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自宅療養日記(2022年2月10日)

2022年2月10日
 歯磨き後に検温する。37度3分で問題はない。血中酸素飽和度(SPO2)は96%で、相変わらず、美紀より低い。『ドリフ大爆笑』を見ながら、30分程度のストレッチ、その後はiPhoneでニュースを時々チェックしつつウォーキングをする。
 
 『Sputbik日本』は、2022年2月10日 2時45分更新「コロナウイルスの根絶は不可能=米ファウチ博士」において、COVID-19の根絶が不可能だろうと次のように伝えている。
 
米国の感染症対策トップのファウチ博士は、コロナウイルスを完全に根絶することは不可能だが、感染防止対策に伴う制限は近いうちにも解除される可能性があるとの見方を示した。フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。
ファウチ氏は「十分な数の人たちがワクチンを接種または過去の感染によって保護を獲得し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)関連の制限がまもなく過去のものとなる時が近づいていることを願っている」と強調した。また同氏は、地域の保健当局は、新たな感染流行が発生した場合に制限措置を再導入する可能性があると指摘した。
ファウチ氏はまた、新型コロナウイルスワクチン追加接種の間隔について、各人の健康状態に左右されるとし、「異常がなく、健康な30歳で、いかなる併発症も持っていない場合は、4〜5年ごとに追加接種が必要になる可能性がある」と語った。
 
 これはパンデミックからエンデミックに向かうという期待だ。感染症の中で根絶したのは天然痘だけである。ポリオもそうなることが期待されているが、まだ途上だ。天然痘ウイルスはDNA型である。また、ポリオウイルスはRNA型であるが、自然宿主は主にヒトだけである。一方、新型コロナウイルスはRNA型で、自然宿主はヒトのみではない。根絶するには条件が悪い。それができるなら、インフルエンザはすでに過去の感染症になっている。
 
 日本の歴史上、最も恐れられた感染症は麻疹である。麻疹ウイルスはリンパ組織に感染、免疫力を下げる。それにより細菌性の感染症などにかかり、命を落とすことが多い。オミクロン株による死者はその感染症自体ではなく、それに伴う他の疾病が原因であることも少なくない。それを根拠にオミクロン株を軽く扱うとしたら、麻疹の歴史を振り返ると、真に愚かと言うほかない。今ではワクチンや抗菌剤があるので、医療資源の整った先進国において麻疹はかつてのようなシビアな感染症と扱われていない。根絶できなくとも、このような療法が確立されれば、人類は新型コロナウイルスと共存できるだろう。
 
 帯状疱疹のかゆみがどうにも耐えられないので、九時過ぎに美紀が診療所に電話で相談する。感染の事情を話すと、柔軟に対応するとして電話での診療を認めてくれる。ただ、帯状疱疹をいつも診てくれる医師が休みだ。代わりの医師は、電話だけでは何とも言えないので、以前処方した薬を再度出すことくらいしかできないと言う。
 
 薬を処方され、受付と相談すると、診療所の向かいにある薬局で受け取ることが決まる。
 
 本人は外出できないので、濃厚接触者の兄が行くほかない。しかし、感染の可能性もあるので、病人のいる診療所に入ってきて欲しくない。そこで、診察料の支払いは本人が自宅療養解除後にすることに落ち着く。薬の受け取りは薬局と打ち合わせておくので、中に入らずにできるようにしておくとのことだ。
 
 外に出ると、雪が降っている。小降りであるが、傘をさして歩き始めると、手や顔が冷たい。いつもなら診療所まで数分の道のりであるけれど、歩道の水たまりを避けつつ、進むので、もっとかかる。しかし、半分くらい歩いたところで、靴の中に水が染みてくるのを感じる。
 
 人通りは少ない。すれ違う人も、いつもと違い、ほとんどいない。たまに役に立たない傘をさして濡れながら、オヤジが自転車で追い越して行く。
 
 薬局に着いて、自動ドアを開けると、「いらっしゃいませ」と女性の声がする。薬局はうちのダイニング程度の広さで、奥に会計があり、女性が立っている。中に入らず、無言のまま、首を横に振り、左手をひらひらさせる。すると、彼女が誰なのか気づいたようで、「あー、聞いています」とこちらに近寄ってくる。
 
 開いたドアを挟んで、お金とおくすり手帳の入ったジップをハンカチで掴んで彼女に渡す。それを受け取ると、「少々お待ちください」と戻って行く。
 
 自動ドアが閉まり、そのまま外で待つ。傘をさしているけれども、雪はさっきより強くなっている。雪が顔や手に吹きつけてくる。
 
 2、3分して、「お待たせいたしました」の声と共に、自動ドアが開く。さっきの女性からジップを渡さ、中には紙袋と小銭が入っている。おくすり手帳を持参してきたので、言われていた金額より少なくなったと彼女が説明する。
 
