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なぜ外資系サラリーマンが新潟県三条市の公務員CMOになったのか?

2021年8月末でNetflixを退職し、新潟県三条市のCMOとして、市役所に勤めることになった。Netflixは世界でもっとも勢いのある会社の一つであり、その経営手法で有名でもある。良質なドラマや映画を配信しており、華やかなエンタメの世界で最先端にいるこの会社で働いてみたいと思われる方も多いと思う。では、なぜ私はそのような憧れの会社を辞めて、三条市へ行くのかを私自身の思考の整理も含めて書き留めておきたい。​

三条市で働く理由を分解する

すごく正直に言ってしまうと、求人サイトのビズリーチで三条市の募集を見たときに、直感的に三条市で働くべきだと思ってしまった。私は外資系でのキャリアが長く、スキルアップし、年収を上げていくために、転職を続けてきたので、転職回数は皆さんより多いほうだと思う。今までの転職でも直感的にビビっときたところのほうがよい結果につながることが多かった。人間の直感も侮れない。後から振り返ってみると直感は案外ロジカルであったことが多く、感情的、論理的にプラスなことが明白なので瞬間的に判断している、というところがあるのではないか。

あとは、一見すると世の中的な価値基準と違う(私からすると合理的ではある)判断をした現役ビジネスパーソンがいること(私のこと)が、誰かが同様に今までの一般的な価値観とは違う判断をするときに、背中を押してあげられるのではないかと思っている。多様性が声高に叫ばれているが、自身の責任は果たしたうえで、もっと自由に自分の人生を生きる社会であってほしいし、自分もそれを体現したいと考えた。

ただし、給料も大幅に下がる、単身赴任で行かなければならない、など一般的な考え方で進めるとデメリットのほうが大きい。それでもなお、行くべきだと決断した理由を分解して書き残しておきたい。

大きな理由は「三条市の強みと時代の流れ」、「街、組織としてのチャレンジ精神」、「自分の人生、キャリアにおいての合理性」の3点だ。

三条の強み、「ものづくり」、「アウトドア」

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「燕三条」という名称のほうがピンとくる方が多いかもしれないが、行政としては「燕市」と「三条市」に分かれており、金物などのものづくりがさかんな地域である。江戸時代、鍛冶からの歴史もあり、一流の職人さんたちが、世界で認められる一流のモノを生産している。これは三条市にとって、全国的に見ても突出した強みではないかと言える。包丁やキッチン用品などの日用品から工業用の刃物まで幅広く生産されており、これからどんな製品と出会えるのか、また素敵な製品を作られている方々とお目にかかれるのを楽しみにしている。

さらに、そのものづくりから発展して、三条市を特徴づけているのはアウトドアブランドではないかと考えている。スノーピークやキャプテンスタッグなどが三条市に本社を置いている。両社とも市内にキャンプ場を持っており、スノーピークは22年春にその直営キャンプ場「スノーピークヘッドクォーター」を拡張し、複合型リゾートも開発する。アウトドア製品だけではなく、「場」としての価値も高まっており、三条市はキャンパーの聖地と言っても過言ではない。米、野菜、果物など、地元で生産されている食材も豊富にあるので、アウトドアを楽しみながら三条の味を楽しむこともできるだろう。

「人の営み」を感じられる三条

単純にいいモノが作られている、ということだけではなく、現代社会における課題や求められていることと直結している点で「ものづくり」と「アウトドア」は将来的にも価値が高い。コロナ禍でリモートワークなど効率化が進み、Uberで食事を頼めば玄関前に配達される現代社会。利便性が高くなる、自分の時間が多くなるというメリットは大きいので、それ自体を否定するものではないし、どんどん効率的な働き方などは進めるべきだと思う。

ただ、その中で私は強烈な違和感を抱いた。そして、今回の感染拡大がなくとも、根源的な社会の流れとして超効率化社会に向かっていたのではないかと考えている。コロナ禍でそれが加速され、本来的に人に必要なことも、削られてしまったのではないか。それは、「コミュニケーション」「自然との関わり」に集約できる。

