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ソニー・ロリンズ『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』その1

ソニー・ロリンズの超インタープレイの傑作のひとつが『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』です。

ジャズの演奏構造はテーマの合奏に始まりソロ演奏を経てテーマを再演し終わります。ほぼこのような特徴を持っています。
超インタープレイはソロ演奏とテーマ再演のあいだに位置づく演奏です。管楽器とリズム楽器がそれぞれ対となり分離しながら次の次のフレーズまで呼びかけて応え、自発的によどみなくかけ合いフレーズをつくりあげます。
本アルバムはこの凄さを音色さまざまに聞くことができる気がします。

『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』とは

ソニー・ロリンズのリーダーアルバムで1956年3月22日に録音されてレコードレーベルの「プレスティッジ」よりリリースされます。

メンバーはソニー・ロリンズ(テナー・サックス)、クリフォード ・ブラウン(トランペット)、リッチー・パウエル(ピアノ)、ジョージ・モロー(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)です。いわゆるクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ五重奏団です。

アルバムはレコード基準で5曲収録されています。①バルス・ホット、②キス・アンド・ラン、③胸に歌があふれ、④眠れぬ夜は、⑤ペント・アップ・ハウスです。ソニー・ロリンズのオリジナルは①と⑤です。

ディスコグラフィー的に言うと、『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』の7日前の1956年3月16日にソニー・ロリンズは、マイルス・デイビスのレコーディングに参加しています。アルバム『コレクターズ・アイテムズ』でレコード基準で言うとB面です。リリースしたレコードレーベルはプレスティッジです。
編成は同じ五重奏団でマイルス・デイビス(トランペット)、ソニー・ロリンズ(テナー・サックス)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)です。

『コレクターズ』のソニー・ロリンズのソロ演奏はマイルスから渡されたソロのメロディを受け継いで、次のフラナガンのソロへ繋げます。
トランペットの突き刺すミュートサウンドを和らげるソフトでクッションのような役目を果たすフレーズを奏でて、続く伸びのないシングルトーンを弾くピアノと対比させる。他の奏者とのつながりに重きを置いた演奏をします。

たった7日の違いもさることながら、リーダーの違いにより演奏も曲調も変わることに驚かされます。かたや超インタープレイ、もう一方はつながりを重視した演奏。なおピアノのトミー・フラナガンは数ヶ月後、ロリンズの代表作『サキソフォン・コロッサス』に参加します。

『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』より1曲「ペント・アップ・ハウス」


https://youtu.be/INeqyCTvm4s

曲はテーマの合奏から始まります。ソロはトランペットのクリフォード・ブラウンが取ります。ドラムのマックス・ローチの「チーン・チキ、チーン・チキ」のリズムに合わせてクリフォードの音色を形容するブリリアントなメロディが響きます。
続いてソニー・ロリンズのテナーサックスのソロ、そしてリッチー・パウエルのピアノソロが続きます。リッチーの終わりの無い弾き方っていいですよね。

3人のソロが終わると超インタープレイが(6分47秒あたりから)始まります。普通のインタープレイは奏者ひとりが、もうひとりの奏者の演奏に呼びかけて応える形で進みますが、超インタープレイではテナーサックスがドラムとピアノとトランペットに、ドラムがトランペットとテナーサックスとピアノ、そしてトランペットが次々とグルグルとよどみなく演奏が続きます。ここが本曲の醍醐味の一つだと思います。

超インタープレイの演奏は音の空間を隙間なく次々と埋めていきますが、聞き手からすると埋まっていくフレーズに吸い込まれる、不思議な感覚があります。

「ペント・アップ・ハウス」の超インタープレイの特徴がクールとすれば、他の収録曲での超インタープレイの感じるところを書くと、「バルス・ホット」は上品で優雅、「キッス・アンド・ラン」はホットで挑戦的、「胸に歌があふれ」は爆発、「眠れぬ夜は」はうつろい。

ソニー・ロリンズは「超インタープレイ奏者だ」という感をおぼえます。本アルバム以降はこの奏法を軸にしたアルバムがいくつかリリースされて行きます。パート2に続く

Sonny Rollins『Sonny Rollins Plus 4』

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