見出し画像

恋愛脳を紐解けば 1 | 忘れっぽい詩の神

 私自身ではモテ期などある訳ない。
 確かに周囲には、目を惹くような娘は多かったけど。
 私自身はイケメンでもないし、唯の風来坊だと思う。
 それは写真素材のモデルを頼んだり、小説の題材を探したりで努力をして口説いた結果だと思う。

 んでもモテ期という神話が、世間ではあるみたい。
 若干のニュアンスは違うけど、徒然に書いてみよう。
 最近では眠りが浅くて、深層心理に封印していた光景が、脂汗とともに蘇る夜が多い。忘却の檻に閉じ籠めていた筈なのに、夢に見る。
 あれは小学5年生の秋口だと思う。
 女子のなかでグループが形成されて、男子が文句も言えなくなる時期がある。その中でもトップを張る子はいて、誰もが目線を逸らして過ごしていた。
 運悪く、私は席替えでその頭の隣となった。
 しかも教室の右端の並びだったので、避けようもない。だから給食時間は苦痛でしかない。
 きっかけは覚えてないが、その娘と張り飛ばし合いの喧嘩になった。人生において、女子に手を上げたのは後にも先にもこの時だけだ。余程の腹に据えかねることがあったんだろうね。遠巻きに級友たちは怯えながら見ているだけで、仲裁にも入らない。それだけトップの睨みが効いていた。
 
 翌日からの事で。
 その娘の態度は急変した。
「教科書を忘れた」と言っては机を寄せて、さらには腕を組もうとする。まだ膨らみかけの三角のおっぱいを寄せてくる。
 こちとら性的な発現は、永井豪のあばしり一家の域を出ていない。もう羞恥にこちらがドキマギする。何の嫌がらせかと思い、やめて欲しいと頼むも聞き入れてくれない。
 下校時も彼女らの取巻きに囲まれる。
 その中で粛々と肩を竦めて帰宅する。

 中秋の頃だと思う。
 陸上競技場で、地域の小学校選抜選手の大会があった。
 そんな選手には縁がないので、階段状に芝生が敷かれた客席でぽつりと座って、競技を見ていると視界が塞がれた。
 布地が顔を多い、首筋には肉感的なものが触れている。驚いて振り払おうとすると、いやんとマンガの効果音のような反応が、視界の外から降ってくる。
 背後からその娘が忍び寄り、私の頭にスカートを被せて下半身を寄せているとわかった。
 きっと頬は紅潮していたであろうが、背中には悪寒が走っている。
 他校の生徒もそれを見ている。
 消え入りそうな思いで逃げ出した。
 
 あれは神話の範疇に収めたくはない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?