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【読書録】『親の介護、はじまりました。』堀田あきお&かよ

今日ご紹介する本は、堀田あきお&かよ両氏の『親の介護、はじまりました。』(2016年、ぶんか社)。上巻と下巻の二分冊になっている。

本作品は、漫画である。著者の堀田あきお氏とかよ氏は、漫画家ご夫婦である。おふたりの公式サイトはこちら。

実は、私は、今から20年以上前、ご主人の堀田あきお氏の漫画にはまっていたことがある。同氏の『アジアのディープな歩き方』という漫画(単行本)で、自身の東南アジアでの旅の参考にさせてもらっていた。とても親しみのあるテイストの絵で、ご自身の海外渡航経験を生かしたストーリー展開もお上手だ。手塚治虫に師事されていたというのも納得だ。

その堀田あきお氏と奥様である堀田かよ氏が、かよ氏のお母さまの介護について漫画にした作品があると聞いた。そこで探して手に取ってみたのが、本作『親の介護、はじまりました。』だった。

これは、著者たちの実話である。ある日、「カヨ」の実家の群馬県で暮らしている実母の「トシ子」(当時67歳)が、大腿骨を骨折してしまう。そのため、歩行が困難になってしまった。カヨさんの実父でありトシ子さんの夫である「ムネオ」(当時73歳)は、家事など何もしない、昔ながらの「ザ・昭和のおとうさん」だ。トシ子のサポートをするために、カヨと夫の「アキオ」は、仕事をやりくりしながら、車で2時間半の距離にある実家に通う・・・。

とても大変な状況を描いたドタバタ劇であり、関係者のストレスや不満が痛いほど伝わってくる。病院やケアマネージャーさん、デイサービス、自宅リフォームなど、関わらなければいけない人や物事が一気に増えていく。状況の変化や手続きの多さ、複雑さに困惑する。家族間でのコミュニケーションも難しくなる一方。トイレの処理が難しくなると、それはそれは大変だ・・・。こういう状況は、誰にとっても、他人事ではない。

このように、ある意味とてもシリアスなストーリーなのだが、意外にも、読後感は明るい。大変ななかにも、どこか、一筋の希望が感じられる。著者の絵とセリフが、人間臭くて、時に、とても優しい。そして、家族が、ドタバタと喧嘩をしながらも、限られた時間を大切な人と大切に過ごすことの尊さを感じさせてくれるのだ。

著者のおふたりは、おそらく、このストーリーの当時は50代だったと思われる。私も今、アラフィフで、高齢の親を持つ身。昨年、義理の親が突然寝たきりになり、数ヶ月の後に看取ったのだが、介護の普段が重く、精神的に辛かった。そして、私の残りの親たちも、いつ同じような状況に陥ってもおかしくない。頭ではそう分かっていたのだが、その時がくるまで、ついつい目を背けてしまいがちだった。

しかし、この作品に出会えた今、介護に対するプレッシャーが、少し、和らいだ。漫画のストーリーを追いながら、制度や手続きなどを疑似体験できる。いざその時が来ても、パニックにならず、家族を傷つけず、自分も頑張りすぎずに行動できるよう、心の準備もできる。周りの人たちと協力し合えば、何とかなりそうだ、という希望が持てる。そして、何より、カヨとアキオ、トシ子とムネオのドタバタ劇を見ていると、介護にもコメディのような一面があるなと感じられ、気が楽になる。

家族の介護に疲れている人、これから来るだろう介護の負担を心配している人などに、心からお薦めしたい。単行本のほかKindle版もあり、サクッと読めるので、家事や介護の息抜きにいかがだろうか。

以下、本作品で特に印象に残ったセリフを引用して、まとめとしたい。

親の介護って 誰のためって 自分のためにしてるのかもしれない
後悔しないようにー 悔いなく親と別れられるようにー
どうか母が人生の最期に「生きてきてよかった」と思ってくれますようにー

下巻 p162

ご参考になれば幸いです!

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