同人作家向け、確定申告のやり方マニュアル

同人小説家の小夜夏ロニ子です。

去年初めて確定申告にチャレンジしました。

知識ゼロの状態でしたが何とか終わったので、自分の復習もかねてまとめておこうと思います。

会計用語、税の仕組み、申請手続きの仕方にまったくの無知でしたが、言葉の意味と手順さえわかればやること自体はシンプルでした。


確定申告って何?

所得税を計算するために、税務署に1年分の事業にかかった収支を提出することです。

※所得税…その年の収入にかかる税金のこと。

税務署のHPで収入と経費を入力するだけで書類がつくれます。
その書類をお近くの税務署に郵送かネットで提出する作業です。


いつやるの?

1/1~12/31の収支を、翌年の2/16~3/15に申告します。

例えば私は2020年の5月から売上があったので、2020年分の収支をまとめて2021年の2月に申告しました。


会社員もやるの?

収入源が会社だけの場合は、不要です。

会社がやってくれます。年末調整でなぜかお金が返ってきたことはありませんか?

あれは会社が所得税を年末に計算して確定申告した結果、天引きされていた分が多過ぎたので返ってくるというものです。

収入源が会社以外にもある場合は、「純利益が20万円超えた場合」必要です。

例えば私の場合、会社を休職している間に趣味の小説を売り出したら利益が発生しました。会社の給与の他に50万円ほどの利益が年間であったので、確定申告が必要です。

※純利益…「売上−経費」のこと。私は小説が売れて65万円ほど入ってきましたが、つくるのにイラスト発注などで15万円ほどかかっているので、純利益は50万円くらいになります。同人誌の印刷費用も経費なので、利益が20万円切ってる人もいるかと思います。
※経費…事業をやるためにかかったお金のこと。同人誌の印刷代、PC代、いい椅子を買った、取材旅行に行った、資料として本を購入した、など。レシートか領収書の保管義務があるので経費にしたい買い物は必ずレシートもらおう。

会社員かつ、純利益が20万円超えない場合は、確定申告は不要です。


何すればいいの?

1年分の収入と経費を合計して、確定申告の用紙を記入し、お近くの税務署に提出します。

国税庁のHPで収入や経費をぽちぽち入力するだけで、必要な書類がPDFで出来上がります。

できたPDFを提出する方法は4つ。

・印刷して、近くの税務署に郵送する
・国税庁のHPからそのまま提出する(e-tax)
・商工会、税務署に書類を持ち込む
・税理士のいる商工会にe-taxで代理申告してもらう

私は今回、商工会でいろいろ質問しながらその場で一緒に書類をつくってもらいました。

どのやり方を選ぶかで税金のお得になる金額が変わります。

ただし、国税庁のHPからそのまま提出する(e-tax)にはカードリーダーとマイナンバーカードが必要です。

マイナンバーカードは「通知カード」(葉書で来たぺらぺらの緑の紙)ではなく、役所で発行しないと持っていないはずです。

この3月くらいまでに国から「発行したい人はこの葉書の番号と一緒にQRコードから申請してね!」という葉書が来る予定らしいですが、今すぐパッと取得できるものではありません。

つまりはじめての確定申告でマイナンバーカードもない場合、自分でe-taxすることはできません。

本当はe-taxが一番お得ですが、今年が初めての確定申告なら多分「印刷して、近くの税務署に郵送する」か「直接持ち込む」しかできません。


どれが一番お得?

確定申告には2種類のフォーマットがあります。

・白色申告…収支の書き方が簡単。少額の臨時収入や副業など、収入が年間20万円をちょっとしか超えない人向け。控除10万円。
・青色申告…収支の書き方がやや複雑。大きな金額向け。控除55万円。e-taxだと65万円
※控除…「売上がこの金額までなら税金を課しませんよ」とおまけしてもらえる制度。いろんな原因でつくが、確定申告では上の3つのどれを選ぶかで金額が大きく変わる。

私は今回青色申告ができず、白色申告でやりました。

結果、1万円ほど所得税を納めることになりました。

もし青色申告だったら、0円だったそうです。悔しい。

しかし露骨にお得な青色申告をやるためには、いくつかの申請や届出をしなくてはなりません。

私はその届出をしていなかったために、2020年の分は泣く泣く白色申告にしたてワケ…。

しかも青色申告は書類の書き方がやや特殊で会計の知識が必要らしいので、少額の利益ならまずは白色申告がおすすめです。


青色申告をするには?