コミュニケーション

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一人でも生きていける、という方もいらっしゃるかとは思うが、人の本能として、コミュニケーションなしには豊かな生活はできないと考えている。人の脳は1万年変わっていない、と言われている。コミュニティでの協力がなければ、農作業も狩りも採集も、生きていくために必要なことができなかった時代と脳が変わっていない。つまり、コミュニケーションは人間の本能としてプログラムされており、コミュニケーションを促進するためにコミュニケーションすることで幸福感を得られるようになっているのではないかと思う。脳の進化論を別にしても、少なくとも私は素敵なコミュニケーションに喜びを感じる。(単に寂しがり屋なだけだろうか?!笑)

人間関係すべてに言えることだと思うが、信頼関係は何かを一緒に進めるうえで、もっとも重要な要素だ。何か重要なプロジェクトを進めるとき、信頼できない人とは成功を収めることは難しいのではないかと思う。そもそも、信頼できない人と一緒にいること自体、楽しくない。

では、信頼は何によって生み出されるか、ということだが、それはコミュニケーションだということは明白だ。以前はオフィスでその人が仕事をしている様子がなんとなくわかったり、立ち話をして人となりがわかったり、ランチに行ったり、飲みに行ったり、無意識的に、意識的にコミュニケーションを取ることが多かった。それが極端に減っている。リモートワークのメリットもあるので、リモートワーク自体を否定するものではなく、うまく組み合わせてやっていけばよいのだが、コミュニケーションの量、質ともに落ちているところでは、成功もないし、コミュニケーション自体の楽しみもなくなって、つまらない社会になってしまっているのではないか。オンラインミーティングではなかなかたわいもない話なんてしないし、30分間一気に仕事の話だけをして終わることも多かった。無駄だと思われるコミュニケーションの「アソビ」の部分は、実は結構必要なのではないかと思っている。

一緒にBBQをする、キャンプをするなどのアウトドアは、失われたコミュニケーションの「アソビ」の部分を求める人たちが蜜を避けた形で行えるアクティビティとして一層広まり、新しくやってみた人たちはその本質的な楽しさに気付いたのではないだろうか。より一層便利になっていく世の中で、その揺り戻しとして、人本来の営みとしてのアウトドアの将来性を感じている。

また、「ものづくり」も三条には人の息遣いを感じる製品が多いのではないかと思っている。私はその息遣いを全国の皆様にお伝えし、使っていただく方々とコミュニケーションをすることで、ご購入いただいた方にその商品のストーリーも含めての価値を見出していただき、幸福感を持って使っていただきたい。こだわりを持って作られた製品には、作っている人の思いやストーリーがあるだろうし、それを知ることで製品を使うことの喜びは一層深まる。

自然との関わり

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私は昨年、急に思い立って山登りをした。本当に衝動的に自然の中に身を置きたいと思った。そのときの森に包まれる安心感と同時に、鋭く研ぎ澄まされる自分を感じたことは本来の人の姿に戻った感覚があった。

マンションには植え込みがあり、オフィスにも観葉植物があること、都会にも小さいになりに公園があることが証明していると思うが、緑や土は人間に不可欠なものだ、ということが改めてわかったし、自然の中に身を置くことの感覚に改めて気づかされた機会だった。自然との関わりも同様で、人は自然の中で生活をしてきた「脳」が急に狭い部屋の中でパソコン画面と相対する生活に適応するはずもない。
なんだかちょっと生きている感じが薄いな、とか、仕事ばっかりで疲れたな、という人が訪れて生命力を取り戻せる場所、そんなことが実現できるのではないかな、と勝手に思っている。まだまだ県を越えて移動できるまでにはなっていないが、移動できる世の中になったときには、そんなライフスタイルも大事にできる人が多くなり、生きていることの感覚を取り戻すお手伝いをしたい。この困難な時代を乗り越えた後には三条に来てみたいな、と思う人がもっと増え、実際にお越しいただいた方には圧倒的なファンになってもらえる、それが理想だと思う。

