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時短の先にゆとりはない−『モモ』

働きながら幼い子どもを育てていると、とにかく時間が足りない。
今は、そんなワーママを支えるサービスが山ほどある。
ミールキット、レトルトパックの離乳食、家事代行でのつくりおき、食洗機やロボット掃除機、、、

フィルターバブルというんだろうか、
一度検索すると延々と、子育て関係の情報や広告が追いかけてくる。

いかに効率的に家事を行うか、
自分で、または夫婦だけで頑張りすぎずに人を頼り、
サービスを活用することも賢いのだ、
大事なのは子どもとの時間じゃないか、と。

おかげで子どもとゆっくりする時間、
夫婦でゆっくり話す時間ができましたなんていう
コピーとともに笑顔が添えられて。

頑張らなくていい、休めばいい、と
シャカリキになる真面目なママたちに
いろんな顔をした情報が語りかけてくる。

とにかく細々とした色んなタスクが
尽きることなく日々発生するから
じっくり考えることを忘れやすい。

限られた時間を有効に配分し、
自分がやらなくていいことは人に任せるために
今やるべきこと、やらなくていいことは何かを
一生懸命考える。

床に散らかして、踏んづけそうなおもちゃを片付ける
ママと甘えて抱きついてくる子を抱きしめる
そろそろ漏れそうなのでトイレに行く
静かなうちに自分の睡眠時間を確保しておく
眠れずに泣いている子をひたすら抱っこする
お風呂に機嫌よく入ってもらえるための仕込みをする
前を通るたびに気になる食器の山を片付ける
うんち漏れで汚れた衣類の下洗いをする
食べないだろうけど一応出す野菜の料理を考える
週末に実家に行くのに、親に連絡をとっておく
…………

時短や隙間時間の有効活用で、キャパができればできるほど、
なぜかスムーズに過ごすためにやることが増えていく。

そこで、ふと思い出したのが、時間泥棒だった。

小学校3年生の時、母が勧めてくれて読んだ、長い長い物語。
ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てくる灰色の男たちだ。

最後はモモが時間泥棒に勝って、ハッピーエンドだったはずだけど、
一体どんな話だったか。
改めて読み返したいと思いながら、それも忘れたまま過ごしていた。

ある時、思い立って部屋を片付けていたら、
愛蔵版の「MOMO」が出てきた。
読み始めて、驚いた。

時間の節約をする人々、そして、その末路。
奪われていく時間の花。

*****

貯金上手のポイントは先取り貯金だという。
使った余りを貯金するのではなく、必要な額をまず貯金してしまうこと。

時短に時短を重ねても、ささやかな時間は意識しなければ
あっという間になくなっていく。
時短の先には、永遠にゆとりは生まれない。

イライラしないように、
家族が笑顔で元気に過ごせるように、
と考えて、がんばらない。
五手先のことは考えない。

まずは目の前の子どもの顔をじっと見てみる。
遊びたい、食べたい、寝たい、ママにかまってほしい。

泣き声は思考からシャットアウトしてみる。
ちょっとギャン泣きして疲れたって、死ぬわけじゃない。

そう、ウンチの海だって、少しすれば笑い話になることは分かってる。

生きてるなぁ、私たち。

忙しい中でゆっくり過ごすことがゆとりというよりも、
カオスのなかで立ち止まって感情に目を向けることが、
味わうことが多分、贅沢な時間の使い方なんだろうなぁ。




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