ロシアのウクライナへの軍事力行使は、NATO 拡大という西側の失策がもたらした

■ ロシアのウクライナへの軍事力行使は、NATO 拡大という西側の失策がもたらした
 私はロシアがアメリカの軍産複合体が望むような、(バイデンが示唆したような)キエフ占領を含むような大規模な軍事侵攻をしないと予想してました。紛争地域以外のウクライナ軍施設に大規模な空爆をするような冒険もしないとみてました。前者については、今後の推移をみないとわかりませんが、首都を占領するようなことをする公算が小さくないと今はみてます。後者については全く予測外れでした。
 私の予測についてはnoteに記しました→ https://note.com/sawataishi/n/n79bca789a392
 ロシアは野蛮にも軍事力を独立国に宣戦布告すらなく行使したわけで非難して然るべきですが、いかに私らが非難しても経済制裁を西側が一致してするとしても、ロシアの蛮行を抑止・中止する効果はないでしょう。中国に天然ガスを大量にうることができるし、天然資源に恵まれ、農業生産力も莫大なロシアは自給自足できますから。ロシアには千年にわたる専制政治の歴史があり、西側の自由や民主主義を少なくともロシアの為政者は全く良い模範だと考えません。千年にわたり歴史につちかわれたモノの見方を無視して、人権がどうの国連憲章がどうのと、プーチンに訴えても馬に説教するようなものであります。
 プーチンは千年にわたるロシアの専制体制の産物であり、特別に野蛮なわけではありません。典型的なロシアの支配者であり、ロシア国における国家はずっとあんなものでした。帝制ロシア→ソ連→ロシア連邦と表面的には変わってきましたが、ロシアの本能である勢力圏の死守姿勢は同じ。私達はロシアのありのままに対応していかなければならないのです。ロシアに対しては西側諸国のスタンダードであれこれ言うこと無く、ロシアの妄想を「尊重」して、ロシアが暴走しないようになだめるしかないのです。周りを武装した人間に包囲された熊は怖くて怖くてある時点まではおとなしくちぢこまっているとしても、もはやこのままでは殺される、こちらから攻撃するしかないと覚悟したら先制攻撃に一か八かかけることはありえます。今回のウクライナ攻撃は包囲された熊の先制攻撃と同じなのです。西側諸国がするべだったのは、恐れに恐れて人間を先制攻撃せんと決意をかためつつある熊に、あえて餌をあたえて宥めること。餌とは、もうこれ以上は武器を持って包囲しないとの姿勢を示すだけのことでした。
 相手の利益・立場・モノの見方(妄想であっても)を知り配慮して、話し合いでお互いの利益最大化・害悪最小化を図ることを国と国の間ですることが外交であります。この様な意味での外交が2014年からのウクライナ・ロシア問題において、フランスとドイツはともかく米国はしてこなかったのです。

 今回の事態の起源は短いスパンでみてはわかりません。中期的、すなわち第二次大戦終結から今年までの77年の推移を知ることで、プーチン・ロシアが堪忍袋の緒を切らしたのだと「理解」できます。昔の日本国が米国に追い込まれて参戦したのと似ていると思います。当時の米国は日本が先に米国を攻撃することを望んでいた証拠が数多あり、私は確実だと判断してます。今回も少なくとも米国の軍産複合体はロシアの攻撃を望んでいたと確信してます。ただし、バイデン大統領個人は軍産の影響が強いとはいえ、彼個人は攻撃を回避したいと思っていたかも知れません。彼個人の内心はわからないし、そんなことはどうでもよくて、NATO創設という過ちが最初にあり、過ちが積み重なり今回の事態を招いたのだと私は結論してます。

米国が生んだ希有な外交官(ソ連やユーゴスラビアで大使等)、歴史家、著述家であるジョージ・F・ケナン(米国の良心と称賛された)から学んだことを基礎として解説します。