チャレンジする街、考える姿勢のある市役所

今回三条について勉強させていただく中で、燕三条としての取り組みも含めて、地域としてチャレンジしているな、という印象があり、それも魅力的だと感じた。詳しくはここで書かないが、三条市・燕市および周辺地域の工場を一斉に開放し、ものづくりの背景を伝える「工場の祭典」は企画の切り口が斬新だし、自分も参加してみたいと思った。他にもおもしろそうな取り組みもあるので、自分で体験、取材をして今後ご紹介したい。

また、組織としても市役所は魅力があると感じた。三条市の滝沢市長は弁護士としてのキャリアを持ち、昨年11月の選挙で市長となった。新しいことを積極的に取り組もうとしている姿勢やTwitterをうまく使いこなしているところを拝見すると、フレッシュにこれからどんどんチャレンジをしていく市長なのではないか、と感じた。

私が言うのもいかがなものかと思うが、経歴だけをみると外資系上がりのゴリゴリ営業パーソン&マーケッターを落とさずに雇っている時点で、なかなか攻めていると思う(誤解なきように言っておくが、そこまでゴリゴリしていないので、ご安心を!平和な性格です!笑)。この5年くらい日本の企業や組織で働きたいと思っていた私だが、少なくともリーダーが失敗を恐れずにチャレンジする組織でないとまず結果が出ないし、働けないと考えていた。

三条について調べていた時に素敵だな、と思ったことがもう一つある。YouTubeにあった採用案内の動画だ。職員の方が作ったであろう映像で、求める人材像として、「自分とは異なる意見や価値観を受け入れることができる」、「相手の気持ちに寄り添いながら自分で決めることができる」、「変化を楽しみ、臆することなく一歩踏み出すことができる」ということが職員に求められること、という内容があった。これらは、まさに自分がやってきたことで、職員の皆さんがこのように思っているのであれば、一緒に働く仲間として心強いのではないかと思った。

自分の人生、キャリアにおいての合理性

ここからは私の個人的な話になる。社会人人生、ここまで必死に働いて、ずっと走り続けてきた。ジェットコースターにずっと乗っている感覚で、エキサイティングな日々を過ごさせてもらった。外資系で働いてきた、という話をしたが、一般的に外資系はあまり異動などはなく、私自身はスキルアップし、もっと収入を上げ、さらにエキサイティングな仕事を、ということでやってきたので、常に結果を出す、自分の市場価値を高める、ということを重視してきた。それはそれで楽しい日々だったし、サラリーマンとしてはそれなりに成功も収めているのではないかと自負している。

自分のキャリアもそろそろ折り返し地点を過ぎたかな、というところにきている。今までのキャリアについて、もっと突き詰めていくと、外資系メディアの日本支社で上級幹部になっていく、ということが既定路線かもしれない。ただ、果たしてその選択肢だけでいいのか、という問いをこの数年持ってきた。待遇は良いだろうし、社会的にも意義のある仕事だと思うので、それを否定しているわけではないし、またいつか戻ることもあるのかもしれない。ただ、正直なところで、視野が狭くなっていく感覚はあったし、本当にこのままで自分はよいのだろうか、という閉塞感は感じていた。経験してきたことを活かしながら、しっかり社会に貢献できて、残りのキャリアがもっと豊かに広がっていくような、ワクワクする仕事をしてみたい、と思っていたところに三条市の求人を見た。自分の性格上、こういったときは思い切って飛び込んでみる、ということを信条にしているので、思い切って応募した。ブラジルへ留学したときも、新卒で入った会社を早々に辞めてしまったときも、きらびやかなエンタメ企業に入ったときも、思い切って飛び込んできた。振り返って、それがすべて正解かどうかはタラレバになるのでわからないが、挑戦して、困難とぶつかってきたことを誇りに思っているし、その選択をしてきたこと自体は1ミリの後悔もない。

