー(写真家とは言いません)、オペレーターなどなど、、、全て専門技術職です。全ての技術を持っている方も多いのですが、やはり専門があります。
しかし餅は餅屋、それぞれの方が、最も得意な分野を担当し、最高の制作物を生み出す努力をしています。

しかし残念ながら、発注する方は、そのことは知りません。

偉そうに言っていますが、僕10年前までは、何も知らない発注者でした。
当時は大学に勤務していて、ぎょうしゃさんまかせ。後から知ったのですが、大学の場合、印刷物は予定が決まっており、予算も決まっていて、値切ることもなく、企業よりは儲かったそうなのですが、まあ、軽くお願いをしていました。

ところが企業の場合、そうはいきません。

広告は必要ですが、多くの場合売上げのために、言わば慣例的に行ってきました。ところが費用対効果が見えず、、、そうなると、企業の収支が悪化すれば、一気に削減されます。
近年ではソフトウェアの発達や、SNS、動画配信など、誰でも簡単にプロモーションが可能になり、しかも‘ある程度’それらしく見えるものが作れてしまいます。
またデザインは、作業工程が見えないことや、以前の僕がそうでしたが、アート的にササッと書いたもののように思われることも多いこと、また「プロのクオリティを安く」などといったネット広告(実際にはフォーマットに並べるだけで、良くないのですが)が数多く見られ、安易に「安くしてほしい」という声が出されるようになりました。

この点については、僕のnote,「プロモーションの考え方」で、財務会計による費用対効果を紹介しました。

特に日本は、またこの中部地域は、製造業の考え方でサービスを考えるため、サービスにどれだけ専門的な能力が費やされているか理解されていません。

紹介したデザインの会合では、それぞれのデザイン分野で、どれだけ費用がかかるかを、顧客に明示する必要があるという話が出されました。
確かに、素人から見ると、専門職の仕事というのは解らないものです。特にバブル期までは、広告費も潤沢てしたから、お金をかけられました。そうすれば、もちろん良いものができます。しかしバブル崩壊以降、コスト削減が急務となります。そのためデザインだけでなく、多くの産業で、下請け企業の価格が引き下げられることとなりました。
しかしそれまでの日本企業がプロダクトアウトてあったことも事実で、説明責任を果たしてこなかったのも事実なのではないでしょうか。

品質の高いものは、当然価格が高いです。しかし同時に、なぜ高いのかを説明する必要があります。その必要がなくなって初めて、ブランドエクイティを確立したことになります。

・ホワイトカラー・エグゼンプション
ところで、ホワイトカラーが時給で働いているのは、ほぼ日本だけで、世界から見るとかなり特殊ですが、このことは、日本ではあまり知られていません。
海外では、専門職採用、能力給が一般的です。そうした人材は、働き方や働く時間など、ある程度本人の判断に任されています。その代わり責任として、一定以上の成果をあげることが義務付けられます。そのため、職種によって、収入が大きく異なります。

このような制度を、ホワイトカラー・エグゼンプション制度と言います。

日本においても、例えば僕の前職である大学の場合、役職(講師、准教授、教授)と勤務(経験)年数によって給与が決まっていて、時給ではありません。夏休みなどの、講義や職務がないときでも、決められた給与が支払われますが、これは「研究」と「教育」を含めた、全ての内容に対しての報酬だからです。

しかし日本では、職種によって初任給に違いがありますが、基本的には年功賃金ですので、例え専門職でも、ある程度勤続年数を重ねないと、能力に見合った収入が得られないことが少なくありません。
言い換えれば、能力や成果が見合っていなくても、長く務めていれば、収入は高くなります。
こうしたことは、日本企業の生産性の低さや、上級職の人が学ばない原因の1つと言われています。

昨今日本では、新型コロナウイルスの影響から、テレワークが進展したことで、管理職の能力が疑問視されたり、不要という意見が出されていますが、これは当たり前の話です。
年功序列だけで、自分で管理者としての能力開発をしていないのですから、管理能力などあるわけがありません。特にこの1年は、社内ノウハウが通用しなくなったのに、新たな働き方に対して古いノウハウを押し付けているのだから当然です。

ホワイトカラー・エグゼンプションでは、このような管理職はそもそも存在しません。

実は以前に、日本でもホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入しようとした例はあります。しかし、というかやはり反発も多く見られ、実現しませんでした。
しかしテレワークの推進などから、似たような状況になっている企業も見られます。

デザイナーの集まりの話から、こんなことを思い出しました。

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