#271 晴れのち雨

僕の新聞配達エリアは街に近い住宅街から始まり、山が近い田園部を抜けて大きな住宅街を通り、また街に近い住宅街に戻ってくるコースだった。
山が近い田園部がちょうど深夜の真っ暗な時間帯と重なり、電灯も少なくかなり気味の悪い感じがして、早く通過したい場所だった。
道が悪く配達時にバイクを止めて配達しなければならないところの横が谷になっており、バランス良くバイクを止めないとその谷にバイクが落ちてしまう危険性があった。
ある日、そのまさかが起こってしまった。対象の住宅を配り終え戻ってくると止めていたはずのバイクが見当たらない。ふと嫌な予感がして横の谷に目を向けるとバイクがそこに倒れていた。
まあ谷といっても2メートル足らずの高さではあったが、たくさんの新聞を積んでいるバイクをそこから上に引き上げるのはかなりしんどい作業であった。雨露で濡れた茂った雑草の上に倒れているバイクを懸命に引き上げるのに30分以上要した。助けを求めようのない人気のない深夜の山中でなんとかバイクを谷から引き上げることができた。体中が雨露で濡れると同時に泥だらけになった。信じられない状況に泣きそうになりながら、配達を続ける準備をした。ロスした時間を取り戻す為に泣いている暇はない。急いでバイクから落ちかかった新聞を整え、次の配達先へ向かった。
バイクの後ろに転倒しないギリギリの新聞を積んでいる為、停車し配りに行かなければならない時の駐車は細心の注意を払って止めないとバイクが倒れてしまう危険性が常にあった。
風が強い日や時に台風が近づいている時などはより注意を払って停車しないとならなかった。
その為、日々天気を気にする様になった。雨天の場合、道路が滑りやすく、配達用の原付バイクは簡単にタイヤが滑り転倒しやすくなる。
舗装されていない場所に停車する際、スタンドが雨でぬかるんだ地面に沈んでバランスが悪くなり、バイクが倒れやすくなってしまう。
雨が降って風が強い時が一番、配達員泣かせだった。
続く…

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