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失敗に愛をもって向き合おう。#読書記録5

『失敗学のすすめ』, 畑村洋太郎, 講談社, 2000


「人の営みを冷たく見る見方からは何も生まれず、暖かく見る見方だけが新しいものを生み、人間の文化を豊かにする」

 失敗って想像するととても怖い。だってそれは心から願ったものが、叶わなかった瞬間だから。でもそれは、自分が頑張った証である。

 さあ、失敗と愛をもって接しよう。


 

「大切なのは、失敗の法則性を理解し、失敗の要因を知り、失敗が本当に致命的なものになる前に未然に防止する術を覚えること」

 これが、本書を通して著者が主張していることである。。そのポイントとして、1)よい失敗と悪い失敗、2)失敗情報の性質、3)大きな失敗に成長する失敗について述べる。そして最後に私の経験を話そうと思う。


1)よい失敗と悪い失敗

「失敗学」における「失敗」とは、「人間が関わって一つの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること」

 これが本書における失敗の定義である。著者はそのなかでも、☆未知への遭遇による失敗と、☆個人にとっての未知による失敗を、許されるよい失敗だと述べている。その失敗から学ぶことによって、次の成功につなげることができる。すなわち、人が成長する上で不可欠な失敗である。
  
 それに対し、学ぶことがない、まわりに悪影響が及ぶ失敗は、悪い失敗、許されない失敗としている。

 ここで著者は、本来経験すべきよい失敗は少ないとも書いている。なんでも失敗すればいいというわけではない。やはり自分の不注意や検討不足による失敗は、失敗をする前に見直さなければならないということだろう。

2)失敗情報の性質
 失敗情報の性質は、人が失敗をどのように考えているかから見えてくる。著者は失敗に対する反応を以下のように述べる。

「人は失敗を人に知られたり表に出たりすることを極端に嫌う」
「人が失敗に直面した時、隠そうとする心理が働き、同時に自責の念に駆られて必要以上に自分を責める」
 「パニックになって判断が停止する思考停止が起こることもある」

 失敗情報は、正確な伝わりにくく、風化していく性質を持つ。隠したいという心理が働くことによって、歪曲化した情報が伝わっていくのである。しかし、「失敗を生かすには、結末にいたるまでの脈絡を自分で把握する必要がある」と著者は述べる。この考えは、失敗と向き合わなければ、学ぶことができないと解釈することができる。

 次に述べることも、失敗情報の性質のひとつといえる。

3)大きな失敗に成長する失敗

「小さな失敗を不用意に避けることは、将来起こりうる大きな失敗の準備をしていることだ」ということを、私たちはもっと知るべきなのです。

 著者は、「ハインリッヒの法則」が失敗おいても成り立つと述べる。

 ハインリッヒの法則とは、一件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、さらにその裏に300件の怪我はしないがひやりとした体験がある、ということである。
  失敗も同様に、失敗の裏には、小さな失敗がたくさん潜んでいるのである。この法則に基づき、著者は、「小さな失敗にアンテナを張ると、必ず失敗の予兆を認識できるし、それに対して適切な対応をすれば、大きな失敗の発生を防ぐことも十分に可能」であると説明している。
  しかし、先に述べたように、失敗がもつ「見たくないものは見えない」性質により、私たちは、この予兆から目を背けてしまうのである。


私のお話とまとめ

 本書を通して、失敗に対して人はどのように反応し、失敗情報の性質を理解することは、落ち着いて失敗と向き合う助けになると感じた。また、私の失敗の経験と向き合う機会も与えてくれた本書には感謝したい。

 私の失敗経験のひとつが、大学への3年次編入試験で、第一志望に落ちたことである。試験を受けることを決断してから、一年半、ひたすら勉強に励んだ。しかし、その過程で、自分が本当にやりたいことなのか、という疑問を抱いていた。立ち止まるのが怖くて、その思いと向き合わなかった。この違和感を抱えたまま受験したことが、失敗した原因だと感じている。

 試験の成績は明かされていないが、専門科目、英語(TOEIC)、志望理由書の中で、TOEICの点数は十分に高かったため、原因は専門科目と志望理由にあると考えられる。私が抱えた疑念が、専門科目の試験や志望理由にあらわれていたのだと思う。

 この経験のあと今に至るまでの約一年半、一度立ち止まり、自分を見つめなおしすことができた。編入試験に落ちた経験は、ただ目標を定めて頑張るのではなく、自分の内面と向き合うことを教えてくれた。自分は何に心が触れるのか、何に感動し、何に涙を流すのか。そして、いかに生き、いかに死んでいきたいのか。そんなことを考えた期間だった。


 人生で、努力しても叶わないことがあるのだと知った日。ひとり涙を流した日々を思い出す。全力で、合格したいと心から願って勉強した。そして、心がポッキリ折れる痛みを味わった。

 今、私は、挑戦に向けて再び一歩踏み出そうとしている。やっと、自分の中から純粋なエネルギーが湧いてきた。失敗から立ち上がることができたのである。


 失敗を恐れるのは、心の底から自分が叶えたいという強い思いがあるからである。どんな失敗でも、もう一度立ち上がり、チャレンジし続ければ、必ず失敗してよかったと思う日が来る。だから失敗と向き合い、次にいかそう。

失敗はときに痛みを伴うけれど、ぜひチャレンジした自分に祝福を。

そして再び前に進もう。




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