未来について語ろう
こんにちは。さわかみ投信の澤上龍です。
先憂後楽とは読んで字のごとく、「将来のために今頑張る」という、まさに長期投資を表すような故事成語です。
今日の楽しさばかりを追いかけていると将来に大変なことが積み上がっていきますが、将来のために今日をちょっと頑張ろうと決めて行動することが大切です。
この「澤上龍の先憂後楽」では、長期投資の思想を軸に、私が日々感じることや考えを書かせていただきます。
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はじめに
投資とは未来に対して行うものだ。決して過去を変えることはできず、また過去に投資することもできない。それにもかかわらず、投資について語られる際は過去を意識する人が極めて多い。無論、過去には実績という紛れもないファクトが存在し、検討材料に値することも確かだ。しかし過去がそのまま未来に引き延ばされることはなく、現在以降については誰にとっても全く新しいのだ。
客観の過去と主観の未来
物事を検討するにあたり過去は客観、未来は主観で考えるのが健全だろう。変えられない過去は様々な視点、つまり客観的に分析する必要がある。自己否定も辞さず、冷静に見なければならない。他方で未来は主観を用いる。理由は明白、未来に対しては主体的に動いた方がおもしろいからだ。
他人が描いた未来像を妄信し、一喜一憂する人生はつまらない。そこに「あなたの意思は?」と問いたい。時代の流れといった抗えない力があろうとも、それに対してどう向き合うかと判断するのは自分次第だ。いや、自分で決めないといけない。
すなわち投資は主観
どのような未来を過ごしたいか理想を掲げよう。そのような未来に必要なものは? 課題は? それらが投資のヒントである。理想の未来はエゴではなく、他人も賛同するようなものでないとダメだ。とはいえ、他人ばかり気にしていたら客観論に陥る。あくまでも自分にとっての理想を考え、そして周りが共感するだろうかと考える。
人口減もあり国際競争力の落ちていく今後の日本経済に悲観的…。そう言う人に聞きたい。「あなたはそのような未来を望むか?」と。否が答えであるなら「ではどうするか?」とまた問う。それが行動指針だ。
できることから行動すればいいではないか。行動しなければ何も変えられない。しかし行動すれば何かが変わる可能性もある。理想に近づけるかどうかはわからない。それをリスクと言う。そして理想の未来がリターンだとするならば、リスクは常に“ リターンの可能性” なのだ。
未来について語ろう
夢物語だろうが非現実的だろうが、自分の理想の未来は自分で切り開くしかない。今の世は先人たちの想いと行動によってつくられた。であれば、これからの世は現代を生きる我々が想い行動する結果となろう。悲観論ばかり並べて行動もしなければ、それが現実となってしまう。であれば、おもしろい未来へと歩みを進めた方がよいではないか。せっかくの人生なのだから。
投資も消費も未来を形成する重要な行動である。そして個が決定権を持っている。だからこそ投資にも、そして消費にも想いを乗せたい。そして未来を語ろう。人が共感し、個の行動がいつしか群となり、社会行動となれば!
未来を語る大人は次世代から見てカッコイイ姿と映るはずだ。そして次世代が次々世代へと紡いでいく。それが、意思を持った人類こそができる“ 時を超越する業” である。自分自身の未来の資産。その資産を使う相手である社会。共に育めるのが主体性を持った長期投資である。いや、資産づくりと未来の社会づくりは一体不可分なのだ。
代表取締役社長 澤上 龍
【初出:長期投資だより2024年9月号(2024年9月13日発行)】