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投資で言うリスクとリターンとは?

 リスクとリターン、この言葉ほど長期投資と一般的な理解との間で違和感があるものはないでしょう。今回はリスクとリターンの考察を通して、長期投資の核心に迫りたいと思います。


株価から考えるリスクとリターン

 先ず現状を俯瞰してみます。新聞や金融メディア、投資家、皆が株価の話題が大好きであり、この点については過去から現在まで異論はないでしょう。皆が株価の日中の値動きについて納得できそうなニュースを持ち出して説明することに励んでおり、その値動きの理由として米国経済や中国経済に言及したり、政治や選挙に言及したり、日銀やFRBの金融政策に言及したり、その時々に様々な話題を持ち出してきます。そして、もっともらしい理由を掲げて株価の動きを予想し、それを的中させることが投資の巧拙として評価されています。

 そのような理解の下では、株価が値下がりするからリスクがあり、株価が上がったからリターンを得られたと解釈されることが当たり前になっています。

企業価値から考えるリスクとリターン

 話題の中心が、短期的に株価が上がるか下がるかの変動に終始する限り、人がリスクとリターンを考える必要性は特になく、それこそAIに任せておけば良いはずです。では、どんな時に投資家がリスクとリターンを考える必要があるのでしょうか?私は、リスクとリターンは、長期的な視点に基づく企業価値に投資を行う場合に非常に重要な価値をもたらすと考えています。

 それは何に投資をしているかという違いがもたらすものです。株価の変動に捉われて投資を行うと、そもそも何に投資し何がリターンの源泉なのかが忘れ去られてしまいます。一方、企業価値に投資すると、株価ではなくその向こうにいる企業の事業活動やそこで働く人々、その価値の高まりに資本を提供することになります。その事業が利益を生み出し、将来成長することが投資のリターンの源泉になります。つまり、企業価値に投資する場合には、株価は全く違った見え方になってくるのです。

 価値ある企業の株価が下がればそれはリスクと言わずに割安で買える投資チャンスになりますし、割安で買えればその後の企業価値の高まりでリターンが大きくなります。もちろん、株価が下がったからという理由で何でもかんでも買いに行くものではありません。将来の価値が高まる企業の株式が安く売られている場合に買いに行くのです。
そのため、買いに行く企業は厳選する必要があり、生活に必要な企業、無くなっては困る企業、将来的に価値が高まる企業に積極的に資本を提供します。

長期投資におけるリスクとリターンの関係性

 一般的に言われているリスクが大きい時に買いに行くことになりますが、価値あるものを安く買うことは、合理的な投資行動です。これを“リスクを取りに行く”と呼びます。このリスクを取ることが投資家にとっては大きなリターンを生み出し、投資において最も中心的な役割であると考えています。さらに言えば、リスクの取り方は投資家にとって重要なマインドセットでもあります。また、リスクとリターンの関係は、リスクを取ることが先で、リターンは後からついてくる関係であり、リターンだけを求めるものではない点も重要です。

 リターンについては、安く買えばいつ売っても利益を生み出し、売られ過ぎた株価の戻りだけでリターンを得られます。リターンはそれだけではなく、長期で見れば、投資先の企業が将来素晴らしい商品やサービスを提供してくれること、雇用を生み地域経済に貢献し将来にわたって必要となる企業になること、つまりその企業価値の高まりを通して、自ずと株価は評価されていきます。それをリターンと呼んでいるのです。

 また、リターンには金銭的なリターンだけではなく社会的なリターンもあります。投資した企業が成長し今よりも良い商品とサービスを生活者に提供してくれるならば、それはより良い生活環境として社会的な富となって返ってきます。

 さらに面白いことに、リターンは無くなるものではなく、リターンは次の投資の原資にもなります。リスクを取りリターンを得ることを繰り返すことが出来るのです。

 このようにリスクを取り大きなリターンを得ることを繰り返しながら悠々と投資していくのが、リスクとリターンの関係であり、長期投資の醍醐味です。

リスクを取りに行くことの重要性~まとめに代えて~

 最後に読んでいただいた方に一つ問いたいと思います。この長期投資の話は、社会生活全般に当てはまることではないでしょうか?私はこれからの日本の大人に必要なのは、リターンだけを追求することではなく、リスクを取ることであると考えており、それも堂々と将来に向けて自分らしいリスクを取って欲しいと願っています。

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“常在戦場”
運用調査部 新野 栄一 Eiichi Niino