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渡航解禁直前 ベトナムビジネス最前線〜太陽光発電事業の立ち上げ


日本で大ブームとなった太陽光発電

日本では2016に電力小売完全自由化となり、一般の方々が自宅の屋根にソーラーパネルを設置して家庭内で使用し、余った分を電力会社に販売するという太陽光発電が大ブームとなりました。2018年頃にはベトナムへ視察者の中にも何人か太陽光発電事業をされている方がいて、「飛ぶように売れる」とおっしゃっていました。

ベトナムの電力事情

ベトナムにおいても2017年頃から太陽光発電許認可の法整備が始まりました。というのも、ベトナムは私が移住した2011年はもちろんのこと、2020年現在においても圧倒的に電力が不足しています。以前は定期的に計画停電が行われていましたが、タイミングよく新型コロナウィルスの発生により、一時的に電力消費量が下がり今は首の皮一枚つながっているという状況です。一方で、ベトナム経済は引き続き成長路線で、2021年には中国からベトナムへの生産拠点移転も数多く予定されているため、電力不足および電気料金の高騰は大きな課題となっています。しかしながら、ベトナムにおける原子力発電計画は現在ストップしていて、火力・水力による環境影響の大きい発電が中心となっています。そこで、世界的に実績も増え、発電効率の上がってきた太陽光発電に注目が集まっています。

電気料金が課題となっている工場を訪問

2020年10月、私はホーチミン市の北にあるクチ市のとある工場へ訪問させていただきました。この工場では、日本およびベトナム国内向けに精密機器のパーツを製造しています。業務は手作業ではなくほぼ機械にて自動化されているため、従業員の姿はそこになく、高さ幅共に2メートル程の機械が何十台も稼働していました。機械を効率良く稼働させるために、エアコンもフル稼働しています。この機械は24時間稼働しているため、月間の電気代は少ない時で70万円、多い時で100万円にもなるそうです。この地域の最低賃金は600万ドン(約3万円)程度なので、人件費に置き換えると30人分相当の電気代がかかっていることになります。かつては技能実習生として日本で働いていたこともあるベトナム人社長はこの電力事情を数年前から危惧されていて、太陽光発電のニュースも定期的にチェックしていたそうです。

太陽光パネル設置の実態

太陽光による発電量は、パネル設置面積×日照率で予測を出すことができ、日照率はベトナムの気象庁のような機関から地域別データが公開されています。この日照率をベースとして、自宅や工場で使用する電力量をまかなうためには、何平米のパネルを設置する必要があるのかを計算します。もし太陽光だけで電力をまかないきれなければ、足りない分は電力会社から通常通り購入します。逆にあまった場合は電力会社に買い取ってもらうことができます。日本においては、この電力買取スキームがあることから、あまった電力販売で老後生活の足しになればということで、設置費用200万円程度がかかっても、地方を中心に売れに売れたという経緯があります。

2020年10月時点でのベトナム法令では地面へのパネル設置許可がなかなかおりない為、建物の屋上や、倉庫やガレージを建ててその屋根にパネルを設置する必要があります。そのため工場や倉庫にとっては好条件というわけです。同時に大きな課題もあります。かなりの重量である太陽光パネルを屋根に設置するため、施工ミスにより雨漏りや漏電、最悪の場合屋根の崩壊もあり得ます。

商談成立へ

今回クチ市の工場へは、私のビジネスパートナーであり、日本で内外装工事業30年のプロフェッショナルと共に訪問していたのですが、ベトナムの工場は鉄骨量が少なく、屋根全体に設置すると最悪建物全体が崩壊する可能性があると指摘していました。設置するのであれば、鉄骨の上部である屋根の端だけにしておいた方が良いと言います。ベトナム人社長は少しガッカリしていたように見えましたが、私のビジネスパートナーが「電気代を低減しようとして、本業の機械や商品が壊れてしまっては身も蓋もない。太陽光パネル自体は20年のメーカー保証があり、そう簡単に壊れるものではない。ただし、施工にミスがあると1週間後に雨漏りするようなことはいくらでもありえる」と熱く語った結果、社長は「○○さんなら信頼できる。私は日本に住んでいたこともあるからわかる」と納得し、商談成立に至りました。

まとめ

このように、新規ビジネスが生まれましたが、今後は中国のパネル工場からの直仕入れ売電スキームの整理メンテナンス部隊の教育などやらなければならないことは多いです。それでも、電気のようなインフラ系事業は業界規模が大きいため、向こう20年に渡り拡大していくものと思われます。2020年代人口ボーナスや中国からの生産拠点移転により黄金期を迎えるベトナムで、みなさんも起業してみませんか?

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