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【1989年100日旅】3日目。モスクワ

3日目。日記には「ボリショイサーカスに行く予定だったけれど券が買えなかった。レストランでお昼ご飯を食べて、雪で遊んだ」とある。1989年4月8日のモスクワには、溶けかけた雪があちこちに残っていた。

滞在していたホテルのレストランでは、店員が無表情で皿をがちゃんと叩きつけるように置いた。怒られているような気持ちになったけれど、彼らは別に機嫌が悪いわけではなく、それがデフォルトなのだった。地下鉄のドアもギロチンかと思うほど乱暴にがちゃんと閉まるし、集合住宅にあるエレベーターも骨組みがむき出しだし、スピードも早い。容赦のない国だと思った。

滞在しているホテルには各階にコンシェルジュ的な女性がいて、この人たちもまったく笑わなかった。のちに父から「ソ連では、笑顔を見せると『私は弱いですよ』というメッセージになるんだ」と教わった。長逗留だったので、コンシェルジュの女性たちには挨拶をし続けた。そしたら次第に仲良くなれて、ときどき笑顔を見せてくれるようになった。挨拶、大事である。

ちなみに今。南フランス・モンペリエに引っ越してきて、ここで友達になったロシア人が3人いるけれど、みんな普通ににこにこする。1989年のソ連は、今のロシアとは違ったのだ。

旅はあと97日。

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