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シャーミラとの出会いとイスラム教徒の結婚観

Saya、私、来週大学辞めるんだ。結婚するの。

と、シャーミラが言った。

それを聞いた私は返す言葉が見つけられなかった。

彼女はイスラム教徒。当時の彼女はまだ20才。
スリランカ最難関の試験を突破し、トップ大学での学びをスタートさせたばかりの頃であった。しかし、彼女はその学びの機会を捨て、結婚することになってしまった。

相手は、どんな人かも分からない。
親が見つけてきた人だった。

スリランカ人と宗派

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スリランカでは主に、異なる3つの宗教を持っている人々が共存している。人口の6割以上を占める仏教徒のシンハラ人。イギリス植民地時代に、ティープランテーションの労働者としてインドからスリランカに渡ってきた子孫であるタミル人。彼らはヒンドゥー教を信仰している。そして、残りの1割の人口の中にイスラム教徒が混ざっている。

シャーミラは、そんなマイノリティーである、イスラム教徒であった。

宗教が違えば、それぞれの結婚観も大きく異なる。

まだ20代前半の私には、自分自身の結婚さえもイメージが湧かないのに、その日、私は突如、スリランカで、シャーミラから彼女自身の結婚について告げられることになったのだ。

そんな私は、シャーミラの結婚を心から祝福することはできなかった

イスラム教徒のシャーミラ

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シャーミラは、私のイスラム教徒の友達の中で最も従順なイスラム教徒であった。

シャーミラの服装は誰よりも真っ黒であった。

チャドールと呼ばれる、全身を覆う黒いポンチョのような服を着て、顔にはカーブと呼ばれる、目だけ出ているショールをかぶっていた。

そして、手には黒い手袋と、足元も黒い靴で覆っていた。

そんなシャーミラは、普段から3人のイスラム教徒の友人と寮を歩いていたのだが、彼女の服装は際立って黒く、一体彼女はどんな雰囲気の女性なのか、全く分からなかった

シャーミラとの出会い

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私はスリランカ留学中、シンハラ人、タミル人、イスラム教徒が、共同生活をしている女子寮に、たった一人の外国人として生活をしていた。

私の部屋は、三階の階段に最も近い角部屋だった。その部屋は、鍵が壊れていて、いつもドアを開けるのに5分くらいかかる。とてもイライラする部屋であった。

そんなある日、私はいつものごとく、鍵穴と格闘していた。すると、私の後ろを、シャーミラとそのイスラム教徒の友達3人が通りかかった。

イライラしながら鍵を開けようとしている珍しい外国人の私を見て、居ても立ってもいられなくなったのか、シャーミラが突然声をかけてきたのだ。

「どうしたの?大丈夫?」

そう、出会いは突然なのである。

私は、これを機会に、シャーミラとその友達3人の部屋に、よく遊びに行くようになった。

私の理想的な男性は?

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いつものように、私はシャーミラの部屋に呼ばれ、彼女を含め4人のイスラム教徒の友達と、色々な話をして楽しんでいた。

その日の話のテーマは「理想の男性」だった。

20代前半の私たちにとっては、心の躍る、楽しいトピック。
各々、理想的な男性の条件を述べていく。

シャーミラも、楽しそうに、理想の男性の条件をたくさん述べていた。

この部屋にいる時ばかりは、シャーミラは、黒い服ではなかった。シャルワと呼ばれる、カラフルな服を着て、頭にはショールをかけている。女性の前だけ見せられる、ちょっとした私服である。

いつもは、目しか見えないシャーミラも、この時ばかりは、表情がしっかりと見える服装で、ニコニコと笑みを浮かべながら、私に理想の男性像をたくさん教えてくれた。

シャーミラの結婚

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Saya、私来週大学辞めるの。結婚するんだ。

そんな話をされたのは、理想の男性について語り合った日から1ヶ月も経たない日のことだった。

私は、驚きを隠せなかった。

シャーミラは、最難関と言われる試験を突破し、大学に入学したばかりの1年生であった。まだ、大学での学びは始まったばかり

大学の学位を持てば、将来はきっと色々な道が開ける可能性は大いにある。

スリランカという国で大学に進学できる人は5%と言われている中、その5%に選ばれたシャーミラが、大学を辞めるなんて、私には信じがたかった。

そして、シャーミラは勉強が好きだった。

なのに・・・

そんなシャーミラは結婚する。しかも、親が選んだ相手で、一度も会ったことのない人と結婚するなんて、私は正直とてもショックだった。

だから、シャーミラに、私はこう聞いてみた

「シャーミラ?それで幸せ?」

そしたら、シャーミラは、私にこう答えた。

うん、とても幸せ。
相手の男性とは会ったことはないけど
親はいい人だって言ってたし、銀行員なの。
それに、私の親は私が大学で学ぶことより
結婚を望んでいるから。

シャーミラとの別れ

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そして、シャーミラは大学の寮を去っていった。

一方、私はいつもように、立て付けの悪い自分の寮の部屋の鍵穴と格闘していた。そんな時、イスラム教徒の女の子グループが私の後ろを通って、笑いながら声をかけてきた。

「Saya、また鍵と格闘しているの?」

「うん、そうそう。この鍵、本当使えないんだよー!!」

なんて答えながら振り返ると、そこには、いつものイスラム教徒の女の子グループがいた。でも、私の目に映った色は、いつもよりもトーンが明るかった。その瞬間、私はシャーミラとの別れを知ったのであった。

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