2023ふりかえり(主に美術)

2023年、4歳になり人間となりつつある息子を前に、この時期に種を蒔き、土を耕しておかないとまずい…と焦り、保育園から幼稚園へいれ本人にとっても大きな変化、私もさらに細切れのなかの仕事+子育てで自分の「やりたいこと」を棚上げする日々でした。会社の売り上げは大健闘で12月から10期を迎え、コツコツ積み上げてきたことが実んだと自負してよいと思います。ということは…、子育て前はずいぶん遊んでいたんだなーと思うのですが、それが養分になっていまがあると思えば人生の時期的な問題なのかもしれない。
この細切れの時間のなかで、優先順位は子どもにしつつ自分の活動や主に執筆を進めることが2024年の課題です。

某美術大学で博物館経営論を担当して8年目になり、これっておそらく任期が10年までではないかと?思うので、そろそろ集大成なのですが、集大成にふさわしくネタが豊富になり学生からのフィードバックも充実していました。新聞記事なども(主に日経と朝日に偏ってしまうのですが)いつも紹介しており、2023年のアートを振りかえる的なネットの記事も散見されるので、自分的なトピックも書いておきたいと(またも大掃除の細切れのなか)考えていたことをちょこっと書いておきます。

日経新聞の美術回顧記事は、以下のもの。ミュージアムに焦点が置かれるものでした。クラファンによる経済的自律をはかり9億集めた科博や、川崎重工とオフィシャルパートナーを締結した西洋美術館の話題、アーカイブにも今後さらに力を入れていくだろうNCAR(エヌカーと読むらしい)なども取り上げている。
こういう華々しい事例と共に、コスト高によるチケット高騰なども取り上げられているが、ヴァンジ美術館の県への無償譲渡リアス・アーク美術館の資金枯渇など、地方の美術館や私立の美術館は変わらず経営については工夫を凝らしていかないといけない時代である。
ちなみに川崎重工と西美の事例は、ユニクロがTATEやMoMAとパートナーを組み、夜間開館を実現したりさらにはUTプロジェクトに作品を使うなどの事例を参考にしていると思うが、国内にももっと広がればと思う



一方の朝日新聞の美術回顧記事は展覧会にフォーカスするもの。
女性作家や周縁ともいえるテーマへの照射についても言及されていた。この記事に言及はなかったが、個人的には合田佐和子展帰る途もつもりもないはかなり心に残った。子どもがいてもあっけらかんとシングルになり、キッチンをアトリエにしているところや、趣味的に見えそうなオブジェの連鎖で大きい舞台作品などにつながっていくようなその態度自体にアーティスト魂も感じたし、工夫とエネルギーで乗り越えていくアクティブさに勇気付けられた。

個人的には、さいたま国際芸術祭2023でコーディネーターをすることで、展覧会とはなにかという問いへの回答(あるいは問い自体)がさらに深まるものとなり、アートやアーティストの変化を肌で感じた。目というアーティストの志向する総合芸術に向かっていく感覚は、展覧会・作品・劇場・文学、、、さまざまな領域を横断して個も統合あるいは拡張していく(チームだし)、さらにテーマが「わたしたち」であるというユナイテッドな作品あるいは場だった。それぞれの作家が主張している場合ではない時代になっていく、スーパーアーティストやスーパーキュレータの時代はもう終わったと肌で感じた。
泉太郎のオペラシティの展覧会も度肝を抜くものだったが、主体と客体が常に入れ替わり融合するという点で似た体験だったと思う。

博物館法の第 23 条には博物館は(美術館も含む)「原則無料」と明記してあるのだが、原則ではない状態が続いているんだなと感じつつ、しかし、、お金がかかる、お金がなくてはできないのが展覧会なのであった。

では良いお年を。来年こそ執筆をがんばりたい。

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