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憧憬


おやつの後のお昼寝
淡い光に包まれながら、ほっぺに畳のあとが付くくらいぐっすりと眠る


深夜に河原で自分のためだけにする演奏
でも結局誰かに聞いてほしくて、録音してTwitterにあげちゃうの


朝起きて食卓に行ったら、テーブルの上を歩くてんとう虫
それだけでここは森の小屋


夜更かしとしての夜の9時
夜は大人の時間だった
いつから毎日を生きる時間に変わったんだろう


君がついた嘘の天気予報
わたしが最近可愛い折りたたみ傘を買ったのを知っててわざと持たせてくれた


月曜日の飲み会
後先考えない疾走感と喪失感、悔悟、悔恨


広い原っぱにいる大樹
わたし、どこまで走っていっていい???あそこまで??それとも、どこまでも?


生クリームたっぷりのクレープの買い食い
速足で道を歩くのはちょっとだけ恥ずかしいから
でも甘くてそれどころじゃない溢れるクリーム


昼下がりのぬるい風
温かさがベッドの隣に横たわる空白の体温のように寂しさをなぞる


アリの四肢捥ぎ
純粋無垢な好奇心はなくなって、カチカチの倫理観と悲しいくらい狭い視野に、身長100cmの遠さを握る


Bメロ前のフラット
吐き出せない強い気持ちが逆撫でされる


満員電車で顔をあげた人
空虚を愛おしそうに見つめる目
虚ろに、運ばれていく


晴れの日の14階、窓からの景色
飛び出して死というゴールをまつ間の、宙にいる時間はどんなに幸福だろう


軽率に叫ぶ愛の告白
わたしだって「愛のために死ぬ」って言ってみたい


新しく見つけた先の見えない小道
その瞬間からいつもの通勤路じゃなくなるの
できるだけ生い茂っていて


霧の朝
抜けた先にまつファンタジーの世界はわたしだけの自由の世界


共感性羞恥と共感疲労
くすぐったくて恥ずかしくて、とても辛い
わたしにも泣かせてくださいちゃんと切り分けて


樹洞から出てきたヴァイオリン虫
存在にも気づけない、宝箱を覗くワクワクは今も昔も変わらないのに


ハッピーセット
お金で幸せを買っていたあの頃に戻りたい


ペルセウス座流星群の日の出会い
夏の疾走感と張り付く汗まで光り輝いて


電車の中、てのひら、こちらどうぞ
焦燥の中で急に投げられたふわふわボールはびっくりして受け取れない


返事を待つ時間
爆発しそうに強い気持ちは、返事を貰っても放たれないから


寝言
何を言っても笑みしか生まない


寝起きとしての朝10時
朝に起きているのに、お布団の温かさもお日様の柔らかさも眠気という甘さもぜんぶセットで抱きしめられる


傘なしの雨の日
ずぶ濡れになる勇気と、孤独感を心ゆくまで味わう、見栄をぜんぶ脱ぎ捨てた姿


腹の虫
どうしてお腹が空くと悲しくて泣きそうになるんだろう


あかちゃん
わたしも、泣きたいです
自分の感情をぜんぶ素直に爆発させたい


恥ずかしさをさらけ出せる人
受け入れてくれる人がいるってこと
ぜんぶ人にみせることができる人はどんな素敵な人生だろう















昔から「日常」が嫌いだった。
魔法や能力が使えて特別な存在だったらって何度も思った。空を飛びたいとずっと思ってた。今でも。ファンタジーの世界で命懸けでわたしにしか出来ないことをしてみたかった。ナルニアにも行ったし、ホグワーツにもオリンポス山にも行った。でも募るのは憧憬の念だけだった。物語の設定の全てには意味があって、人間が生を受けた意味はどこにも無いから。私は私の憧れる世界の主人公にはなれない。


逃れられない規則的な生活に昔も今もこれからも、呻き続ける。














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