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男の愛/町田康

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「海道一の親分」として明治初期に名をはせた侠客、清水次郎長。その養子であった禅僧・天田愚庵による名作『東海遊侠伝』が、町田版痛快コメディ(ときどきBL)として、現代に蘇る!! 月…
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#男の愛

弊履/町田康

 嘉永三年十一月、清水港は秋であった。次郞長方の表の方では箒とちり取りを持った乾分が落ち…

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1か月前
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骨折してもうれしい/町田康

 嘉永三年、九月の昼下がり、次郞長は家で物思いに耽っていた。人はなぜ生まれてくるのだろう…

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2か月前
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やくざの喧嘩・福太郎敗亡

「いてもれ、アホンダラ」 「じゃかあっしゃ」 「こなくそ」 「ぎゃん」  ヤクザの喧嘩と言え…

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3か月前
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福太郎の去り、次郎長の涙

 弘化二年。また夏がやって来た。次郞長は清水に戻って一家を構えている。「あすこン家は姐さ…

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4か月前
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男の貫禄・女の始末

 江尻の大熊の妹・蝶を嫁に貰ったことが次郞長に何を齎したのか。そりゃあ、いろんな事を齎し…

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5か月前
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結婚/町田康

 林の中で次郞長は八尾ヶ嶽に言った。 「俺と結婚してくんねぇか」  八尾ヶ嶽は戸惑った。な…

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6か月前
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福太郎一代記

 白い長羽織を着た男の恐るべき人体実験により身体が膨らみ、恐るべき膂力を備えた福太郎は、しかしその経過が他の者と違う経過を辿ったため、これを訝った男は福太郎を生きたまま腑分けして調べると言い出した。  福太郎は目隠しをされ、太い牛革バンドで寝台に括り付けられた。次にいつもの黒ン坊が、なにか言いながら福太郎の口に何かを流し込んだ。その味が、福太郎たちが日に二回、服まされていた幻覚麻痺剤に似ていた。この時点で福太郎は、これから自分の身になにが起きるのかを知らなかったが、「これを飲

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地獄の南蛮船/町田康

 弘化三年七月。次郞長は三河で知り合った相撲取り、八尾ヶ嶽宗七とともに伊勢にいた。次郞長…

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10か月前
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因縁/伊勢|町田康

 福太郎によく似た八尾ヶ嶽に三十両を恵んでやった次郞長、博奕場をふらりと出て、暫く歩いて…

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11か月前
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次郞長、八百ヶ嶽の窮境を救ふ/町田康

 恋の恨みで密告したコン吉を制裁して気が済んだ次郞長は三河を去り、気儘なやくざの旅に出て…

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1年前
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やくざの制裁はとどめを刺さない/町田康

 一方その頃、弁五郎はと言うと、コン吉という百姓の家に隠れていた。村はずれの小さな百姓や…

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1年前
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役人の栄え・虚飾の滅び

 くすくす笑う美男の集団がどこの誰だかはわからなかった。なんでそんなところに美男が集まっ…

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1年前
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罪と罰/町田康

 麩屋の弁五郎の密告で牢へ入れられた次郞長は、放り込まれるなり、牢内の仕来りに則ってキメ…

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1年前
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苦労して行ったけどすぐ飽きた関東/町田康

 弘化二年夏、次郞長たちは高萩の亀屋という宿屋に一泊した。翌朝、宿の女中が、 「二階のお客さん、おはようございます」  と言いながら部屋に入って来て驚いた。流石にもう着物を着ているだろうと思った四人の男が相変わらず裸でいたからである。驚いて敷居のところで固まっている女中を見て、慌ててなにか言いかけた虎三を次郞長は制し、そして、 「もうこうなったら隠したってしょうがない。ねぇやん、正直に話そう。俺たちは駿河の者で、高萩は万次郎さんの縁を頼みに、ここ高萩にやってきた。ところがその

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