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スペインからの緊急帰国〜パート2。

初めまして、現在ロシアサンクト=ペテルブルクに住み、コロナウイルスの影響をモロに受けているバレエダンサーです。

たった今、大統領ウラジミールプーチンにより、4月30日までの休暇要請が出されました。本格的に外に出るのが難しくなっています。

さて、ロシアは、世界はどうなるのやら。

さてここからは前回の続きです。拙い文章ですがお付き合いください。

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15日。バルセロナ空港


ペシっ!!
Ой больно!!(痛ったぁ!)

そこにはリザが立っていた。

早く行くよ、そろそろゲートが開く時間だから。

そう言うと、ペットボトルの水を差し出してくれた。

彼女は公演で一緒に踊るパートナー、とても気が効く。

14時30分。予定では、45分にゲートが開く。

普段はゲートが開いてから行列が終わるのを待ってギリギリに乗る、その方が並ばなくて良いし、空いていれば席を移動しやすいからだ。

しかし、今回はこの状況、

飛行機が飛ぶか飛ばないかも定かではない、その上、明日にはロシアに帰る飛行機さえ飛ばなくなる。

他の乗客も心配を胸に、搭乗が始まるのを今か今かと待ちわびていた。まるで合格発表を待つ受験生のように搭乗ゲートへと集まった。

時刻は14時45分を過ぎた。

まだ搭乗は始まらない。

すると流れるアナウンス。

14時45分搭乗予定のモスクワ行きの便は15時搭乗開始とさせていただきます。

この時点で搭乗を待つ乗客全体に不安な空気が漂った。

再びの遅延。

元々、13時に予定されていた搭乗が13時15分になり、その後14時45分、そして最終的には15時になった。

隣の搭乗ゲートは本来自分たちの便よりも後に飛ぶはずだったモスクワ行きの便の搭乗が始まり、こちらの乗客が隣カウンターまで押し寄せて、

俺の飛行機が飛ばないのに、何故先に飛ぶんだ!

