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【5】車中での会話

空港に送る約束の時間より早い時間に出発しようと彼が提案してきた。

まだ心の動揺はおさまらず、部屋に私を呼びにきた彼の顔を見るなり涙があふれそうで、言葉にならない言葉を発していた。

サングラスがあって良かった。社員の男の子に泣き顔を見られずに出発できたから、そして私の中で何が起きたのかを話そうと決めていた。

お酒を持って帰る事件で彼を罵倒したけれど、私がわたしに気づくための出来事だった。彼を責めてないことを前提に私なりに伝えた。


お昼ご飯を食べながら、彼は私にいろんな質問をしてきた。(詳しくは覚えていない)それらに私の意見を述べた。

会計を終え車に乗り込んできた彼が「お前はたくましいな」ってつぶやいた。それは必死で自分に向き合い、取り組み自分で表現できる強さを指していたんだと思う。自分の心の面倒は自分でみる、自己処理できる能力があるという意味で私は自分が強いと思うと答えた。

自分を幸せにできるのは自分

こじれたやっかいな心を持ったまま本当の幸せにはなれないことを、私が1番知っていたから、ずっと努力してきた。


本来話すつもりの話は、もうすぐ空港に着く若狭交差点に差し掛かる頃に切り出せた。

「関係を持つことを望んだのは私」

色々と考えた結果、これだけを伝えようと決めた。

勢いとか、なんとなく関係をもったのは嫌だった。
自分が決めたと伝えたかった。そして彼とのその後の関係をどうするのかは、色々考えたけどわからなかった。

「何もなかったように今まで通りでいい」とは言えなかった。
でも、彼がそれを望むならそれでいいと思っていた。

「死ぬまでに1度は関係をもたないと後悔する」という私の当初の望みは叶っていたから。

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後部座席に座っていた彼から、予想もしなかった「俺も好きだったし、こうなるのはわかってた」という言葉が返ってきた。

想定外のストーリーじゃなくて、私の脳みそは完全にフリーズした。

想定外は神の介入

多くのものを抱えている彼の負担を考えると「付き合う」は無理だと思ってた。その負担を私が彼に与えてしまうことも嫌だったし、私の器を考えてもそんな器用なことはできないと思った。

想定外の展開に無意識に蓋をしていた心の鍵が外れてしまった。でも鍵が外れただけで、その箱を開けていいのか分からなかった。開けたら自分がどんな風になるのか予想もつかなかった。

どうしたらいいのかわからないまま、彼の言葉だけを受け取った状態で那覇空港でバイバイした。

頭も心も混乱していた。

車を走らせて家に向かう途中に彼からラインがきた。忘れ物でもしたのかと赤信号でラインを開けたら長文で、コンベンションセンターの駐車場に車を入れてラインを読んだ。

そこには彼の正直な気持ちが綴られていた。



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