今までのプロモーションの経験も活かしながら、シティプロモーション、ふるさと納税の寄付額向上というテーマにチャレンジすることについて、今後の日本全体にも貢献できる可能性が広がっていることが魅力に思えた。東京から全国各地の観光PR事業をお手伝いしてきたことはあったが、どこにも世界に通用するような素敵なモノやコトがあったし、人や文化に触れることは私にとってもいつも新鮮で、感動することも多かった。しっかりと継続的にプロモーションするには、そこに根付いて、地元の方々から学び、本質的な強みを体感して、自分の言葉としてプロモーションする必要があるのではないかと感じていた。企業や自治体のプロモーションのお手伝いをすることを生業としてきたが、お手伝いではなく、主体として、多くの関係者としっかりコミュニケーションを取りながら、思いを伝えながら、人の温度を感じながら一生懸命仕事に取り組みたい。その中で三条の方々から改めて学ばせていただくことも多いのではないかと思っているし、私が残せるものもあるのではないかと信じている。また、今までと同様に戦友とも言える生涯の仲間と出会い、さらに人生が豊かになっていくことを期待している。

CMOの仕事内容

市のCMOとはどのようなことをするのかもご紹介しておきたい。第一のミッションはふるさと納税の寄付額アップにつながるプロモーションである。近隣自治体では年間で42億円以上の寄付金を集めるところもあるなかで、令和2年の三条市の寄付額は7.2億円となっている。市長は令和4年の寄付額目標を25億円に設定している。現状と比較するとなかなか背伸びをしている数字ではあるが、すぐに手を付けられそうな伸びしろはいくつかあり、時間が迫っている中でも打ち手はかなりあると考えている。

ふるさと納税のプロモーションということで、寄付額をあげるためにテクニックに走る自治体もある中で、私は一線を画したい、と考えている。なぜなら、テクニックだけで寄付額を伸ばしたところで、一瞬の税収が増えるだけで、その後の継続的で本質的な取り組みにつながらない限りは、長期的な発展は見込めないからだ。また、ふるさと納税に関する、小手先のテクニックは規制されていく方向にあり、ルールの範囲内だからと言って、テクニックに走り、翌年規制されて、税収が激減したらどうするのだろうか。継続的で本質的な取り組みとは、三条の「ものづくり」、「アウトドア」を中心として、三条を知っていただくこと、三条が持つブランド価値を高めていくこと、三条のファンになっていただくことだ。面接でも、大事にしたい価値観として、訴えさせていただいた。

よって、最大のミッションはふるさと納税の寄付額アップなのだが、その表裏一体のミッションとして、もっと大きな意味での三条市全体のマーケティングがある。それは、難しい時代になっている今、しっかりと時代の変化をとらえて、次の時代に向けての準備をして、三条市の魅力をプロモーションしていくことでもある。そして、人の流れが再開するときには、三条市に多くの方がさらに魅力を感じて、行ってみたい、また訪れたい、と思ってもらえる価値を等身大でプロモーションしていくことだと考える。

最後に

今回、いわゆるIターンをして赴任するわけだが、腰かけで田舎暮らしをしてみたい、などという気軽な気持ちで、三条に行くわけではない。今までもビジネスの最前線にいたという自負があるからこそ、次の最前線に赴き、プロとしての仕事を成し遂げたい今回のプロジェクトで成功を収めることは、三条市の皆様に間違いなくメリットもたらすことになる。歴史のある街で、いろいろな方のご意見もあるかと思うので、しっかりその思いも受け止め、お互いの話をして、皆さんのパートナーとして仕事に取り組んでいきたい。そして、成功にとって不可欠な要素は、三条市の皆様のご協力に他ならない。もちろん、自分は覚悟を持って懐に飛び込ませていただくが、悪い人間ではないと思うので、身構えずに本音で語り、思いを共有していただきたい。三条市の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

そして、最後の最後に早速のセールス活動で恐縮ですが(笑)、全国のお友達の皆さん、この記事を見てくださった皆さん、ふるさと納税は三条市で!

ふるさとチョイス(三条市返礼品ページ)

ふるなび(三条市返礼品ページ)

楽天ふるさと納税(三条市返礼品ページ)

さとふる(三条市返礼品ページ)

インスタ@masafumi.sawaやってます。これからは三条での暮らしなども投稿していきたいと思います。

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