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お金の流れを可視化する:環境意識をしたくなる、世界づくり

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先日、DISのメンバーが環境に配慮した金融判断を行えるようになるために、金融業界に革命を起こそうとしているAspirationsというフィンテック企業についての記事を書きました。今回の記事はそのフォローアップ版として米国のいち生活者としての観点から、私が注目しているAspirationの機能についてより詳しい解説をしたいと思います。


環境への優しさは財布に厳しい

今年1月より、米国がバイデン政権に変わったことや、世界中で異常気象が発生していることなどから、気候変動対策への取り組みが活発化していると個人的に感じています。しかし、環境に配慮した選択を積極的に行う必要がある時代に生きているものの、環境に優しい行動やチョイスが一般人のお財布に辛いことが多いと思います。一般の消費者にとって、環境に配慮した買い物をすることは、普段のものより費用が高いことが多く、余裕がないとできないことであるのが現実です。
アメリカでの小売業界を事例にすると、徹底した透明性を掲げることで上品質な衣服を正当な値段で販売するEverlane、「One for one」という靴が一足売れる度に靴を必要とする子供に無料で靴が一足届けられるビジネスモデルで支持を集めるToms、「Buy a Pair, Give a Pair」という眼鏡版One for oneを提供する高品質アイウェアD2CのWarby Parkerなど、環境に配慮していることを売りにしている人気ブランドがいくつかありますが、どちらも高級ブランドではないものの、日頃から生活費に困っている人が買い物することは少ないかと思います。

例えば何でも手頃な値段で揃う小売最大手のウォルマートで服も買うような人にとって、、靴を買おうと思った時にWalmartなら$10なのが、Tomsでは$100になる買い物を「環境のために」という論理のみでTomsで買うようになるのはハードルがかなり高いと思います。
またオンラインショッピングが増えていく現代で、買ったものの郵送で排出されるCO2を削減するためにかかる料金を買うときに自分で払うと言った、カーボンオフセット購入というのが近年では増えてきました。例えば、Shopifyのようなプラットフォームを利用してオンラインで洋服を購入すると、購入した商品の重さや郵送される距離によってカーボンフットプリント(CO2排出量)が計算され、会計時にその料金も支払うことが選べるようになっています。

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このカーボンオフセットの領域に関しては、サイトが提示する「環境にやさしい」選択が実際に環境に有益なのかどうかは議論があるところで、また別の機会にでも記事にできればと思います。
このカーボンオフセットの事例で触れたいのは、環境に優しい選択をするにはお金がかかるということです。一般の人々が忙しい毎日の生活の中で、環境に対する行動を意識するようになるには、善意からだけでは考えられません。気候変動への取り組みが拡大し、主流になろうとしている今、環境に配慮した選択がいかに合理的な選択、つまり当然の選択にできるかが最大の課題であり、最大のチャンスではないでしょうか。

こういった中、個人的にはCliamte Fintechを非常に魅力的なものと感じています。金融面での判断や行動と、環境に良いことを結びつけることができれば、気候変動の軌道を大きく変えることができるのではないかと考えています。

具体的な解決策はいまだにない状態ではありますが、Climate Fintechで活動しているStartupなどからいくつか面白いアイデアがあると感じています。
今回はその例としてAspirationsを見てみましょう。

環境へ配慮したブランドでの購買を支援するConscious Coalition

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Aspirationsは、ユーザーに環境に配慮した買い物をしてもらうためのサービスをいくつか用意しています。まずは「Concience Coalition」です。これは、環境に配慮した活動を約束し、環境に配慮した事業活動を行っていると審査された加盟店のグループです。大幅な仕組みとは、ユーザーがConscience Coalitionに参加している企業から商品を購入すると、5〜10%のキャッシュバックを受けることができるようになっています。気候変動対策を行っている企業から商品を購入するというインセンティブは非常に強力に思えますが、Conscience Coalitionに参加している企業のリストを見ると、かなり偏っているように思えるのが現状です。先ほど述べたように、これらの店舗の多くは元々高い価格で商品を提供しており、一般消費者が近所で安く買えるものをここで仮に買うような行動変容にはなりにくいかと思います。このように、環境意識を高めることでキャッシュバックやクーポンを消費者に渡すコンセプトは非常に魅力的ですが、活用性または一般消費者を惹きつけることは大きなハードルになっているようです。

日々の消費から環境への意識を高めるきっかけを作るAIM

Aspirationが行っている活動としてもう一つ紹介したいのがAspirations Impact Measurement (AIM)と呼ばれるスコアです。

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このスコアは企業をニつの側面(従業員への対応と地球への対応)を測定するものです。仕組みとしてはAspirationのカードで商品を購入するたびに、購入先の店舗のAIMスコアが見え、したがって消費者自身のAIMスコアも購入行動をもとに測定されるものです。

このようにして、消費者はその店舗で買い物をすることによって自分のお金がどのように周りに影響しているのかが可視化されるのです。以前までは見えにくかったお金、個人の行動、また信念が「見える化」し、透明性が出でくるのはとても興味深い進展だと思います。以前の記事で書いたように、環境に優しい判断や選択を妨げている主な理由はこのような行動と影響の繋がりがぼやけているのが大きいと考えています。

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AIMのように、お金の流れの透明性を向上することで、金銭的な面からも環境を意識する決断が合理的になるのは非常に可能性を感じる方向性ではないでしょうか。



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