5000文字の短編『終わりに向かう世界と、』
うだるような暑さに僕は思わず顔を歪ませる。時折木々がざわめいて、ふわりと運ばれて来る微風が少しだけひんやりとして気持ちが良い。体にべったり張り付いたTシャツの胸元をパタパタ動かしながら母の横を歩く。境内の狭い石畳を大勢が往来して、肌を焦がすような陽射しが彼らを照らす。人熱れに酔った僕は、とにかく早く家に帰りたい、それで頭がいっぱいだった。
一時間ほど前、冷房の効いた自室で寝そべって漫画を読んでいると、母が突然部屋にやってきて言った。近くの神社で風鈴祭りをやっているから行くよ