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【読書録】『コンサル一年目が学ぶこと』大石哲之

今日ご紹介する本は、大石哲之氏のビジネス書、『コンサル一年目が学ぶこと』(2014年、ディスカバー・トゥエンティワン)。

著者の大石哲之氏は、外資系コンサルティングファームに勤務したご経験や事業の創業のご経験を有する投資家だ。本書は、分冊版など含めたシリーズ18万部を突破したというベストセラーだ。

本書について、まずはAmazon.comの紹介文を引用してみよう。

本書は誰でも役に立つ、普遍的なビジネススキルを厳選して解説しています。
ビジネス・コンサルタントは入社1年目から徹底的にビジネスの基礎を叩き込まれます。
本書では一流のコンサルタント会社を経て独立し様々な業界で活躍している方々に取材し、コンサルタント時代で学んだ中で今でも実践している外せないスキルを紹介します。
厳選した30のスキルは、百戦錬磨のコンサル出身者が一過性ではなく15年、20年実践し続けている普遍的な仕事術です。
社会人1年目からベテランの皆さんまで、必ずお役に立てる仕事術です。

私がこの本を手に取ったのは、コンサルタントの仕事術を身近に眺める機会があり、常々、好感を持っていたからだ。

私は、複数の外資系企業の日本法人に長らく勤めてきた。会社の重要プロジェクトにも関わる機会も、数多くあった。そのうち、特に重要な戦略を立案し実行するにあたっては、外資系コンサルティングファームから複数名のコンサルタントで構成するチームを雇って、期間を区切ってサポートをいただくことが多かった。

はっきり言って、外資系コンサルティングファームに支払うフィー(報酬)は、べらぼうに高い。「そんな短期間のサポートに、ウン千万円も払うの?」というレベルである。長めのプロジェクトになると、すぐ、億に届く。これだけの予算があれば、何人の部下が雇えるだろうか。私の給料はたったこれだけだし、こんなに経費削減もしているのに・・・。何度、ため息をついたことだろう。

しかし、実際、外資系コンサルからのコンサルタントたちを職場にお招きして、仕事をご一緒してみると、おおむね、みなさん大変優秀であり、仕事がデキる(時々、例外もあるが)。

何より、仕事のスピードが早い。要所要所で、プロセスが、きれいに可視化される。いつまでに、誰が、何をやるかを、瞬時に整理してくれる。プレゼンの要領が良い。いつも要点にズバリと切り込む。ロジックや数字が明確。一切の無駄がない。こういう人々と働いていると、効率的で、大変気持ちが良い。

あまりにも頭脳明晰でキレ者の皆さんなので、多くの古株の社員たち(外資系企業でもドメスティックなメンタルの社員は多い)にとっては、脅威である。比較されて、自分たちの、能力のなさ、要領や段取りの悪さが、浮き彫りになる。嫉妬の感情をむきだしにし、「やっぱり外資コンサルは態度が悪いよね」などと陰口をたたいたりする者もいる。大変格好が悪い。

そういう人々は、えてして、ビジネス会議での議論や、プレゼンがヘタすぎる。持ち時間を過ぎても、延々と終わらないプレゼン。長い時間をかけて縷々説明するものの、要点が全く分からない発言。ロジックが甘くて、突っ込みどころが満載な主張。つまるところどれくらいのインパクトをもたらすのかを、数字で示せない曖昧な提案。そういう社員たちの集まる会議では、延々と色々な人の意見が述べられた結果、結局、何も決まらない。

これほど非生産的なことがあろうか。

このことは、正社員であるというだけで、漫然と会議に出ているだけで成果を生まなくても給料がもらえてしまうという、日本の終身雇用制や解雇の高いハードルにも一因があると思っている。

それと比べると、外資系コンサルの方々のお作法は、非常にてきぱきとしていて、鮮やかだ。見ていて気持ちがいい。さすがに高い報酬を取っているだけのことはある。きっちりと限られた期間で成果を出さなければいけないというプレッシャーもあるだろう。

この本は、外資系コンサルご出身の著者が、外資系コンサル一年生がマスターしているであろう、彼らの常識や素養について、分かりやすく説きほぐしてくれている。本書に書かれてあることは、特段、奇抜なことや、目新しいことではない。読み進めながら、「ああ、そうだよね」と納得することばかりだ。しかし、これが実践できていない会社員の、どれほど多いことか。

以下、特に重要だと思った箇所を備忘のために記載しておく。

  • 結論から話す

  • PREPの型に従う(Point=結論 / Reason=理由づけ / Example = 具体例 / Point=結論の繰り返しで締める)

  • 質問にはイエス・ノーで率直に答える

  • 数字というファクトで語る

  • 世界共通言語は英語ではなく論理(ロジック)と数字。

  • 作業を始める前に手順を考え、合意する

  • ロジックツリーで漏れもダブりもなく論点を洗い出す

  • 事実、解釈、アクションを区別する(「雲・雨・傘」)

  • 仮説を立て、検証作業としてリサーチを行う

  • 仮説→検証→フィードバックのサイクルを高速で回す

  • 会議で発言しない人の価値はゼロ

  • 時間はお金

  • スピードを追求すると質も上がる(Quick and Dirty)

  • リスクは早めに開示する

これらのポイントは、自分でも常々意識しておきたいし、部下のみなさんへも、彼らの成長のために伝えていきたいものばかりだ。

このほか、本書には、「コンサル流デスクワーク術」として、実際にパワポを作成するにあたってもちょっとした技術やコツなどにも触れている。また、上記で触れた以外のスキルや心構えについても幅広く述べられている。

コンサルを職業とする人だけではなく、全てのビジネスパーソンにおすすめ。日本の会社員が、皆、この本で書かれている素養やスキルを身につけることができると、日本のビジネス界も、ずいぶん競争力を取り戻せるようになるのではないかと思う。

ご参考になれば幸いです!

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