▼ジョージ・F・ケナンについて
日本で手に入る翻訳書で最も推奨されるのはこれら三冊
『ジョージ・F・ケナン回想録』全三巻 by G.F.Kennan 中公文庫(原書は1972年)
『G.ケナン アメリカ外交50年』(増補版) by G.F.Kennan 岩波書店(原書は1951年)
『評伝 ジョージ・ケナン』 by ジョン・ルカーチ 法政大学出版局(原書は2007年)

本日、ルカーチ評伝を読了。偶然にも今回のウクライナ危機に当てはまる記載がありましたので、p202から引用します。

/********* 引用開始 ***************/
『20世紀の終わりに』の刊行後まもなくして、クリントン大統領、国務長官、それに国防総省は北大西洋条約機構(NATO)を拡大することにした。その多くはロシアと国境を接しており、そのうちの数カ国はかつてソ連の一部であった。ケナンは考え、つぎのように書いた(こんども『ニューヨークタイムス』紙の特集記事に掲載された)。
この「北太平洋」同盟の無分別な国大は、ここ数十年のアメリカ外交政策のなかで最大の過誤となるかもしれない。彼の文章を読んだ人は少ない。彼の孤独な警告は人々の耳に届かなかった。
/********* 引用終了 ***************/

ルカーチが言及している the New York Timesの特集を是非とも読んで下さい。1996年に NATO をロシアと国境を接する諸国に拡大すると決定したことについてのケナンの論評です。今日の事態はケナンの警告通り。ケナンは当時93才でしたが、頭脳は明晰でした。

A Fateful Error
By George F. Kennan
Feb. 5, 1997
https://www.nytimes.com/1997/02/05/opinion/a-fateful-error.html

/********* 引用開始 ***************/(^^^^の強調は私による)
But something of the highest importance is at stake here. And perhaps it is not too late to advance a view that, I believe, is not only mine alone but is shared by a number of others with extensive and in most instances more recent experience in Russian matters.
The view, bluntly stated, is that
expanding NATO would be the most fateful error of American policy
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
in the entire post-cold-war era.
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
Such a decision may be expected to inflame the nationalistic, anti-Western and militaristic tendencies in Russian opinion; to have an adverse effect on the development of Russian democracy; to restore the atmosphere of the cold war to East-West relations, and to impel Russian foreign policy in directions decidedly not to our liking. And, last but not least, it might make it much more difficult, if not impossible, to secure the Russian Duma's ratification of the Start II agreement and to achieve further reductions of nuclear weaponry.
/********* 引用終了 ***************/

重要なので fateful の適切な日本語訳について解説します。英語圏の人々ならばケナンの言う意味で把握したと思いますが、念のために。

★fateful の意味はいろいろ ※は私の解説
-英日辞書
1 運命を決する,重大な《◆fatalと違って必ずしも不幸な結果を含意しない》.
2 運命に支配された∥ a ~ encounter 宿命的な出会い.
3 致命的な,破滅的な.
4 予言的な;不吉な.
-英語辞書
1. Vitally affecting subsequent events; being of great consequence; momentous
a fateful decision to counterattack.(例文) ※決定的にその後に影響する
2. Controlled by or as if by fate; predetermined. ※まるで運命が定めたような
3. Bringing death or disaster; fatal. ※死や破局をもたらすような
4. Ominously prophetic; portentous ※不吉な予言的な、

 NATO拡大についての the most fateful error をケナンの文脈で正しく訳すならば、"最も破滅的な過誤"と表現するのが良いと考えます。ルカーチの評伝の訳者は the most fateful を"最大の過誤"としましたが、fateful が抜けており誤訳だと考えます。
 fatefulを「運命的な」と訳すと、まるで歴史の流れが、運命がそのようにしたという感じでケナンの意図から外れていると思います。クリントン大統領就任前後でそのような重大決定がなされたのであり、運命なる実在しない主体がそう決めたのではなく、クリントン・国務省・国防総省の生身の人間が決定したのですから「破滅的」「破局的」とか、「破滅(or 破局)をもたらすような過誤あるいは過ちと訳すべきでありましょう。その誤った決定の背後には NATO 創設による軍産複合体の儲け主義及び軍産による米国の政治家・官僚・学者・マスコミ支配があることは申すまでもありません。

