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宗七が上州館林江戸屋虎五郎のところへ発って数日、次郞長は気が脱けたようにボンヤリして過…
嘉永三年十一月、清水港は秋であった。次郞長方の表の方では箒とちり取りを持った乾分が落ち…
嘉永三年、九月の昼下がり、次郞長は家で物思いに耽っていた。人はなぜ生まれてくるのだろう…
「いてもれ、アホンダラ」 「じゃかあっしゃ」 「こなくそ」 「ぎゃん」 ヤクザの喧嘩と言え…
弘化二年。また夏がやって来た。次郞長は清水に戻って一家を構えている。「あすこン家は姐さ…
江尻の大熊の妹・蝶を嫁に貰ったことが次郞長に何を齎したのか。そりゃあ、いろんな事を齎し…
林の中で次郞長は八尾ヶ嶽に言った。 「俺と結婚してくんねぇか」 八尾ヶ嶽は戸惑った。なぜならその申し出が余りにも唐突かつ突飛であったからである。八尾ヶ嶽は珍しく狼狽して言った。 「そ、それは、おめぇ。無理だ。第一、俺たちは男同士じゃねぇか。男同士で所帯は持てねぇ」 慌てて早口になった八尾ヶ嶽を次郞長は無言で見つめた。 柔らかい午後の日が射す林の中に沈黙が訪れた。次郞長はなにかに耐えるような、苦しげな表情を浮かべていた。そのうち次郞長の顔面がみるみる紅潮し、と同時にその
【第49話】「海道一の親分」として明治初期に名をはせた侠客、清水次郎長。その養子であった禅…
白い長羽織を着た男の恐るべき人体実験により身体が膨らみ、恐るべき膂力を備えた福太郎は、…
弘化三年七月。次郞長は三河で知り合った相撲取り、八尾ヶ嶽宗七とともに伊勢にいた。次郞長…
福太郎によく似た八尾ヶ嶽に三十両を恵んでやった次郞長、博奕場をふらりと出て、暫く歩いて…
一方その頃、弁五郎はと言うと、コン吉という百姓の家に隠れていた。村はずれの小さな百姓や…
くすくす笑う美男の集団がどこの誰だかはわからなかった。なんでそんなところに美男が集まっ…
麩屋の弁五郎の密告で牢へ入れられた次郞長は、放り込まれるなり、牢内の仕来りに則ってキメ板という板で背中を打たれた。本来の次郞長の性格を考えれば、「なにをしやがる」と向かって行くところであるが、次郞長は大人しく打たれた。子供の頃、禅叢寺で習った「郷に入りては郷に従へ」という言葉を思いだしたからである。 そんなことでやっとキメ板が終わって、これでやっと畳の上に座られて貰えると思ったらそうじゃない、こんだ、畳を何枚も重ねた上で威張りくさった男が、 「娑婆忘れをさせろ」 と横柄