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次は私が、隣で酸っぱい食べ物に悶える人へ笑いかける
私には「私のことをおばあちゃんとは呼ばずに、
”美代子さん(彼女の名前)”と呼んでくれ。」
と私が物心つく前から言い続けていた(らしい)、
とてもパワフルで太陽みたいな祖母がいる。
(祖母がこのnoteをどこかから見ているかもしれないので、以下は美代子さんで進ませてもらいます。読んでくださる方々はお手数ですが、「美代子さん=祖母」 と脳内で変換してください。)
今回は美代子さんと私の酸っぱい食べ物にまつわるお話。
* * *
私が小さい頃に母が土曜日も働いていたため、
私は中学生に上がるまでの土曜日と長期休暇の大半を
美代子さんの家で過ごしていた。
美代子さんは習い事に行ったり、バイオリンを弾いたり、家事をしたり、お昼寝をしたり。
私は勉強をしたり、バイオリンを弾いたり、本を読んだり、お昼寝をしたり。
2人は2人の空間を気ままに、自由に過ごしていた。
そんな美代子さんと私が必ず一緒に過ごした時間が、食事の時間だった。
私たちは、朝に出会って夜に別れるまで、
・おじゅうじ(朝10時のおやつ時間)
・お昼ご飯
・おさんじ
・夜ご飯
の計4回の食事を共にしていた。
(改めて文字にしてみると「本当に私たちはよく食べていたな~」と、もはや関心する食べっぷりである)
食べることが大好きで料理が得意な祖母は、
「食べ物をいかに美味しく食べるか」
という、食にまつわる教えを私にたくさんくれた。
ご飯の時間には様々な和洋中の料理の作り方を、
おやつの時間にはクラッカーにクリームチーズとジャムを塗って食べると美味しいことや、
いちごに砂糖を塗して冷凍庫に凍らせるとこの上なく美味しいスイーツになることや、
スムージーはバナナをいれると結局一番美味しくなること、などを。
その彼女の食にまつわる教えの中でも、
私が一番記憶に残っているのは
「酸っぱい食べものは人を元気にする力がある」
という教えだ。
* * *
美代子さんは私が物心つく前から、
食卓に梅干しやチョロギ、シークワーサー、お酢の物やピクルスなどの様々な酸っぱい食べ物を出してくれた。
そして毎回、酸っぱい食べ物を口にすると
(私)「美代子さん、これ(出してもらった食べ物)すっぱー!!!」
(祖母)「さよちゃん、すっぱいねええー!!!わははは!」
と私が酸っぱさに悶え
美代子さんが私を見てカラカラ笑い、
それに釣られて私もゲラゲラ笑いながら
酸っぱい食べ物が無くなるまで食べ続けていた。
(大体、美代子さんは夜ご飯には和食の料理を作り、
その中の1品は酸っぱい食べ物だったため、
結構な高頻度でこれをやっていた訳なのだが。)
最初の頃は酸っぱい食べ物たちを口にしては悶えていた私だったが、
いつしか私は美代子さんと酸っぱい食べ物を食べることも、
梅干しやチョロギ、シークワーサー、お酢の物やピクルスなどの、酸っぱい食べ物自体も大好きになっていた。
* * *
それから15年あまり。
今から当時を振り返ると、
もしかしたら私は初めから酸っぱい食べ物が好きだったのではなく、
酸っぱい食べ物を祖母と食べる瞬間がこの上なく楽しくて大好きで、
気づいたら酸っぱい食べ物自体も大好きになったのかもしれない、と思う。
そして「酸っぱい食べものは人を元気にする力がある」と身をもって教えてくれた美代子さんは、
3年前にこの世を卒業してしまった。
それでも、私はお弁当にいつも梅干しを入れて、
タンメンにはお酢をたっぷりかけて、
朝ご飯用の野菜のピクルスを作って。
それらを食べては、たまに美代子さんとの日々や教えを思い出して心が温かくなっている。
だから、今度は私が、
隣にいる人が酸っぱい食べ物を食べて悶えていたら、
隣にいる大切な人に向かって楽しく笑いかけながら
「酸っぱい食べものは人を元気できる力がある」
という美代子さんの教えを体現していこうかな、と。
そう思っている。
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