 ケナンは、NATO拡大決定は``冷戦後の時代全体における最も破滅的な過誤かもしれない''と言い、断定はしてません。彼は物事の評価を断定的に言わないという謙抑的姿勢であり、反共主義者のごとき断定はしません。断定しないことはとても好ましいと思います。
ケナンの危惧がどうなったか、いくつかその後の事実について言及します。

・ロシアにおいてナショナリズム(民族主義あるいは国民主義という自国民の優越性と自国民の利益を赤裸々に追求する姿勢)・反西側姿勢・軍事優先が強まる、冷戦時代のような東西対立の雰囲気が復活する、ロシアの民主主義発展が疎外される かもしれないと→その通りになりました。

・戦略兵器削減交渉(START: Strategic Arms Reduction Talk)IIのロシア議会での批准がなされない危険について警告→その通りになりました

ケナンが93才の時にニューヨークタイムズに書いたその投稿からもう少しだけ引用します、私の意訳で。
「ロシアは NATO 拡大ついて、アメリカが敵対的な意図によるのではないと表明したことは信じない。ロシアは西側から拒絶されたと感じ、ロシアの威信と安全が侵害されると思った」

 既に長文ですが、ここからが本題。ケナンの1997年の所見を読んだだけで十分かもしれないので、プーチンによる蛮行の背景をもっと詳しく知りたい方とかは読んで下さい。

▼ 共産主義・ソ連に対する誇大妄想→NATO創設という巨大な過ち
 今回の事態は第二次大戦の戦後処理失敗及びソ連崩壊後のロシア敵視政策という過ちからきている、このことを順を追って示します。