純利益20万円をほんの少し超えるくらいの人は白色申告でいいので、読み飛ばしてください。

青色申告をするには、以下の2つの書類を税務署に提出します。

・所得税の青色申告承認申請書
・個人事業の開業・廃業等届出書

いわゆる開業届というやつです。個人事業主として独立するときに出すやつですね。

しかし会社員でも、青色申告をしたい場合は開業届を出さなくてはいけません。

個人事業主は会社員のままでもなれるので、副業として規模の大きな収入にしていきたいなら控除額的に青色申告した方がいいので開業届を出しましょう。

開業届は、原則「開業日から1ヶ月以内に提出」です。知りませんでした。

開業した日というのは、私のような個人で小説を売っている人の場合、初めて売上が振り込まれた日でOKのようです。

私は4月に初めての商品を発売して、5月に売上が振り込まれたので、5月を開業日として開業届を出しておかなければいけなかったのです。

「そんなの知らないよォ〜!」と泣いてたら商工会の人に慰めてもらえました。「遅くなってごめんね!って書けば今からでも大丈夫!2020年の分は間に合わないから青色にできないけど」だって。やさしい…。

用紙はこちら↓からDLできます。書き込んで税務署に郵送だ!

個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

開業届の「職業」の欄に「作家」で書くのは緊張しちゃったね。

「事業の概要」には「作家業。遅くなりましたが開業届を提出致します」書きました。税務署の人にこの一文で「頼むワ」感を伝えます。

青色申告承認申請の6に会計方式を書く欄がありますが、

(1)「複式簿記」を選ぶ
(2)商工会か税務署で相談してください。私は商工会の人に任せました。会計ソフトを使えば自動で適切な様式になるので、現金出納帳などの言葉の意味がわからなくても大丈夫です。
(3)「PC会計で行う予定」と書きます。

これで2021年から私も青色申告だぜ!

この手続きが税務署に承認されたら、青色申告を国税庁のHPから記入して行います。

結局今年は私できませんでしたが、「白色申告+収支の記録を細かく分けて書いた書類(4枚)」という作業だとイメージしてください。


白色申告するには?

何も事前の届出や申請はいりません。

2つの書類を作ります。

・所得税
・決算書・収支内訳書

所得税の書類は白色・青色共通です。

決算書・収支内訳書が、白色・青色で用紙が違います。
(しかも青色は4枚もある)

国税庁のHPから、以下のように画面を進めて書類を作成しましょう。

【確定申告書等作成コーナー】-税務署への提出方法の選択

あとは画面に従って収入と経費を入力します。

20万円ちょっとなら「雑所得」の欄に、多めなら「事業所得」の欄でいいでしょう。少なめでも、今後開業届を出す予定なら「事業所得」でいいと思います。

DLサイトからもらえる「支払調書」を確認して、売上と源泉徴収金額を書きます。

複数のサイトから振り込みがあったり、個人からの依頼であったものも全部合算で書きます。

「源泉徴収されている収入の内訳入力」の欄は、別でこの後「終始内訳書」を書くので不要です。1年間の総合計収入、所得を書きます。

※収入…入ってきた金額のこと。売上ともいう。
※所得…収入から経費を引いた金額のこと。実際に手元に残ったお金。


最後まで書いたら、画面の案内に従って「収支内訳書」も書きます。経費の種別(消耗品費、交際費、など分類の名前)をどれにするかは検索しながら見つけてください。だいたい消耗品費でいいと思います。

ただし、10万円を超える「物」の場合は後述の「減価償却」をした方がお得です。


源泉徴収ってなに?

用語として難しいので解説します。

給与を払うときに10.21%預かっておいて、相手の所得税の一部として月1で納めなくてはいけません。この預かる行為を源泉徴収といいます。

給与を払う側に納税義務があるので、例えばDLsiteは私に払った報酬のうち10.21%を預かり、所得税とは別で納税しているというワケです。

個人間の取引の場合は、「自分が従業員を誰も雇っていなくて」「請負契約の報酬を払う場合」は、源泉徴収は不要です。

※請負契約…作業時間に関わらず、納品されたら固定額でお金を払うよ、という契約。個人にイラストの発注するときとか、自分が台本の執筆依頼を受ける時とかがこれ。

例えば「従業員を雇っていない私(個人)が小説の表紙イラストをイラストレーターに発注した場合、源泉徴収は不要」ということになります。

ちなみに専属でイラストレーターを月間雇用したり、「時給〇〇円で何日まで働いてください」という形だと「雇用契約」になるので、その報酬は「給与」に分類されます。普段から給与の支払いをする側の場合は、外注で自社の従業員以外に請負契約で仕事を頼む場合も、源泉徴収しないといけません。逆に言えばその規模になるまでは源泉徴収の心配はしなくてよさそうです。


