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うとうと

例えばミルフィーユのラビリンスにあなたがいたとして。ミルフィーユのラビリンスってなんだって話ですけどそれはその何層にも積み重なった幾何学的な?あの、そう模様の、迷路だって事が言いたかったんですけど、お菓子の壁でできてるって訳じゃなくてそういう事が言いたかったんですけど、はい。そこであなたが、突然目覚めて、わけも分からないまま連れてこられて目が覚めたら急に、なんだここ、ミルフィーユのラビリンスだ!って感じでまあ、どうしよっかとりあえず歩いて出口探してみるかって歩いてるのを、私が、上の方からこう、じーっと、ボーッと、天気のいい中気持ちいい陽の光を浴びながら紅茶でも飲みながら頬杖をついてこう、空いた窓からあなたをこう見てるとするじゃないですか。見ながらじーっと、ああ行き止まりだ...おお進んでる進んでるって。別にそこに出口がある訳じゃないんですけど、なんかやっぱ端っこに進むにつれて出口に近づいていく感ってあるじゃないですか。真ん中から。迷路って。それでおお!いいぞとか、ああ可哀想とか、なんか目で追っかけてるうちに感情移入なんかしちゃったりして。そのうちなんでこの人はここに急に現れてここをずっと歩いてるんだろうとか考えるようになって、別にそれは考えたところでどうとなる事でもないし意味は無いんだろうけれど。私だって暇だし、特にやることはなくてただじっとこうしているしかないんだけれど。私もいつの間にかここにいて、いつのまにかあなたをこうして見ているんだけど。なんか、そういうことを考えているうちにああなんか私もあなたも一緒だなぁとか思っちゃったりして。いや別に私はここにいる事に焦ってる訳じゃなくて、状況に甘んじているだけだけども、あなたはさぞかし不安で胸がいっぱいだろうけれども。だからやっぱり頑張れー!って応援したくなって、応援したくなっていつのまにか窓から身を乗り出して必死になってあなたを目で追いかけてて。あなたは全然私に気づいてるようではなくて、淡々と道を進んでるだけだけども。なんか気持ちが昂って頑張れ...って声が出ちゃったんですね。自分で自分にビックリしちゃって。でもその言葉があなたに聞こえるはずなんてなくって、聞こえたら聞こえたらで恥ずかしいななんて思っちゃったりして、結局は小声のまま伝えきれず終いなんですけど、まあ、その、じーっと、ただ見てたんです。たぶん15分か20分くらいか、体感ではそれくらいだけどもっと経ってたかも。それくらいの時間そうやってみてたら、お母さんがそろそろ行くよーって私を呼びにきて、分かったーってあなたをよそ見に少し惜しみつつあとにするんだけど、その瞬間、なんか私あなたとついに目が合ったような気がして。ああこれはとんでもなく印象に残っちゃってそれが。はい。でも結局その事を、っていうかあなたの事をお母さんとかに話すこともせずに、何でかわかんないけどしなくって、お母さんとか特にあなたの事に触れないし気づいてなかったのかな。話さないから、私も話さないから、そのままにしちゃって、だからあの、なんか、ごめんなさい。ほんとうに。私本当はちょっとっていうかだいぶあの、後悔してるんです。よ、これでも、はい。あの。うん。そう、ですはい。ありがとう、ございます。え、いやてか覚えてたんですね、え、うんはいやっぱ目合ってましたよね、えーじゃやっぱあの時、はい、えー初めて気づいたんですね。うん。嬉しかったです。はい。いやそうですよ、私の家練馬の一軒家ですけど、いや例えばって言ったじゃないですか。うん。いや、はい。へへ。

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