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東大卒獣医師が、性別の枠にとらわれないバレエのイベントを企画する理由

私は東大を卒業して、獣医師免許を取得し、企業で研究開発をしています。
そんなガリ勉理系として生きてきた私が、伝統的な芸術であるバレエのイベント企画を始めました。ただ、普通のバレエではなく、従来の性別の枠にはまらない、トランスジェンダーフレンドリーなバレエです。
今回は、この企画に至った理由を綴ります。

①性的マイノリティの課題への関心

私が性的マイノリティ(セクシュアル・マイノリティ;LGBTQなど)の課題に関心を持ったきっかけは、大学生になってLGBTフレンドリーのタイに留学したこと、社会人になって性的マイノリティの祭典であるレインボープライドに参加したことです。どちらも、人目を気にせず自己表現してキラキラと輝く人々で溢れていました。

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レインボープライドに参加したとき、性的マイノリティの当事者が私自身と重なりました。なぜなら、自分自身も社会的マイノリティだと認識して、今までの人生において、窮屈に感じる瞬間がたくさんあったためです。

例えば学歴。努力して東大に入学できたのに、高学歴(の特に女性)は引かれるため、在学中は大学名を聞かれても東京「の」大学、と敢えてぼかしていました。理系女子は特にレアキャラで、引かれました。
また、私は高身長です。サイズの合う好みの服を買えなかったり、日本社会に求められる「女性らしさ」から外れて敬遠されたりしました。
私の親は片親です。幼い頃「片親の子供は変人だ」と言われたり、SNSで見た「両親から教育を受けるべきだ」という意見に傷つきました。

私自身が自分らしく生きられて、性的マイノリティ当事者も自分らしく生きられたら、普段の生活で抑えられているエネルギーが弾けて、もっと活気に溢れて彩り豊かな世界になる。そんな世界を実現したい、と強く感じ、性的マイノリティの課題に取り組むことを決めました。

②バレエの魅力

私はクラシック・バレエ(以下、バレエ)が大好きで、一生踊り続けたいと思っています。私はバレエを7歳から始め、一度もやめることなく2019年現在まで習い事として続けています。

バレエが好きな理由は、バレエが私にとって自分自身を思いきり表現できるツールだからです。特に舞台の上で衣裳を着て踊るときは、自分が最も自分らしくいられる幸せな時間です。学校や職場などの社会的な場でつらいことがあっても、バレエを踊ることによってつらいことを忘れて元気になったことが幾度となくあります。

バレエの特徴の一つが、男性・女性の役割が固定化されていることです。バレエの振り付けは男性と女性で全く異なり、普段のレッスンでも多くの場面で男性と女性が分かれて踊ります。

③バレエにおけるトランスジェンダー問題

LGBT、特にトランスジェンダーは、男性・女性の役割が問われる場面において悩みを抱えます。トランスジェンダーとは、自分が自身を認識している性=自認する性と身体の性が一致しない人のことで、本人は自分のことを女性(男性)だと思っているけれど身体は男性(女性)です(※この定義は一例です)。周りの目を気にして自分の心に嘘をついたり諦めたりすることが日常茶飯事で、その結果自己肯定感が低くなり、自殺を図るなどの問題に至ることがあります。

バレエにおいても、上述のとおり男性・女性の役割が固定化されているため、潜在的な問題があります。トランスジェンダーは以下のような状況に置かれています。
・バレエに興味はあるけれど、バレエスタジオの理解が得られるかわからずできない
・レッスンの最中、男性と女性どちらの振り付けを踊ればいいかわからず悩む
・自認する性として踊りたいけれど、周囲の理解がなく踊れない
・自認する性として踊った結果、周囲からいじめや差別を受けている
実際に、アメリカのトランスジェンダーバレエダンサーJayna Ledfordさんは、自認性である女性として踊ったところバレエ講師に反対されバレエ教室をやめた過去があります(YouTube)。

自分自身を思いきり表現できるツールであるはずのバレエが、トランスジェンダーにとってはそうならないことを歯がゆく感じました。
しかし反対に、もしトランスジェンダーが好きなように踊ることに対して周囲の理解があれば、バレエがトランスジェンダーにとっての居場所になる、と考えました。
トランスジェンダーが自分と周りに嘘をつく必要がなくありのままの自分でいられる場所ができるので、自分を肯定でき、夢を諦めずに挑戦できるようになります。トランスジェンダーの自殺などの社会問題を解決できると考えました。

④なぜ非当事者が行動するのか

世の中に新商品やサービスを生み出す人の多くは、その商品やサービスが解決する課題を抱える当事者であり、自分自身の課題解決も期待して生み出しています。当事者が課題を解決する方が良いと言う人も多くいます。
しかし私は身体の性が女性で、自分のことを女性と認識していて、女性の服装をして、恋愛対象は男性という、いわゆる「ストレート(シスジェンダー&ヘテロセクシュアル)」で、性的マイノリティ当事者ではありません。

ただ、特に性的マイノリティの課題においては、非当事者が声をあげることがとても重要だと考えます。
当事者の中には、自身のセクシュアリティを他人に言えない(カミングアウトできない)方もいらっしゃいます。課題感を持っている方でも、自分のセクシュアリティがバレてしまうことを恐れて声をあげられません。
もちろん声をあげている当事者もいらっしゃいますが、他の当事者に対して影響力があっても、非当事者に関心を持たせるのは難しいと思います。
性的マイノリティの課題を解決させるには、非当事者の理解が欠かせません。
私が行動を起こすことで、当事者からも信頼され、非当事者へもリーチできると考えます。

まとめ

今回は、私がなぜ、従来の性別の枠にはまらない、トランスジェンダーフレンドリーなバレエのイベント企画を始めるに至ったかを綴りました。

こちらを読んでバレエイベントに参加してみたいと思った方や、思いに共感いただけたバレエダンサーさんは、ぜひご連絡ください!イベント最新情報は各SNSからも配信しています。よろしくお願いいたします。

追記(2020/2/5)

2020年1月までに開催したイベントをまとめました。実際どんなイベントを開催しているのか、ご興味のある方はぜひご覧ください。

🌈さやなつ
Twitter @proud2bminority
Instagram @irodori_odori



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