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「感染ゼロ」の岩手から考えてみた~withコロナ時代の備忘録③

 岩手県の「感染ゼロ」の数字が薄氷の上を渡り続けてきたこの大型連休。今日は5月6日。世間の連休は10日までなのかもしれないが、私の連休は今日まで。この連休は初日を除いて4日連続でオンラインの講座やらイベントやらの予定を入れてみた。生活にリズムをつけようと、敢えて1日にまとめたりせず分散させたのだが、もう1日くらいオンラインの予定がない日があったほうがよかったようにも思う。
 それはさておき。連休中、
①岩手県在住UIターン者との非公開オンライン
②岩手移住計画主催の公開オンライン
ーーの2つで、withコロナ、アフターコロナや、開疎化、人の移動 といったテーマについて、人の考えを聴く機会を持てた。

岩手在住UIターン者で「開疎化」を考えてみた

 県内各地に暮らす5名でこれから先の都市部と岩手の人の流れや都市部に暮らす人のニーズについて考えた。4名が首都圏からの移住者なので、そこまで的外れではないのではないか、と思う反面、私たちはこの緊急事態の都市で過ごしていないので、もしかしたら今の都市部の人たちの感覚を読み違えているのではないかという不安もある。
 アフターコロナの時代は人々は開疎化を求め都市→岩手(地方)に人が動くだろう、と明確に言ったのは私ともう1人。この点の認識は全員一致しているかと思っていたが、総論賛成しかし……、という意見が多くて興味深かった。
アフターコロナの人の動きをめぐって、彼らの意見のポイントは
・この極限状態を体験し、むしろ医療や福祉が整っている都市部の方が安心と感じている人が増えているのではないか
・都市にいながら感染リスクを管理する技術が定着するのではないか
・地方の中でも、リモートワークをしながら東京のオフィスに通いやすい地方都市が選ばれるのではないか(つまり岩手は不利)
ーーに要約される。
とくに上の2つは自分にはない視点だった。

 なぜ岩手は「感染ゼロ」なのか問題

 話はおのずとなぜ岩手は「感染ゼロ」が続いているのか、という話題に。みんな「ゼロのわけないだろう……」と思いつつ、その背景について話していると、「村八分が怖くて言い出せない」、つまり地方の閉鎖性という常日ごろからの田舎あるあるに行きつく。UIターン者だけの気軽な集まり(オンラインだけど)ということもあり、日ごろから感じている地域の課題や改善すべき点に話が展開していったところが興味深かった。
 「岩手は同調圧力が強い」という認識を持っていて、それによって横並びで飲食店が休業したり、コロナ帰省を控えたり、という力になって、もしかしたらコロナ感染が拡大しない要因ではあるかもしれない。一方で、その同調圧力が岩手の自殺率の高さや若者の発言のしにくさにつながっているのではないか……との指摘が重い。

 コロナの話をしていても地域課題がテーマになるというのは、たぶん都会の人だとあまりないことだと思う。この社会現象と地域の地続き感ひいては自分事感のようなものは、別途考えてみたいと思う。

アフターコロナ移住はうねりになるのか 

 以下は、オンラインの内容も踏まえつつの私見。 
私自身が交流がある岩手への移住者の中には東日本大震災を契機に岩手に移住した人も多く、「震災を東京で体験し、都会の脆弱性が怖くなり移住を決めた」と言う人も1人や2人ではない。そのために、今回の新型コロナで外出自粛を経験した人たちの中にも同じ動きをする人が出てくるのは自然なことだろうと思っていたが、問題はそれがどのくらいのムーブメントになるかということだ。

完全な私見だが、その規模を左右するのは
・新型コロナによる外出自粛の長期化がどこまで続くのか
・企業のリモートワーク推奨がアフターコロナも継続するのか(どのくらいの規模と長さで?)
・地方がどのくらいの時期から「来てください」と公式に言う状況になるのか
ーーの3要素ではないかと思う。

 なので、今、大きなうねりになる、とも、ならないとも言えない。
ただ、これまで岩手への移住の流れをつくる一端を担ってきた一人として、少なくとも大きなうねりを作るための波紋のようなものは主体的に広げていき、それが地方にとっても有益なものにするための体制はつくっていきたいと思う。

「安心最優先」の社会へ

 地方はたしかに不便なことも多いし、都会と同じように稼ぐことは簡単ではない。
これまでの社会は主に合理的かどうかが優先され、不便よりは便利が良しとされてきたと思う。でも、withコロナの時期に、社会全体に不安が蔓延した結果、これからは合理的かどうかよりも、「安心」が最優先の価値観が広がるのではないかと思う。安心して暮らせるかどうかを優先に職場や家、通学先や子供の預け先を選ぶようになるのではないだろうか。

 そうなった時、職住近接が一般的で(ないしはリモートワークが可能になり)、広い土地が確保しやすく、地域の生産物が手に入りやすい田舎は、安心第一の価値観を持つ人たちの選択肢になりうると思う。

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