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リバーブについて考える

「リバーブ」とは

今回は、ステージでの演奏や自宅で録音するときに用いられる「リバーブ」というエフェクトについてお話ししたいと思います。

リバーブの話をする前に「ディレイ」についても簡単に説明しておきます。
「ディレイ」は、一言でいうとやまびこ効果です。
要は、原音に対して少し遅れたタイミングで音量も少し小さくなった音がフィードバックされ、音量がゼロになるまで繰り返されるということです。

一方「リバーブ」は、音の鳴っている空間の「響き」です。部屋で音を鳴らしたときに、ディレイのように単一の音が一方から返ってくるということはほとんどなく、通常は床や天井、四方の壁に音がぶつかって複雑に跳ね返ってきます。この場合、耳に届くのは、タイミングや音量が微妙に変化した無数のディレイということになります。

ちなみに、一般的に「エコー」と言われるのは、リバーブとディレイを組み合わせたもの、もしくはディレイ単体を指します。

「デジタル・リバーブ」について

リバーブが誕生した初期の頃は、部屋にマイクを立てて残響音を拾う「ルーム・リバーブ」をはじめとした、アナログ的なものからスタートしました。
現在は、1980年代に登場した、様々な残響をデジタル処理で再現する「デジタル・リバーブ」が主流です。単体の実機だけでなく、ミキサーやアンプスピーカーに内蔵されているものや、DAW(パソコンで音楽制作をするためのソフトウェア)上で動作するものもあります。

近年では、空間の響きをサンプリングしたデータを利用する「コンボリューション・リバーブ」も、DAWを中心に普及しつつあります。

「デジタル・リバーブ」の主なパラメータの解説

機種によって設定可能なパラメータは様々ですが、主なものを解説したいと思います。参考までに、私自身がハーモニカで使用する際に設定する数値等も記しておきます。
※1ms(ミリセカンド)=1/1,000秒

プリ・ディレイ(Pre-Delay)
原音が鳴ってからリバーブ音が鳴り始めるまでの時間差を設定。
曲調や伴奏音源にもよりますが、私自身は50ms~80msに設定することが多いです。0msにすると発音からすぐにリバーブ音が鳴ってしまい、伴奏に埋もれやすくなります。また、遅くしすぎると残響の付き方が不自然になってしまいます。

リバーブ・タイム(Reverb Time)
リバーブ音が鳴り続ける長さを設定。ディケイ(Decay)と表記されている場合もある。
曲のテンポなどにもよるのですが、1.8~2.5秒くらいに設定することが多いです。

サイズ(Size)
シミュレートする空間の広さを設定。
曲調などにもよりますが、広めに設定することが多いです。

ディフュージョン(Diffusion)
反射音の量とキャラクターを設定。リバーブ・タイムが短い場合に違いが出やすい。

リバーブ・タイプ(Reverb Type)
シミュレーションする空間などの種類を設定。プレート、スプリング、ホールなど。
ホール系を選ぶことが多いですが、機種によってはプレートやスプリングを選択することもあります。

設定するときに注意すべきこと

カラオケ伴奏を使用する場合は、全体の調和が大切です。リバーブを強くするとレガートな演奏になるのでついつい強くしがちになりますが、ハーモニカだけがお風呂場で鳴っているような状態にならないよう注意が必要です。

また、リバーブを強くしすぎると音の輪郭がぼやけるので、伴奏に埋もれやすくなります。それをハーモニカの音量を上げることで解決させようとすると、ハーモニカだけが浮いたような不自然な演奏になってしまいます。

リバーブのような空間系のエフェクトは、お化粧だと考えていただくとわかりやすいです。厚化粧になってしまうと不自然ですし、素肌(原音)が美しくないとお化粧(エフェクト)は映えません。素肌美人を目指しつつ、上手に自然なお化粧ができればよいのではないかと思います。

※この記事はニッポン・ハーモニカ・クラブさんに寄稿させていただいたものです。№169に掲載されています。

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