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倍数表現について―X times as~as と X times ~er than―

年が明けて授業を進めていると、高校1年生では比較の「倍数表現」の導入に入りました。

ただ、この倍数表現は、教科書によっては扱い方が異なるので教員側に注意が必要なセクションだと思います。

倍数表現の基本形

たいていの教科書では、「X times as ~ as」を基本形として扱っていることが多いのですが、まれに、「X times ~er thanも同じ意味となる」という風に加筆している教科書もあります。

ややこしいのは、このas~asが続く場合と、比較級~er thanが続く場合では、ニュアンスに差があるらしい点です。

また、twice/ halfについては、~er thanを後続させることができないというルールもあり(辞書に記載あり)、as~asなのか、~er thanなのか、を選ぶことを難しくさせている面があります。

とりあえず、教科書にある説明をまとめると以下のようになります。

教科書(『LANDMARK English Communication I 』)での倍数表現の説明

1.X times as ~ as
2.twice/ half as ~ as 
3.分数 (one-thirdなど) as~as

高1段階では、まだ分数の表記に慣れていない生徒もいるので、その点も指導が必要でしょう。たとえば上記では「3分の1」をone-thirdとしていますが、aを代用してa thirdとしたり、「3分の2」などになれば、分母の序数を複数形thirdsにしなければならない点などは、初見ではかなりややこしいでしょう。

分数の表記

3分の1 one-third/ a third
3分の2 two-thirds

ジーニアス英和大辞典での説明

ジーニアス英和大辞典では、”twice”の項で次のように記載されています。注目すべきは、twice ~er thanを非文としつつ、two times ~er thanを対案としている点でしょう(p. 2312)。 

twice

You have twice my strength. = You are twice as strong as I am.
君は私の2倍の力がある

《◆比較級とは用いない:×You are twice stronger than I am. cf. You are two times stronger than I am.》

このように記載があるということは、X times という倍数表現は、as~asだけでなく比較級も容認されうることを示していることになります。
一方で、twiceについてはasのみ容認しているということになり、これはtwice自体が持つコロケーションや語法的な背景が関係しているように思えます。詳細については、英語史などを紐解いていく必要がありそうです。

『英文法詳解』(杉山忠一、学研)での説明

私がよく参照する『英文法解説』(江川泰一郎)には例文は掲載があったものの、as~asと~er thanの詳細についての記載がありませんでした。
一方、『英文法詳解』には「§17 数詞」の項目の中に、倍数表現が扱われています(p.491)。ページの後半にあるように、times+~er thanを含めた、times + 名詞表現について、それらすべてについて「すすめられないと思う」という著者の感覚が記載されています。

(3)倍数の表し方
「~倍」を表すには、原則として、~times as …asを用いる。
He has ten times as many books as I have.

《注意》
3.倍数を表すには、そのほか、次のような言い方も用いられる。
Tne new building is twice the size of the old one.
He is three times your age.
This wheel turns ten times faster than that. (太字は私によります)
That is tenfold better.
しかし、これらを模倣することは、あまりすすめられないように思う。

『教師のためのロイヤル英文法』(綿貫陽、旺文社)での説明

この書籍は英語教員を対象としたもので、説明もかなり詳しく掲載されています。
問題の倍数表現については、各辞書や語法辞典などでの版による例文の追加や説明の違いを述べています。しかし、それぞれでのas~asなのか、~er thanなのか、という点への言及は辞書によって異なっており、かなり混沌とした状況となっています。

著者も説明の不統一については認めつつ、以下のように結論を述べています。

 このように、混沌としているが、CGEL(A Comprehensive Grammar of the English Language, 1985, Quirk et. al)は、times-phraseに続く形は、as many (~) asもmore (~) thanも同じであるとして、The Gross National Product is four times as high as/ higer than (it was) a decade ago.のような例をいくつか示している。ただし、Twiceは、moreよりはas many [much](~) asと用いられるとしており、明快である。
 結論として、生徒への指導は、基本的にはas~asを示し、質問があれば、~er thanでもよいが、twiceの場合は、twice as~が慣用句であると言えばよい。

まとめ

以上、倍数表現+比較級の取り扱いを見てきましたが、教員にとっては、従来通り、「as ~asを基本形とする」という説明でよい、というのは安心材料かと思います。
一方で、twice as~については、half as~同様に、「慣用句」的にそうなる、という風に指導することも留意点でしょう。

個人的には、なぜtwice/ halfがas~asのみ容認するのかが非常に気になる点ではあります。次年度以降の研究紀要のテーマに選んでみてもいいな、とふと感じております。

では。

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