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「避妊手術」を画像・動画・文章で説明します。

今日のテーマは「避妊手術」です。


画像

4枚の画像にまとめました。
より詳しく知りたい方は、画像の下の動画か文章がおすすめです。


動画


文章

ここからはより詳しく説明していきます。

①どんな手術?

全身麻酔かけて、お腹を切って、卵巣と子宮をまとめて摘出し、最後にお腹を縫って閉じます。
手術の手順は犬と猫でほとんど同じですが、お腹を切る位置や血管の処理が少し違います。
手術は日帰りで、10日後に抜糸を行います。


②メリットは?
 なんで手術は必要?

☑︎病気の予防

病気の予防が避妊手術をおすすめする1番の理由です。
避妊手術をしないと将来、特定の病気になるリスクが高くなってしまいます。
避妊手術には、命関わる病気である子宮蓄膿症乳腺腫瘍の予防効果があります。

子宮蓄膿症
子宮に膿が溜まる病気で、避妊手術をしていない中高齢の犬に多くみられ、での発生は少ないです。
多飲多尿、元気消失、食欲不振、外陰部からの排膿などの症状がみられ、適切な治療を行わないと死亡するケースもありますです。
治療には手術が必要で、手術のリスクは避妊手術よりも非常に高いです。
避妊手術を行っていれば、子宮蓄膿症を100%予防することができます。

乳腺腫瘍
避妊手術をしていない中高齢の犬・猫の乳腺にみられる腫瘍で、犬では約50%、猫では80-90%悪性腫瘍です。
早期の避妊手術による予防効果が知られていて、次のような研究データが示されています。

乳腺腫瘍発生率(未避妊雌が比較対象)
 犬:初回発情前の手術                ‥‥0.5%
   2回目の発情前の手術   ‥‥8%
   2回目の発情以降の手術  ‥‥26%
 猫:6か月齢以前の手術    ‥‥9%
   7〜12か月齢の手術         ‥‥14%
   13〜24か月齢の手術         ‥‥89%

1) Schneider, R., Dorn, C. R., Taylor, D. O.(1969) : Factors influencing canine mammary cancer development and postsurgical survival. J Natl Cancer Inst, 43 (6): 1249-1261
2) Overley, B., Shofer, F. S., Goldschmids, M. H. et al.(2005) : Association between ovarihysterectomy and feline mammary carcinoma. J. Vet. Intern. Med. 19: 560-563

避妊手術をしていない時のリスクを100%としたときに、それぞれの時期に避妊手術をした時の乳腺腫瘍のリスクがどのくらいになるかを示しています。
「手術をしないと100%乳腺腫瘍が発生する」という意味ではないので注意してください。

わかりやすいように棒グラフにしました。

このデータからわかるのは

・犬では初回発情前に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍のリスクを1/200
 に低下させることができ、2回目の発情以降の手術ではそのリスクが
 約50倍に増える。
・猫では6か月齢以前に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍リスクを1/10以
 下
に低下させることができ、13ヶ月齢以降の手術ではそのリスクが
 約10倍に増え1歳齢以降の避妊手術にはほとんど予防効果がない

ということです。

☑︎性ホルモンに関する問題の改善

100%ではありませんが、高い確率で複数の問題の改善が期待できます。
犬では発情期における陰部からの出血、発情後の想像妊娠尿マーキングなどの改善が期待できます。
猫では、発情期の鳴き声尿マーキング放浪などの改善が期待できます。
性ホルモンに関する問題は、現れてから手術までに期間が空いてしまうと習慣化して、避妊手術を行っても改善しない場合があります。

☑︎望まない妊娠の予防

去勢手術前の雄との接触がある場合は、避妊手術をすることで妊娠を予防することができます。


③デメリットは?

☑︎太りやすくなる

個体差はありますが、ホルモン分泌の変化により、体の消費カロリー量が減って太りやすい体になります。
同じフード同じ量食べていても体重が増える場合があり、そういった場合は、カロリーの低いフードに変更する必要があります。
そのうえ、ホルモンの影響で食欲も増えるので、余計に太りやすくなってしまいます。

☑︎麻酔のリスク

避妊手術に限らず、100%の安全性を確保できる全身麻酔はなく、非常に低い確率で麻酔が原因で死亡してしまうケースがあります。
しかし、避妊手術は健康な動物に行うことが多いため、病気の治療として行う全身麻酔と比較して麻酔リスクはさらに低いです。

☑︎尿失禁

尿失禁を発症すると、寝ている時などに尿を漏らしてしまうようになり、治療が必要になるケースもあります。

☑︎その他の変化

ホルモンの変化の影響で、行動や毛質が変わるなどの変化がみられることがあります。

☑︎繁殖できなくなる

避妊手術をすると妊娠・出産はできなくなります


④いつ手術をするべき?
 遅れるとどうなる?

マーキングなど性ホルモンに関する問題は、問題が現れてから手術までに期間が空いて習慣化すると、避妊手術を行っても改善されない場合があります。
犬は初回発情前、猫は6か月齢までに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍のリスクを大きく減らすことができます。

「性ホルモンに関する問題の改善」「乳腺腫瘍の予防」という観点では、より早い時期に避妊手術を行うべきということになります。
しかし、早すぎる避妊手術による性ホルモンの減少は、体の発育に影響するという報告があるので、当院では発育に影響のない範囲でなるべく早期である6か月齢前後での避妊手術を推奨しています。


まとめ

避妊手術には、リスクデメリットもありますが、病気の予防というメリットが非常に大きいので、当院では妊娠・出産を希望されない全てのわんちゃん・ねこちゃんに6か月齢前後での避妊手術をおすすめしています。

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