#269 当番

しばらくすると部屋の呼び鈴がなった。隣の少年だった。誕生日ケーキをとても喜んでくれた様だった。はにかみながらとても嬉しそうに感謝の言葉を伝えてくれた。僕は同じ新聞奨学生として、目指す目標の達成に向け、共に頑張れればいいなと言う思いだった。
ケーキのメッセージプレートは少年ではなく、少年の名前にしておいた。
少年は新聞奨学生としての生活の大変さに負けてしまっており、中々本業の受験勉強に集中できない様だったが、気持ちは分からなくもなかった。
本人が本気にならないと難しいと思ったので、僕は必要以上にそのことに関しては少年に触れないようにしていた。
少年は高校受験を一度失敗しており、本人が希望しない私立高校に入学した様だった。その学校が合わず、途中で退学したとのことだった。
少年の親も少年を心配している様で、食品や料理雑貨などを送って来ていた。少年からおすそ分けを貰うことがたまにあった。一度、キッチンハサミをくれたことがあった。一人暮らしをする少年に不便がない様折角送ってくれたものだから、少年が使うように諭したが、いらないのなら捨てるとのことだったので貰った。
日曜日は月に1~2回配達後、当番があった。配達後、9時まで配達所に待機して未配達やクレーム電話対応を行うものだった。クレームは雨の時など、新聞が濡れていたので濡れていないものを届けて欲しいとかチラシが多く新聞が厚くなった時にポストに入りきらず、破れていたなどがあった。
そのような電話を受け、当番が粗品と共に配達に伺うというのが役割だった。平日は新聞奨学生ができないので、専業配達員で行っている為、予備校が休みの日曜日は順番が回ってきた時にやらなければならなかった。
全配達員が配達している区域が対象なので、近場から遠くまで幅広く対応しなければならなかった。
日曜日は朝食も出なかったので、当番が入った場合は当番が終わってから近くの飲食店に食べに行っていた。
続く…


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