1)西側の過ちその1: NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟創設
 第二次大戦後、ソ連が東欧に傀儡政権を樹立したこと、特にポーランド亡命政府の正統性を無視してポーランドに共産政権を創ったことは西側を激怒させました。ポーランドへの仕打ちは許しがたい蛮行でした間違いなく。
 このようなことが原因で、ソ連は共産主義支配を西欧にも広げる意思を有している、西欧を軍事侵略する意図すらあると、米国の指導層は信じてしまいました。これこそが巨大な誤謬だったのです。
 ロシア及び共産主義を良く知るケナンは、ソ連における共産主義イデオロギーは1937年頃までの大粛正で死滅し、共産主義は飾りに過ぎないと看破してました。スターリンにとって共産主義は帝国主義支配のための口実であり、スターリンは単なる専制君主だと正しくみていたのでした。世界支配・世界革命を追求するという意味での国際共産主義なるものは無いのだと。
 だから、ケナンは諸国はもとよりソ連圏から見ても、うらやましいような模範的な政治・経済・文化を西側諸国で実現することで、ソ連帝国を封じ込めることを提唱し、軍事的手段での封じ込めには反対しました。NATO創設に反対したのです。ケナンは国務省の中で極めて有力で発言権がありましたが、彼の提言は採用されなかったのでした。
 NATOは1949年に創設され、NATOに対抗してソ連は1955年にワルシャワ条約機構(同じく軍事同盟)を創設。ソ連もソ連圏の東欧も戦争による生産力破壊や社会機構の破壊から立ち直るだけで精一杯であり、西側に対して侵略するような意図などあるはずがなかったし、既に共産主義イデオロギーはロシア人の一部を熱狂させる魅力を失っていたのであり、二重の意味でNATOは不必要であり、無用どころか有害だったのです。
 NATOを西側が最初に創り、脅威を感じたソ連が仕方なくワルシャワ条約機構を創設したということは誰でも知る単純明快な事実で在り、この順番になったことの意味をしっかりと再検討しなければなりません。
 NATOを創りソ連を軍事力を威嚇することがなかったら、ワルシャワ条約機構は無く、西側とソ連は対立的ではありつつも、あのような態様(核兵器で互いに威嚇し、全くまともな外交なし)での冷戦は無かったわけです。NATOがなかったら、ソ連の崩壊と東欧諸国の独立はもっと早かったであろうし、ソ連が残ったとしてもあのような野蛮支配のソ連からかなりまともになっていたことでしょう。
 NATO創設がなかったら、米国民の資源が莫大に国防予算に浪費されることはなく、米国連邦政府及び州政府は教育など人間への投資をはるかに多くできていたに違いありません。
 NATOが創設されたからこそ、アイゼンハワーが呼称した「軍産複合体」という恐るべき利権集合体が発生・発展し、ついには軍産が米国連邦政府のご主人のようになることはなかったでしょう。軍産複合体は単に営利企業だけではなく大学等の研究機関も含み、その影響力は恐るべき水準となり、大統領にも議会にもコントロールできなくなってます。
 軍産複合体は米国民にとって極めて有害であり続けてますが、諸国にとっても有害です。米軍の日本駐留による日本の属国化然り、朝鮮戦争の終結すなわち北朝鮮と関係諸国の平和条約締結に反対し続けることで、韓国と北朝鮮にとっても巨大な有害作用をもたらしてきました。ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争などにみられる国連憲章に堂々と違反する侵略戦争は軍産複合体なしではあり得なかったでしょう。かほどにNATO創設という過ちの害悪は大きかったのです。
 NATO創設と軍産複合体の発生がソ連と東欧諸国にとって恐るべき害悪だったことも触れねばなりません。NATOがなかったら、ソ連と支配下の東欧諸国は国庫支出のほとんどを民生に向けることができ、教育・研究がより活性化して技術革新が進み、生活のための生産が飛躍的に増大し、もっと急速に豊かになっていたことは間違いないことです。ソ連と東欧諸国の生産力が大いに増大していたなら、よい意味での社会主義が実施されていたことでしょう。社会主義とは生産手段の公有による搾取が少ない経済というだけでなく、保育、教育、研究、社会保障(住宅、医療、年金など)が無償で受けられるという意味です。NATOが無かったら、ソ連圏において西側諸国民はもとよりその他の諸国民からして模範的な社会が実現していた公算が決して小さくはなかったと思います。もちろん、ソ連共産党の体質およびロシアの伝統的な圧政傾向からして、そうならなかったかも知れませんが、NATO創設はそうなる可能性の芽を摘みました。
 もしも、よい意味での社会主義が実現していたならば、西側における守銭奴企業支配の政治・経済体制(企業が金力で政党・政府・学者・マスコミ・官僚を支配して搾取が進行)は良い方向に自己変革せざるを得なかったでしょう。
 戦後の米国の方向性を決定したトルーマン政権とアイゼンハワー政権(この政権初期にNATO創設)がソ連・国際共産主義が世界支配を目指すとの誇大妄想にとらわれたことはなんたる悲劇でしょう。トルーマン政権によるソ連封じ込め政策は直接にジョージ・ケナンによる提言から来てますが、ケナンは政治的封じ込めを求めたのであり、軍事中心で対抗することには反対して最大限の努力をしました。しかし・・。
 ソ連・共産主義に対する誇大妄想はアイゼンハワー時代のマッカーシズムを発生させ、米国民の多くが熱病に取りつかれて、魔女狩りに熱中し、そのような熱狂の中でケナンが断固として反共病に反対したことは良く知られてます。


