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オムレツへの望郷

 またオムレツの話をしよう。
 長崎県に雲仙という高原地帯がある。
 そこでサーヴされている雲仙ハイカラオムハヤシだけど、これが堪らなく美味くて何度も通ってしまった。
 雲仙普賢岳は有名になった時期がある。まだ平成になって浅い90年に島原市に火砕流という災害をもたらした。その取材をしていた友人は、運よくその火砕流をギリギリのタイミングで逃れることができた。そこから5年間は断続的な地震と溶岩ドームの経過観察が毎日報道されていた。

 その災害も過去の記憶になっていく。
 そしてここはドライブデートや日帰りツーリングには格好の距離感で、昔から親しまれている。そして何より良質の温泉がある。
 
 この観光地は熊本・阿蘇・天草を経由しての修学旅行の黄金ルートでもあった。それが崩れたのは2016年の熊本地震である。
 熊本・阿蘇からの集客を恃んでいたこの温泉地は窮地に陥った。私も行く末を心配していた。
 ところが単体での生存を図るために雲仙の各ホテルは果敢な投資を始めた。大正時代のハイカラというキーワードにして新館が増えてきている。
 かつての貴族が愉しんだようなドミグラスソースを名物にして、こんなにも美味しい料理を出すようになっている。
 非常に郷愁があるけど、この島からは遠い。
 

紅葉が恋しい。

 雲仙のイメージリーダーとしては雲仙観光ホテルは欠かせない。
 昭和天皇の御幸でもここが寝所となった。そのお部屋を拝見したことがある。昭和初期に設計されており、外国人のVIPのためにドアが大ぶりでノブの位置がかなり高い。手を伸ばして驚く高さにそれが伸びている。
 残念ながら財布に相談をして、このホテルではランチしか食べていない。
 社交ダンスの大会も開催されているような戦前のデカダンスを感じる宿だ。

南欧チロルを意識している外観で、室内は豪華客船を模している。

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