高額な買い物を経費にするときは「備品」にする

10万円までは「消耗品費」にできるのですが、10万円を超えた分は「備品」の種別になります。

例えば私の買った椅子は7万円でしたので、消耗品費になります。

しかしPCが約17万円で高額でした。

他には事務所としてビルを買ったり、仕事用に車を買ったり、なんてのも備品です。

100%仕事で使うわけではないので、多くて80%くらいまでの金額を経費として扱いましょう。

備品にすることで、「減価償却」というシステムの対象になります。

減価償却というのは、「複数年使えるものを経費で買ったとき、その後数年間は価値が下がりつつも毎年経費にできる」というシステムです。

ややこしいですが、買った年だけではなく毎年経費に計上することができるため、一度の買い物なのに来年以降も税金を払う金額が少なくて済む、というお得システムです。

極端な例えですが、200万円のパソコンを仕事用に買ったとします。これが全額の経費になった場合、売上が100万円しかなかった年は、所得(売上-経費)が0円なので、所得税は0円になります。

あと100万円の売上まで打ち消せたのに、もったいないですよね。

そこで減価償却をすると、今年100万円、来年も90万円(ちょっと減る)、というように毎年経費にできるのです(計算は適当です)。

すると来年の売上も経費でけっこう打ち消せて、お得というわけですね。

減価償却は、大雑把に言うとそんな感じのお得システムです。

「資産」についてもう少し詳しく話しますね。

備品として購入したものは「資産」扱いになります。

私はこの年、17万円のPCを書いました。

私の財布にはもうPC代の17万円はありませんが、家にPCはあります。お金がなくなったのではなく、「17万円分の物に変わった」という捉え方もできますね。

なので私は「17万円持っているような状態」とみなされます。こういう見方をする物を「資産」と呼びます。

「現金じゃないけど、お金扱いできるもの」が資産、という理解で大丈夫です。

資産の価値は毎年一定の割合で減っていくことになっています。車も建物も劣化しますよね。

この毎年減った分の金額を「減価償却」と呼び、経費にできるのです。

例えば私のPCは17万円で買いましたが、来年は4万円くらい価値が減ったとします。

(PCは4年で0円になる、などは法律で細かく決まっています。)
すると来年、「4万円くらい仕事で使ったから減ったのさ」とみなして、4万円経費にしてよい、というシステムが減価償却です。

PCの価値が0円になるまで、何年もこれが続きます。細かい金額は使用した月で割って出すのですが、詳しくは商工会か税務署で。

とにかく覚えてほしいのは、「10万円超えたら備品の欄に書く」「備品の欄に書いたら来年からもなぜかちょっとずつ経費にできる」という部分です。

経費は非課税ですから、なるべく使ったお金は全部経費にしましょう。10万円以上の買い物を同人活動用にするときは「備品にできるかも」と思えるとお得です。

・10万円以下の買い物…消耗品費
・10万円以上の買い物…備品


結局確定申告は何すれば終わるの?

今年がはじめての確定申告なら、

・所得税
・決算書・収支内訳書

の書類を国税庁のHPでつくり、郵送か持ち込みで税務署に提出すれば終わりです。

添付書類として「本人確認書類(免許証など)」と、会社からの給与もある人は「源泉徴収票(会社の)」を一緒に送ります。

来年こそは青色申告にチャレンジしたい方は、開業届と青色申告承認申請書も一緒に提出しましょう。なんせ控除額が白色だと10万なのに青色は65万だからね。


来年の確定申告に備えてやること

・事業にかかった毎月の収支を記録する(生活費の記録は不要)
・経費にしたい領収書・レシートを7年保存する(義務)
・外注するときは支払調書を発行する(請求書がもらえるなら不要)

この3点をやっていれば、確定申告は大して難しくありません。

売上規模が大きく、青色申告をしたい場合は、会計ソフトで収支を記録した方がいいでしょう。1万円くらいからあります。

青色申告でつくる収支内訳書は白色申告より複雑な「複式簿記」という書き方なのですが、会計ソフトを使えば画面に従って金額と商品名を入れるだけでどの経費が何の種別なのか、資産はどうなるのか、などが管理できるそうです。

レシートを1ヶ月分ごとにクリップで挟んでまとめて、月末に今月の経費を入力しておく、というフローが良さげ。

あとは税務署に送った申告書に不備があったらなんか電話きたり出し直しになったりするかもってことで、ビクンビクンしながら待つわけですが、1年経っても何もなかったのでうまくいったんだと思います。不安なところは税務署に直接電話して聞くのもアリ。

以上、年間20万円以上の純利益があった方はまずは白色申告してみよう!の記事でした。

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