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永遠に 第9話「ヒーロー交代!?」

デートらしいデートなんてしたことが無かったから。
はしゃぎすぎたのもあったと思う。
身体がかなりだるかった。

本当はもっと一緒に居たかったのだけど。

カナ兄に心配させているのも気になったし。
こうなった以上は、カナ兄の実家にお世話になりっぱなしも気になって。
だから
その日は早めにデートを切り上げてもらう事に。

次回、ゆっくりデートしましょうね。

そんな次の約束までして幸せにカナ兄の実家へと送ってもらった。
そこから自宅までは、カナ兄に送ってもらって今日のことを報告。
『良かったな』といったカナ兄の顔がどこかまだ心配顔だったけど。
これまでみたいに心配を掛けたくなくて、けじめをつけにいったんだから。ここからは心配をかけないように。心に誓って。

朝からの緊張で疲労度はマックスだったから。
その日はそのまま朝までベッドに沈んだ。1度も起きることなく朝までぐっすり眠れたのは、いつ以来だろうか。

次の日の朝。

仕事のために目を覚まし、身体を動かそうとして気が付いた。
なんとなくの自分の異変。

昨日、だるかった体は、目覚めとともにすっきりしているはずなんだけど。私はそのままベッドへと座りこんだ。

この感覚には覚えがある。
でも、仕事は待ってくれない。

なんとか自分に気合を入れて出勤。
念のために朝から風邪薬は飲んでおいたんだけど・・・
昼頃には、より状況が悪化しているのを自分で感じていた。

食欲もなく、ただただ早く帰宅するために、必死になって仕事を終わらせる。周りを見渡しても助けてくれる人はいない。
こんな時は、こういう環境に涙が出そうになるんだけど。

この状況が楽だと思う時もあるから。
都合の良い時だけ、都合の良い考えに溺れるのはやめよう。
そう自分に言い聞かせながら、なんとか仕事を終えた。

正直、もうかなり限界だったんだと思う。

どうやって帰宅できたのかまでは覚えていなくて。
でも、これだけは驚いたから覚えていたんだよね。
自宅前にある人の姿が見えた。

「昨日、帰る時、調子悪かったよな?」

さすがだと思った。カナ兄にはかなわない。

「どうしてわかったの?」

そんなことを聞く方が、おかしいような気がする。
私のちょっとした変化にすぐに気付いてくれる彼は、やっぱり私のヒーローなのだと思う。

「そんなことはいいから。早く家開けて、すぐに寝ろ!おかゆ、嵐に作ってもらって持ってきたから」

カナ兄は、致命的に生活全般のことが苦手。
こういう時は、嵐くんの助けが必ずある。

「じゃ、食べられるね」

なんて、ちょっと冗談半分本音を言えば

「そんな口叩けるぐらいなら、大丈夫か?」

心配していた顔が少し緩んで、私もようやく笑顔になれた。

だいぶ、春の気配が感じられ始めた今日この頃。
それでも、朝晩はまだ冷え込んで。
暖房器具と冬の洋服はそのままにしてある。

「とりあえず、こたつで暖まってて。キッチン使うぞ!」

温めるぐらいは出来るというカナ兄を、ちょっと心配になりつつ、言葉に甘える事にした。帰ってくれば甘えられる存在がいる事に、昼間のことを思い出して安心する。
嵐くんが作ってくれたお粥に、一緒に食べてと香のものまで用意してくれていて。カナ兄と嵐くん、二人の温かさに触れて、身体がすごく温まった。

食事が済めば、ベッドに入るようにと言われて。

「そばにいるから」

カナ兄の優しい言葉に安心感をもらう。
とにかくだるかった体は、やっぱり39度近い熱があって。
ベッドに入ればもうほとんど、意識を失う形で眠りについていた。

どのくらい眠っていたのだろうか。
誰かの話声で目が覚めて。
ふと、声が聞こえる方を見れば、そこには二人の男の人の姿があった。
嵐くんも様子を見に来てくれたのかなぁなんて思っていたのだけど。

「愛梨、斉藤社長が来てくれてるよ」

カナ兄の言葉に驚いた。
朦朧としていた意識もはっきりと目覚めて。

「え?」

驚きのあまりに声が出るほど。

「俺は、もう帰るよ。後は、斉藤社長がいてくれるらしいし。お大事にな。」

カナ兄は、そう言って部屋を後にした。
なんとなく気まずい空気がそこに残っている気がしたのだけど。
だるい体で、そんなことまで気を回す余裕がなくて。
それでも、彼に何か出さなければと思い、動き出そうとしたところで佑貴さんに止められた。

「大丈夫ですから、眠ってください。ここからは僕がそばにいます」

不思議な感じがした。
カナ兄じゃない人が、こういう時にそばにいてくれることが。

「僕だとダメですか?」

心配そうに見つめる佑貴さんにこたえるように、私はベッドに戻りまた目を閉じた。

そうだよね。これからは、頼るところが変わるんだよね。
そう思って、佑貴さんの気配にまだ慣れないながらも、私はいつの間にかまた眠っていたようだ。

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