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対話には「言葉」が欠かせない。

「言葉を体に溶かし込んでから、浮かび上がらせる」

取材やヒアリングをして文章を書くときに、私が大切にしていることである。

このnoteのように自分の話や自分が感じたこと・学んだことを書くのであれば、その作業は必要ない。けれど、「相手」という存在がいるときはそういう訳にはいかない。どれだけ「相手」を「自分の内側」へ受け入れられるか。「相手を受け入れる」の深度で、出てくる文章の良し悪しが大きく変わる。

・会話で感じたこと
・目にしたもの
・実際に触ったり味わったもの
・その場の雰囲気


などを人はどうしても「自我」から相手を感じてしまう。自分の経験や知識から相手を判断し、「きっとこうだろう」と相手を決めつけてしまうのだ。

そんな「自分フィルター」をすべて外し、表面でキャッチした「私はこう思う(意見)」や「私の感じたこと」をすべて一度捨てていく。

そうして、「そのままの相手」を自分のなかの深いところまで染み込ませて、相手の良いも悪いもすべて丸呑みするかのように「相手」を自分のなかで感じる。

そのあと、「改めて、自分がどう感じるか」を浮かび上がらせ、そして文章にしていくのが、私が仕事でやっている作業だ。

このように「相手を受け入れていく」のだが、そのためにはまず「自分がどう感じたか」「自分は何に引っかかったか」など、どんな場面からでも自分の内側を丁寧に見つめ続ける必要がある。

「自分の違和感」を感じることができてはじめて、「相手の違和感」をキャッチすることができるからだ。

どれだけ文章力があろうと、知識があろうと、他人と仕事をしていくには「自分と相手のズレ、違和感」を丁寧にほぐさなければならない。

他人と対話をするときは、主に「言葉」を使う。言葉のない"ノンバーバルコミュニケーション"は9割を占めると言われるが、「私とあなたの意見は、一致していますか?」と確認し合えるのは「言葉」しかないのである。

だからこそ、「自分の意見を言葉として持つこと」と「相手に疑問を言葉にして丁寧に尋ねること」は、人間関係を構築する上でどうしても欠かせない手法なのである。

取材・ヒアリング時には、「自分が表面的に感じた疑問や違和感」と「相手の伝えたいことや本心」が果たしてきちんと一致しているかの確認を丁寧に行う。こうすることで、最終出来上がったもののズレは少なくなっていくのである。

ライターという仕事は、「相手を受け入れる」ことができてはじめてスタートラインに立てる。

もちろん、相手との付き合いの長さにもよるし、相手の性格によっても上手く受け入れられるかどうかはまったく違ってくる。

しかし、まずは「相手を丸ごと受け入れます」という姿勢を持つことは、取材やヒアリングをし、文章を書く上で何よりも大切なことだと私は思っている。

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