「去勢手術」を画像、動画、文章で説明します。
今日のテーマは「去勢手術」です。
画像
4枚の画像にまとめました。
より詳しく知りたい方は、画像の下の動画か文章がおすすめです。
動画
文章
ここからはより詳しく説明していきます。
①どんな手術?
全身麻酔をかけて、皮膚を切開し精巣を取り出します。
手術の手順は犬と猫でほとんど同じですが、犬と猫では切る位置が少し違います。
手術は日帰りで、犬は10日後に傷口の抜糸をします。猫は抜糸がなく、7日後に診察を行います。
②目的は?
手術しないとどうなる?
☑︎病気の予防
去勢手術をしないと将来、特定の病気になるリスクが高くなってしまいます。
去勢手術には、精巣腫瘍、前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアの予防効果があります。
これらは犬に多くみられ、猫ではもともと稀な病気なので、「病気の予防」というメリットは犬において重要なメリットと考えてください。
避妊手術と異なるのは、避妊手術で予防できる子宮蓄膿症、乳腺腫瘍と比較して予防できる病気の重症化のリスクが低いことです。
また手術が遅れても予防効果が得られる事が多く、発症した後でも治療効果が得られる病気もあるので、病気の予防という観点では去勢手術の緊急性は低いです。
精巣腫瘍
去勢手術をしていない高齢の雄犬にみられる精巣の腫瘍です。
陰嚢(陰部の袋)に精巣が降りていない停留精巣では、腫瘍発生のリスクが高く、発生時期も早いです。
多くが良性腫瘍ですが低い確率で肺などに転移し、死亡するケースもあります。
治療には、精巣を切除する手術が必要になります。
前立腺肥大
去勢手術をしていない高齢の雄犬にみられる病気です。
前立腺は雄犬のもつ副生殖線で、去勢手術をしていない雄犬ではホルモンの影響を受け、生涯を通して大きくなり続けます。
高齢になり、前立腺が大きくなりすぎると、腸や尿道を圧迫し、排便障害(便秘、細い便、しぶり)・排尿障害(血尿、頻尿、尿失禁)などを引き起こします。
去勢手術をすることで、前立腺は急速に縮小し、症状も改善されます。
肛門周囲腺腫
去勢手術をしていない高齢の雄犬にみられる肛門周囲腺の良性腫瘍です。
肛門周囲腺は肛門周囲、包皮、尾・腰背部の皮膚にある皮脂腺です。
治療には去勢手術が効果的で、去勢手術のみで腫瘍が退縮するケースが多いです。
去勢手術済みの雄犬・雌犬に発生した場合、去勢手術のみでは効果が不十分な場合は、腫瘍本体を切除する手術が必要になります。
会陰ヘルニア
去勢手術をしていない中高齢の雄犬にみられる病気です。
会陰部の筋肉が萎縮し、穴(ヘルニア孔)が開き、その穴から腸などの臓器や組織が皮膚の下に出てしまう病気です。
排便障害・排尿障害などが生じ、重症化すると死亡するケースもあります。
治療には、ヘルニア孔を整復する手術が必要になります。
☑︎性ホルモンに関する問題の改善
100%ではありませんが、高い確率で複数の問題の改善が期待できます。
犬ではマウンティング、攻撃行動、尿マーキングなどの改善が期待できます。
猫では、尿マーキング、猫同士のけんかなどの改善が期待できます。
性ホルモンに関する問題は、現れてから手術までに期間が空いてしまうと習慣化して、避妊手術を行っても改善しない場合があります。
☑︎望まない妊娠の予防
避妊手術前の雌と交尾をしてしまう可能性がある場合は、去勢手術をすることで妊娠を予防することができます。
③デメリットは?
☑︎太りやすくなる
個体差はありますが、ホルモン分泌の変化により、体に必要なカロリー量が減って太りやすい体になります。
同じフードを同じ量食べていても体重が増える場合があり、そういった場合は、カロリーの低いフードに変更する必要があります。
そのうえ、ホルモンの影響で食欲も増えるので、余計に太りやすくなってしまいます。
☑︎麻酔のリスク
避妊手術に限らず、100%の安全性を確保できる全身麻酔はなく、非常に低い確率で麻酔が原因で死亡してしまうケースがあります。
しかし、避妊手術は健康な動物に行うことが多いため、病気の治療として行う全身麻酔と比較して麻酔リスクはさらに低いです。
☑︎その他の変化
ホルモンの変化の影響で、行動や毛質が変わるなどの変化がみられることがあります。
☑︎繁殖できなくなる
去勢手術をすると子孫を残せなくなります。
④いつ手術すればいい?
マウンティング、尿マーキングなど性ホルモンに関する問題は、習慣化すると去勢手術を行っても改善されない場合があります。
雄犬・雄猫の性成熟の時期は6〜12か月齢で、この時期から性ホルモンが増加するので、性ホルモンに関する問題の改善という観点では、6か月齢以前のより早い時期に去勢手術を行うべきということになります。
停留精巣は6か月齢で診断がつきます。
停留精巣は腫瘍化のリスクが高いので、なるべく早期の去勢手術をおすすめします。
しかし、早すぎる去勢手術による性ホルモンの減少は、体の発育に影響するという報告があるので、当院では発育に影響のない範囲でなるべく早期である6か月齢前後での去勢手術を推奨しています。
まとめ
去勢手術は避妊手術に比べると重要性・緊急性は低いです。
性ホルモンに関する問題の改善を希望される場合、停留精巣の場合、妊娠の予防を希望される場合は6か月齢前後での去勢手術を強くおすすめします。
猫は去勢手術で予防できる病気にもともとなりにくく、停留精巣も少ないので
性ホルモン関する問題の改善と妊娠の予防が去勢手術の主な目的になります。
犬で今言った3つのケースに当てはまらない方は
病気の予防というメリットと4つのデメリットを比べてみて手術を行うかどうかを決めていただければ良いと思います。
病気の予防という観点では、緊急性は高くないですが、病気の予防を希望される場合はなるべく若い時期の去勢手術をおすすめします。
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