創作大賞感想──みなさまの作品を読んで
創作大賞、みなさま本当にお疲れ様でした。お疲れが残っていませんか? わたしはしばらくぐったりして、寝込んでおりました。テヘヘ。まだ本調子ではありませんが、ゆっくりとリハビリも兼ねて綴っていきたいと思います。
創作大賞は、みなさまの作品を読ませていただけて、とても嬉しい時間になりました。ただ自分の持病もあって、情報を心と体に入れすぎてしまうと、寝込んだりしてしまうので、あまりたくさんは読めないのが悲しいです。応援期間までにたくさん読まなくちゃ……!と気張っていましたが、それはどうやら難しいと気付き、断念しました。
この記事では、ご縁あって出会った作品の感想を綴ってまいります。応援期間が終わっても、この記事は随時更新していこうと思います。応援期間のうちに反映できなくてごめんなさい……。来年はもっと、計画的に創作大賞を楽しんでいけたらいいなあと願っています。のんびりまいります。
◆紺乃未色さん「私にヨガの先生はできません!」(お仕事小説部門)
紺乃さんの小説は、語り口がとても巧みなんです。「この方、表現がとても上手いなあ……!!」と惹き込まれ、気がつくと主人公・いと葉の一年間の冒険を手に汗握りながら応援していました。
ホットヨガには以前通ったことがあったので、その情景もリアルに想像できました。こんなお洒落なスタジオで、親身になってくださる先生がいらしたら、めちゃくちゃ素敵……!と、うっとりしました。
紺乃さんの作品の特徴として、特筆すべき点は身体感覚の表現の豊かさと誠実さです。
第一話の冒頭では、
体が柔らかい方ではない私は、この冒頭に一気に共感が深まりました。読んでいるだけで、アキレス腱がぴりぴりする感覚になりました。
紺乃さんの身体感覚を描く表現は、とても誠実なものです。主人公・いと葉が徐々に心身の柔軟性を得る過程など、深い共感を覚える表現の数々に触れ、自分の中で言語化できていなかった感覚にあらためて気づくことが出来ました。心から感謝しています。
私がこの作品の中で好きなのは、いと葉の高校時代の友人・カレンとのやり取り。お互いに、自分にはない要素を感じている友人同士が、物語が進むにつれて自分の胸の内をぽつりぽつりと素直につぶやき始めます。そして自分自身の心が向かう方向に正直になっていく過程では、胸が熱くなるのを感じました。
読んでいて、体と心のことを大事にしたくなる作品です。ぜひ、お読みください。
紺乃さんの最新作「失恋少女と狐の見廻り」は、和風ファンタジー。導入から心を掴まれます。こちらも、ゆっくり読ませていただきます!
◆横山小寿々さん「私を 想って」(ミステリー小説部門)
小寿々さんの描く世界は、とても優しいです。ご自身のしなやかな強さ、この世界をまるごと肯定する懐の深さなどもあると思うのですが、すべての登場人物を優しい眼差しで見つめているのが、初めて読んだ時に印象に残りました。
主人公・毬毛(まりも)は、自分の名前に悩む高校生。父親が帰ってこない日が続き、同級生の篤人と共にその謎に迫っていくことになります。地域に根差したコミュニティの中での濃密な人間関係、その中で静かに深まるドラマが丁寧な筆致で描かれ、小寿々さんの作家としての技量と経験値が遺憾なく発揮されています。
父がいない中で毬毛がともに過ごすのは、父の再婚相手の涼花と、涼花のかつての夫の母親である和。涼花と和のあいだにも、隠された事情があり、物語が進むにつれて明かされていきます。
不安定な「家族」の中で暮らす毬毛の胸の内は、以下のように語られます。
毬毛の中の名付けられない感情が丁寧に描かれることで、彼女の心もとなさや宙ぶらりんな感覚が伝わってきます。ここ、小寿々さん上手いなー!!と心で拍手しました。人生の中で抱えている感情を名付けてはいけない段階って、確実にありますよね。それを認識し、許容している小寿々さんの観察眼の鋭さと懐の深さが大好きです。
小寿々さんの最新作「Horror House カンパニー」は、打って変わって軽やかな筆致で描かれるホラー小説。登場人物のネーミングにニヤッとします。ホラーが苦手な私ですが、この作品の軽やかさには救われました。途中、とっても怖いですが……! こちらもぜひ!