とクレームを飛ばす姿も見られた。

そんな不安の中、団員の仲間はというと

搭乗が始まったら競争だぞ!お前らの席がなくなっても私は飛ぶ!帰る! ヨーイ!どん!笑笑

と明るくジョークを飛ばす。

さすが、バレリーナ幾度となく経験した渡航と、日頃の鍛錬により培った忍耐力は、その辺の男には敵わない。

そうこうしているうちに

15時を過ぎたあたりで搭乗が始まり、無事に飛行機に乗ることができた。

僕とリザは隣同士で座ろうと話していたが、結局人が多く、席も離れていた為、諦めた。

飛行機は3時間ほどかけてモスクワに降り立つ。

着陸体制に入る前に2枚のアンケート用紙が配られた。

1枚は、飛行機の便名、住所やパスポート番号、電話番号などを記入し、検疫の指示に従いますという誓約書。

2枚目は、モスクワでなにをするか。仕事、留学、在住者、トランジット。

僕達はトランジットでサンクトへ向かうのでトランジットのところに印を付けた。

モスクワ到着。

そして飛行機が着陸した。

その瞬間拍手が起きた。

ロシアでは古くから飛行機が着陸した時に拍手をする習慣があるが、最近では滅多な悪天候でもない限りすることはない。

今回の拍手は、きっと祖国ロシアに帰ることができた、ロシア人の心からの拍手だろう。

安心したのも束の間、機内にアナウンスが流れる。

コロナウイルス対策の為、機内で体温検査を受け終えた方から、降機とさせて頂きます。今しばらくその場でお待ち下さい。

機内がざわつく。

すると、入り口から全身に白い防護服を纏った係員がサーモグラフィカメラのようなものを手に持ち登場した。

その物珍しさに、乗客の多くがスマホを取り出し、撮影した。動画は僕も撮った。

しかし、ゆっくりゆっくりと近づくその白い防護服姿がなんとも恐怖心を煽ぐ、

ここで捕まると、シベリア地方に隔離体制がとられる。

その不安と、緊張から、心なしか体温が上がったような気がする。

前の乗客が1人、また1人と検査を終えて行く。

大丈夫だ、大丈夫熱はない。

しかし近づけば近づくほど体温は上がる。

日本人でロシアで隔離されたらどうなるのだろうと、想像して、顔は愛想笑いで引きつっていた。

自分の前の人が計り終え、自分の番が来た。

その瞬間、

プツーーンッ

っと一気に緊張が切れた。考えても仕方がないと。

あっけなく体温検査は終わった。

呼び止められないうちに出ようと早々と飛行機を降りた、降りた先では乗客にマスクが配られた。

ロシアでマスク。

その組み合わせがどうしてもしっくりこない。きっとこの先、一生こんな事はないだろうと少しワクワクした気持ちと優越感に浸っていた。

トランジット

すっかり忘れていたが、搭乗を予定していた便はもちろん既に出発している。その為、振替便が用意されていた。

飛行機を降りると2人の係員が飛行機のチケットを持って待っていた。

名前を呼びチケットを手渡しで配る係員。

そして叫ぶ

全力で走ってください! 最大限に早く!

大袈裟だなぁと思いつつ。受け取ったチケットを見る。

なんと搭乗時間まで20分しかない。

モスクワの空港は広い。現在のターミナルがC、飛行機が離陸するターミナルがB、その間をシャトルで移動しなければならない。

しかも、僕らはこれから、パスポートコントロール、検疫、シャトル、手荷物検査をパスしなければならない。

無理ゲーじゃん。

なんともロシアらしい。

新しくパスポートカウンターが開かれ幾分早く通過できたものの僕は最後。検疫を迎えた。

何をすれば良いのか係員に尋ねる、係員はイタリアからの便でないことを確認して、トランジットの紙にハンコをして通過の許可をくれた。

周りには既に誰もおらずどこに行けば良いのかわかならなくなった俺は辺りを走り回った。

そしてようやくターミナルBへと向かうシャトルのホームへ着いたがこの時点であと5分。

シャトルは3分後に到着予定。

幸い、2人の仲間と、追い込み担当の係員と一緒になった。

走れメロス

シャトルがターミナルCに着いた瞬間僕達は駆け出した。しかし、想像していたよりも広くどちらに走って良いものか分からないまま標識を頼りに走った。

手荷物検査に超絶横入りをして、通過。

しかしここまでで15分以上オーバー、

しかも搭乗口は空港の端。

係員に、まだ間に合う!頑張れ!と檄を飛ばされ。

全速力で走った。

10キロ近いリュックを背負い、ノートパソコンを持った手でコートを持ち、走りに走った。

足も腕も呼吸も辛い。

こんなに辛いのは小学生の喘息持ちだった頃以来だ。

メロスもこんな気持ちだったんだろうなぁと、頭の中は想像で膨らむ。

努力の甲斐あってゲートが見えてきた。

アナウンスでは既にだいぶ前から名前が呼ばれている。

Оооо! Я успел!! ( あー間に合ったぁー!)

こんな時でもロシア語が出てくるあたり、

ロシア人にかぶれにかぶれている。

あと2人、後から来ることを伝えて、来るのを待ち飛行機にのった。

全身は雨に打たれたかのように汗びっしょり。

コロナにかかる前に風邪を引きそうだ。そうこうしているうちに、飛行機は離陸し、

1時間ほどでサンクト=ペテルブルクに無事到着。

インスタ女王


国内線なのでなんの手続きもなく預けていた

スーツケースを手に取った。

見事、運良く、何事もなく第二の故郷サンクト=ペテルブルクに帰ってくることができて、心の底からホッとした。

すると、親友のミーシャと以前同居していた。ジャンナが声を掛けてきた。

彼女はカザフスタン出身でInstagramで5万7千人のフォロワーを持つインスタ女王だ。

なんでもカザフスタンに帰ろうとしていたが、国が鎖国していて、モスクワに留まろうと考えていたが、モスクワも検疫が厳しいので、サンクトに来たが泊まるところがないので居候させてほしいとの事。

まず最初にミーシャの家は?と思ったが、きっと何かあるのだろうと、引き受けることにした。

この時点で面倒くさくなる事は分かっていた。しかし僕は帰ってこれた安心感と達成感からか。凄く気分が良かった。だから快く引き受ける事にしたのだ。

しかし、やはり。


その話はまた次回‼︎


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