2)過ちその2: NATOをソ連崩壊後に解散あるいは縮小しなかったこと
 NATOはアメリカのトルーマン・アイゼンハワー政権が抱いたソ連・国際共産主義についての妄想(ナチス・ドイツと同一視)から生まれました。1991年にソ連が崩壊したのでしたから、何も考えないでNATOをそのまま維持するのか、現実の情勢に対応して縮小ないし拡大するという変化をしていくのかの検討がNATO加盟国間でなされて当然でした。そのような検討がなされた証拠自体を私は知りません。私という国際政治学者でも外交官でもないモノの「知らない」はどうでもいいとして、明らかなことは、ソ連崩壊後におきた現実、すなわち政治・経済・社会の崩壊、そしてまた当時のロシア政権による異常なまでの大急ぎの市場経済化(西側の守銭奴企業優先の経済"学者"等がそれに参与。国有企業の民営化、教育・医療・年金などの社会的共通資本維持システムの解体が断行されました。
 エリツィン政権のロシアはロシアの歴史においてもっとも破局的な事態となり、解決手段を同政権は完全に誤りました。「改革」の方向は守銭奴企業最優先という欧米先進国ですららしてなかったようなほどの民営化・規制撤廃・社会的共通資本の解体。ロシアの民衆は苦しみ、同政権は「改革」の失敗を目の当たりにしたのに麻痺したようになりました。そのようにロシアが最も弱っていた時に、NATO拡大を米国と西欧諸国は決定。決定的に弱体化していたロシアはしぶしぶとそれを認めたのでした。ただし、新規にNATOに加盟した国には米軍を常駐させない、それ以上のNATO拡大はしないとの条件で。それら条件は協定文にすべて明確にかかれてはなく、条約ではなかった。しかし、ロシアは西側の約束を信じたのでした。
 そもそも、ロシアが決定的に弱体化した現実からして、及びソ連・国際共産主義が消滅した事実からして、NATOそのものの解散が当然でした。NATOは世界支配を目指すと信じられるソ連の軍事的侵略を抑止することONLYが存在理由だったからです。
 NATO 拡大は極めて弱まったロシアという現実からして不必要なことでした。ロシアが西欧を侵略する意図はソ連時代にも皆無だったし、ソ連後のロシアにそんな意図があるはずないのは子供でもわかる現実でありました。
 NATOの現状維持については、ロシアが元気になる可能性があるので念のためにそのままという考えに一定の妥当性はありました。しかし、しばらく様子をみるという政策にすることはなく、アメリカのクリントン政権はなんと拡大を決定。拡大を正当化する政治・経済・地政学的理由は当時にはなく、今から考えても無いと思います。
 エリツィン政権のロシアは NATO 拡大は論外だと思いつつ、仕方なく認め、新たな加盟国には米軍が駐留しない、歴史的につながりが深いウクライナは友好国あるいは緩衝国として維持されると願い、米国は条約でそのような保障はしなかったものの、米国に悪意があるとは考えられなかったし、口約束と協定文ではそのように書かれたので納得。
 NATOは解散すべきなのに、維持どころか拡大したこと、ロシアはそのことをしぶしぶ認めたところまではかろうじて容認できると思います。

3)過ちその3: NATOをエリツィン政権との約束を反故にした態様で拡大したこと
 エリツィンが認めた拡大を超えて更に加盟国を増やしたり、ポーランド等の新規加盟国に米軍が常駐するなどのこと。ロシアからするととんでもないことであります。ロシアは伝統的に条約なぞ紙切れとみなして条約を破ることが極めて多いかったのは事実ですが、西側諸国は条約であれ約束(協定)であれ守るとみなしていたと思います。ロシアの伝統的な専制君主であるプーチンは大統領就任前からアメリカの約束違反に憤り、軍事力回復により威信を構築せんと邁進。プーチンのロシアは経済的にそれなりに回復して、軍事技術の革新がなされ、軍事力全体が高まりました。ロシアの軍事力・経済力がそれなりに回復してからのプーチン政権は米国・西欧諸国の約束違反を指摘しつつ、これ以上のロシア包囲形成は認め無いと断固として声明を繰り返してきました。ウクライナの NATO 加盟は絶対に認められないなどと。

