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見えない努力

ーー残暑が残る9月の初旬。

そろそろ、朝晩の冷え込みが激しく、長袖を羽織らなければ風邪でも引きそうな空気だ。
そんな秋の訪れを感じながら、外の太陽の光に照らされ、最後に残ったセミがジリジリ声を張り上げながら鳴いている。

まるで、夏の終わりを名残惜しそうに感じているみたいだ。

外を眺めると、いつの間にかトンボが至るところで舞っている。そんなトンボを見ると、太陽の日差しは暑けれど、なんだか秋を感じる。

そんなセミの喚き声と、優雅に空を舞うトンボを見ながら、少し冷たい風を感じ、今まさに夏から秋へと季節のバトンが渡っているのかもしれないと感じる。

あ、ススキだ!

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そんな季節の間の心地よい昼下がり、私は散歩をしながら、1年間ほぼ毎日のように歩き続けてきた畑道で、川を眺める。

すると、見慣れた光景の中に、大きな穂をボワッと広げ、わっさわっさと映え広がる植物を見つけた。

あ、ススキだ。

ススキを見ると、もう秋なんだと確信を持てる。
あぁ、やっぱり秋なんだ。この空気は。

ススキと秋の始まり

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私たちは、ススキを見ると秋を連想する。

しかし、不思議なもので、この時期になるまで、ススキは今までどこにいたのか分からない。

あれだけ背丈の高い植物なのだから、もう少し芽の出る時期から、我を主張していいものだと思うのだが、彼らは全く目立たない。

彼らは夏と秋の境目に、なんだか急に現れるような気がするのだ。

穂を広げ、どの植物よりも目立つ位置に群がって聳え立つ。

それを見て、私たちは、あぁ秋だなと感じるものであろう。

ススキの存在感

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秋の始まりにススキは突如として、その存在感を表す。

まるで、桜のようだ。

でも、桜は1年を通して、その偉大なる存在感を放っている。

彼らの存在感は、美しい薄ピンク色の桜の花を纏う4月だけに感じるものではない。彼らは、どんな時でも私たちが彼らを意識できるほどの威厳さを感じさせる。

ススキは、桜とは異なり、華やかさはない。彩のある花も纏わない。ふわっと、少し冷たい風に穂を靡かせるのみなのである。

そして、あっという間に、彩豊かな紅葉に人々の目は移っていく。

そう、ススキが注目される時期なんて、私たちがまだ夏の残像に名残惜しみを感じ、秋の始まりにうっすら気持ちが向くか、向かないか、そんな時なのである。

それでも、必ず毎年この時期になると、なぜか、私たちは「あ、ススキだ」と思ってしまう。

やっぱり、彼らはこの時期だけ、すごい存在感を発しているのだ。

ススキの努力

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ススキが注目されるのは、紅葉で山々が燃えるように色づくちょっと前、夏と秋が行ったり来たりする、その境目の季節だ。

それまでススキは、どこかでひっそりと成長し続けている。

その成長は、ススキが芽を出した頃から、私たちの背丈ほどになるまでを見届けようと思って、目を凝らして観察していた人にしか分からない。

それでも、ススキは誰かに注目されるわけでもなく、ひたむきに、この時期を目指し、静かにどこかで成長している。

そう、この時期にだけ見せる、あの大きな穂は、静かに道端で成長を遂げた証なのである。

まるで、見えない努力をコツコツを積み上げた成果を掲げているようだ。

見えない努力

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私たち人間はまるでススキのようだ。

私たち人間は何かを達成した時、色々な人の目に留まり、お祝いをしてもらったり、尊敬をしてもらったりする。

でも、それは一時のことであり、誰もが日々、華やかしい状態ではあり続けられない。むしろ、ススキのように人の目に留まらないひたむきに努力している長い長い日々があってこその、その一時なわけなのだ。

きっと、周囲の目は、あっという間に次から次へと移っていく。

それはまるで、秋を感じる私たちが、ススキから、あっという間に紅葉の魅力に取り憑かれるのと似ている気がする。

それでも、ススキはまた翌年、我を主張せず、また同じ時期に一時だけ、努力の証としての、その大きな穂を開き、私たちを圧倒させる。

そんなススキを、私はかっこいいと思う。

努力をしている姿は、見せなくてもいい。
努力をしていることを、自ら話さなくてもいい。

だって・・・
努力していることを言わなくたって
必ずこの世のどこかには
その努力を認めてくれる人は存在するものだから。

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