◆みくまゆたんさん「それは、パクリではありません!」(お仕事小説部門)
みくまゆさん渾身の一作! ご自身の実話を基にした部分もあるとのことで、非常にリアリティのある作品です。書くことをしていると避けては通れない「著作権」の問題に真正面から挑んでらして、めちゃくちゃかっこいいなあ……と思いながら夢中になって読みました。
また、細部に至るまでのディテールの書き込みが非常に細密であるにもかかわらず、リサーチの苦労をまったく見せないみくまゆさんの筆力の高さにも唸りました。法律関係など自分の言葉・表現に昇華させるのが難しい領域であるにも関わらず、その壁をらくらくと超える様子を、指をくわえて見つめておりました。
冒頭、主人公・紀子は、現在の仕事や日々の生活にくすぶりを感じていて、同僚の女性からは「ふわふわしている」と指摘を受けます。この同僚の方とのやり取りに、心をきゅっと掴まれました。
近藤さんの最後のせりふは、とても重たいものです。ただ、この時の紀子は底の底までは受け止めきれず、のちの展開へと進んでしまうのですが……。
「目の前の仕事を責任もってこなさないと、やりたい仕事には辿り着けない」──これは、ライターとして働いてこられたみくまゆさんの矜持でもあるのだろうなと感じました。この言葉を読んで、私もがんばろうと姿勢を正したのを思い返します。
みくまゆさんは創作大賞に非常に多くの作品を応募されておいでです。どの作品をご紹介しようか迷うのですが、迷ったらこれ!ということで、「【振り返り&あとがき集】創作大賞2024にガチで挑んで、ぶっちゃけどうよ?過去応募作とともに振り返る(※企画の提案あり)」をご紹介させていただきます。
ここから「#創作大賞2024あとがき集」も始まった、伝説のnoteですね。みくまゆさんの呼びかけに応えて、多くの方々があとがき集を出されて、とても嬉しいです!
◆蒼龍 葵さん「砂の城」(恋愛小説部門)
兄と妹の禁断の愛。これ、じつはオペラでも描かれているんですよ。ワーグナー作曲の四部作《ニーベルングの指輪》の第一夜《ワルキューレ》では、生き別れになった双子の兄妹が再会し、惹かれ合います。彼らは悲劇的な運命をたどりますが、彼らの息子・ジークフリートは英雄として育ちます。
わたしがワーグナー好きだからなのか、兄と妹という設定を不思議なほどすんなりと受け入れることが出来ました。なにより、葵さんの描く麻衣と忍がとても魅力的な人物なので、読み進めるうちに親戚のおばちゃんのように、「ふたり、うまくいくといいんだけど……」と心配するようになってしまいました。こうして共感を抱けるキャラクターを描けるのは、葵さんの才能ですね。
忍へと向ける麻衣のひたむきな思いは、冒頭の描写からも感じられます。
毎日、会えるかどうかわからない人を探すために、職場とは違う方面に向かって自転車を走らせる……私にはきっとできません。なんだかんだ言い訳をして、断念してしまいそうです。でも、主人公・麻衣はそれをしない。決して諦めない。
その麻衣の想いの強さは、物語の随所にあらわれます。途中、想いを断念しようとする場面もあるのですが、それでも麻衣は迷いの果てに、忍への想いをつらぬく道を選びます。
ふたりの想いの純粋さが際立てば際立つほど、私の中の親戚のおばちゃんは、「あんたたちいいわね! がんばりなさいよ!!」と大喜びしておりました。若者が一途な想いをつらぬくというのは、嬉しいものです。
途中「砂の城」の由来が語られる場面もありますが、それはぜひ、お読みになって確かめていただきたいと願います。
葵さんは、多くの作品を書かれているのですが、看護師としてのご経験を生かしたこのマガジンはぜひみなさまにお読みいただきたいです。
特に「体験談から語る水分摂取の必要性」は必読! 気がつくと熱中症になりがちなこの季節の対処法が、専門家の立場から細かく書かれています。ご自身の経験をもとに書かれたこのnoteは、鬼気迫るものです。どうか葵さん、お大事になさってくださいね……! 私もお水をたくさん飲みます。
◆and more……!
創作大賞応援期間は過ぎると思いますが、皆様方の作品を読んだ感想をこの記事に加えていく形で綴っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!
夏はまだまだ続きます。この夏を健やかにのりきっていきましょうね!!
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