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待たせてごめん

以前「何も考えない」という日記のなかで、
待ち合わせのときに音楽を聴いたり、本を読んだりすることが苦手だと書いた。ウォークマンも文庫本も小道具のように思えて、待っている自分を演出しているようで落ち着かない、と。

最近、久々に待ち合わせをした。私の乗るバスが遅れて相手を10分ほど待たせたのだが、その人は近くにあるベンチには座らず立ったまま本を読んでいた。集中している。近づいていっても全く気づかない。肩をポンとたたいて「お待たせ」と声をかけると、ついに顔を上げ、慌てて文庫本を閉じてジーンズの尻にあるポケットに押し込んだ。

私はこれにグッときた。毎晩寝る前に欠かさず脳内再生したいぐらい、しびれた。

ということで、これから私と待ち合わせる人にはぜひ本を読んで待っていてほしい。百歩譲って、音楽を聴きながらでもよい。いや、本当は一番すきなことをして待っていてほしい。なんならジャグリングをしていてもよいぐらいだ。私の姿を認めてハッとし、それをいそいそとしまいこむ仕草をただ眺めていたいのだ。


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