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神様は綺麗なものが好きだから

神様は綺麗なものを傍に置きたがる。

抜けるような青い絨毯の上に、まっしろい雲、オレンジ色の太陽、ぱちぱちウィンクする星、マーブル模様の惑星を散々並べて、もう十分だろう、満足すれば良いのに、それでも足りない。

さらに綺麗なものはないかと、空からこちらをのぞいて、見つけたら早々にあっちに連れて行ってしまう。


先日、だいすきな人が亡くなった。
なんとなくそんな予感はしていたけれど、それが現実になってしまった。

その方とは、私が独立してすぐの頃に出会った。
初めて会った、というか、その方が初めて目の前に現れた時のことをはっきりと覚えている。

ちょっと普通の人とは違った。
白い空気のベールを被っていた。
そこだけ空気の色が違った。

私の目を見て、花のようにふっと笑った。
びびびっとした。
一瞬時が止まった。
ちょっと動揺した。

仕事の話をひととおりしたら、その方は以前経営をしていたこともあったそうで、私は自分が独立したばかりだと言うことも伝えた。今日の仕事をとっても楽しみに準備してきたことも伝えた。

「そう。今度ごはんに行きましょう。絶対にですよ」

その約束を、私は宝物のように、子どもが大事にしているおもちゃの宝石のように、大事に大事に心の中に抱きしめて、走った。
たまに連絡を取り合った。
なんだかちょっと体調が悪そうだったけど、向こうからはそれには触れなかったので、私も触れなかった。

元気になったら、その時には良い報告をしたい。
少しでも近い目線で会話をしたい。

そう思って、もちろんそれだけではないけれど、とにかくいただける仕事は全部やった。
時には、「駆け出しのフリーランスだと思って足元を見られた」と思うような条件でも、とにかく実績をつくるのだ、そこから学んで活かしていくのだと、とにかく無心で、でもちゃんと心とロジックはつぎ込んで働いたような気がする。
よく覚えてないけれど。

もう、近況を直接報告することはできない。

それを目標に頑張れた。
ちゃんと走れるように、ぐんぐんと背中を押してくれた。
そのおかげで、ずっと走ってこれた。
気付いたら、なんかいい感じになってきた。
新たなご縁にも恵まれた。
フリーでやっていくのに大事なことも分かってきた。
気付いたら。

私はまだまだそっちには行けないけれど、
追って報告します。
お別れができなかったぶん、たくさんの花束と、できるだけたくさんの笑い話を持って行きます。
普通の話でも笑われちゃうかもしれないけれど。
それまで、しばしのさようなら。


神様は綺麗なものを傍に置きたがる。
神様は綺麗なものが好きだから。














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