#268 隣の少年

予備校で毎週模試があり、その成績が掲示板に張り出される。1浪時代も週1でセンター試験の過去問を行っていたが、この時は浪人生が僕とろくちゃんだけだったので比較対象がないに等しかった。
予備校全体での模試になるので、自分の学力や位置を明確に知ることができた。
夏休みを挟んで、試験の成績でクラス分けがなされると伝達があった。
成績に関しては1浪目の貯金があり、勉強時間の確保がままならなかったが結構試験の成績が良かった。英語はコンスタントに偏差値65を超え、調子の良い時は偏差値70に達することもあった。
国語は苦手としていた古文の出来により左右され、偏差値60~65の辺りを行き来していた。
古文に関して得点力を上げる為に毎朝通学時の電車乗車時間を活用。
カードに古文単語を書き込んだ暗記カードを見てひたすら暗記。600単語を1カ月で覚えた。古文単語の暗記で古文の読解問題での得点が顕著に上がった。
古文単語が済むと、早稲田人間科学部の英語対策として、前置詞の勉強をこの時間で行った。細切れ時間の有効活用は限られた時間の中、とても役立った。いつでも勉強出来るように暗記カードを携帯しておいた。
日曜は予備校が休みだったので、新聞配達後は近くの図書館に行って勉強する様にしていた。
昼を挟み、夕方前まで図書館の自習室に籠っていた。
夕方になると、隣部屋の少年を起こし、夕食を食べに行った。
少年は平日も一切予備校に行かず、部屋におり、日曜日も部屋に籠もりっきりだと言っていた。内心いつ勉強しているのだろうとは思ったが、彼は彼の考えがあるだろうと思い、特にそのことは触れなかった。
一緒に夕食を食べに行った時、僕が必死に勉強していることを感じ、いつも感心していた。僕より2つ年下の少年。親元を離れ一人暮らしは思った以上にさみしさと辛さが身に沁みている様だった。
ある日、いつもの様に夕食を食べに行くと、少年はその日が誕生日であることをしみじみと恥ずかしそうに言ってきた。僕は「そうなんだ。おめでとう!」と言ったが、少年はどこかさみしそうに項垂れていた。
夕食が終わり部屋に戻ってきてから、僕はケーキ屋まで配達用バイクで行き、ケーキを買ってきた。少年は買い物にでも出かけていた様だったので
玄関に置いておいた。
続く….


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