4)過ち4: ウクライナの NATO 加盟は認め無いとアメリカがロシアに譲歩しなかった
 今回のロシアによるウクライナ攻撃前、ロシアはウクライナの NATO 加盟を認め無いとの文書での誓約をアメリカ(NATO)に強く求め続けました。文書でそうしないならば軍事的な解決をすることを強く示唆しつつ。
 プーチン・ロシアは、第二次大戦直後のアメリカ政府がソ連共産主義の世界支配という妄想を信じたように、ウクライナのNATO加盟はロシアに対するNATOによる軍事侵攻を妄想したのではないと私は思います。極度に臆病なプーチンとかスターリンは常に守りの姿勢であります。彼ら伝統的なロシア国家の独裁者は妄想を幾分は抱きつつも現実を直視する能力に優れてます。けれどもウクライナの NATO 加盟だけは第一に感情的に容認できないのだと思います。ウクライナの加盟が NATO によるロシアへの軍事侵略につながるとは冷徹な現状認識力からして「あり得ない」とわかっていても。
 プーチンが赤裸々にビデオメッセージで諸国民に公開したように千年以上にわたるロシアからしてウクライナはロシアからすると兄弟・親戚なのです。親戚なのに裏切りつつある、裏切らないと明確に言わないウクライナ政権に対してどす黒い情念を燃やしてきました。ウクライナの現政権の有様には歴史的な強い理由があり、その理由をプーチンは知っていると思います。
 すなわち、ウクライナ国民の半分以上は帝制ロシア時代の圧政を記憶しているし、スターリン時代の集団農場政策等に起因する人為的飢餓(何十万、あるいは百万以上が餓死し、食人が現実化)を忘れてません。プーチンはそのことを「理解」はしているものの、それでもウクライナの NATO 加盟は絶対に認められない。
 アメリカがウクライナの加盟を認め無い、あるいはウクライナ政権が加盟しないと文書で約束するだけのことをロシアは求めました。しかし、アメリカは拒否。拒否した事情はアメリカそのものが軍産複合体の圧倒的支配にあるからなのか、 and/or バイデン政権においてはケナンのような優れたアドバイザーが不在又はいても無視されているのか?
 
▼結 語
 私は今回のロシアによる蛮行は、NATO創設という過ちに根源があり、NATOを解散をしなかったこと 及び NATO拡大をロシアとの約束に違反して凶行・強行したこと、そしてウクライナを加盟させないと誓約しなかったこと(少なくともそのことについて水面下で真剣に米国が交渉してなかった)という過ちの連鎖が誘発したと考えます。プーチンを私はスターリン・毛沢東・ヒトラーについてのごとく嫌悪してますが、それでもこのように言いました。
 この事態を解決する方法は明白です。念のために書きます。
・NATO諸国、実質的には米国が主導して停戦のための交渉をロシアに呼びかけること
・米国は交渉を前提条件なしで呼びかけてはならない、前提条件なしでの交渉をロシアは容認しないことは確実と考えられるから
・米国は NATO へのウクライナ加盟の是非についてロシアと真剣に協議することを確約することを前提条件にしなければならない
・ロシアは冷戦終結後に NATO に加盟したポーランド等における米軍撤退や対ロシアのミサイル撤去についての交渉をする確約を求めるであろうが米国はそのような前提条件を認めねばならない
 ※上述の前提条件は諸課題について交渉する確約にすぎないが大きな意義が
 ありロシアは停戦と交渉を認める公算が小さくはないと思う。諸課題が
 解決すべき問題群だと米国・ロシア連邦が共に認めること自体に意義がある。
 交渉をするならば、実のところ解決は簡単。米国の軍産複合体によるマスコミ
 学者・官僚・政治家を使用しての妨害は暗に陽に活発になると予想されるが
 もしもバイデン大統領個人がまともであればロシアと妥協して
 平和が回復することであろう。ただし、バイデン氏は能力を欠如しており
 良い方向になるとは思えないのが私の直感、悲観的だ。

▼補足: 参考となる論考の一つ
- 読めば流れが分かる ウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか? https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000245598.html
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@@2022/02/21(月) to fb

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