 「足場の悪い中、わざわざ来ていただいて申し訳ありませんでした。どうかお大事に」の彼女の言葉にもうなずくだけで、薬局を後にする。
 
 マンションに戻って薬などを渡すと、美紀から郵便を出して来て欲しいと言われる。保育園に細菌検査を東京食品技術研究所に郵送してくれと電話があったとのことだ。近所の郵便局はここのところシャッターを下ろしている。ポストはその前にあるが、切手を買うにはセブンイレブンに行く必要がある。けれども、セブンと郵便局は方向が逆だ。さっきと同じように、ジップに小銭を入れて、店員に渡すことにする。しかし、まったく無言というわけにはいかない。察しのいい店員に当たるようにと思わず祈る。
 
 セブンイレブンにお客はほとんどいない。年配の男性の店員に茶封筒を見せ、ジップをレジのカウンターに置く。すると、彼は「切手ですか?おいくらのをどういたしましょうか?」と尋ねるので、「84円」とつぶやく。ところが、「どういう組み合わせにしますか?」と聞き返す。茶封筒なのだから、こだわりのあるはずがない。「何でもいい」と低く答える。
 
 ただ、支払いになると、彼は察しがいい。セルフは画面の文字が見えないので、不便だ。もたついた姿を見ると、彼は「私がやりましょう」と気を利かせてくれる。セルフレジは視覚障害にとってコンビニエンスではない。
 
 セブンから出て、郵便局に向かう。局のATMのコーナーに入り、誰もいないのを確認して、マスクを顎に下ろし、切手を舐めて封筒に貼ろうとしたが、ハッとする。傘についた水滴で人差し指を濡らし、切手を貼る。親指でくっついたことを確かめてから、外に出て、ポストに投函する。
 
 マンションに戻ると、ひと仕事終わったとどっと疲れが出る。誰かに感染させるわけにはいかないと緊張する。
 
 こんな状況の時、ロボットが代りに薬を取ってくれたらありがたい。『NHK』が2022年2月9日 16時01分 更新「ロボット内蔵ソファー 『ロボ家具』ネットで話題に 福岡 大川」において次のように伝えている。
 
日本一の家具の産地、福岡県大川市を広く知ってもらおうとソファーにロボットを内蔵した「ロボ家具」が製作され、ネット上でも話題となっています。
この「ロボ家具」、一見すると座り心地のよさそうな通常のソファーですが、座面の下に荷物を運ぶのに使う自動搬送ロボットが内蔵されています。
リモコンの操作で前後左右の移動や回転することも可能で、部屋の模様替えなどが簡単にできそうです。
およそ200の家具メーカーが集結する大川ならではの家具として市が企画し、市内の家具メーカーと福岡市のロボットメーカーが協力して製作されました。
内部のロボットを感じさせない自然な作りが特徴で、なめらかにカーブした手すりなどの職人技も魅力です。
販売はされていませんが、動画が市の特設サイトなどで公開され話題となっています。
大川市インテリア課の国武正寛さんは「ロボ家具をきっかけに大川に関心を持ってもらい、観光や家具の購入など市の活性化につなげたい」と話していました。
製作した家具メーカーの酒見達郎専務は「座り心地のよさやロボット感を出さないことにこだわりました。どういう要望にも応えていくという思いで製作しました」と話していました。
 
 オックスフォード大学准教授マイケル・A・オズボーンがカール・ベネディクト・フライ研究員と共著で発表した論文『未来の雇用( The Future of Employment』(2013)によると、AIやそれを搭載したロボットが苦手とするものは三つある。「社会性(Social Intelligence)」・「創造性 (Creativit)y」・「手先の器用さ (Perception and manipulation)」である。
 
 ロボットは手先が器用ではない。それを要求するのは合理的ではない。確かに、イノベーションによって今より器用になっていくだろう。けれども、それが費用対効果として見合うかどうかは疑問である。新幹線の清掃は、『沁みる夜汽車』の「生きがいをくれた”ありがとう”~東海道新幹線~」で描かれたように、名人芸である。これを代行できるロボットを開発するには、おそらく膨大なコストがかかる。そこまでして、この仕事を人間から奪う利点はない。
 
 むしろ、ロボットにはエンターテインメント性があり、それを生かした方がよい。江戸時代には知られていた茶運び人形は精巧な動きを期待されていない。そこには幼い子がお茶を運ぶような愛嬌がある。このからくり人形はエンターテインメントとして楽しまれていたというわけだ。
 
 苦手もあるものの、リプレイスメントは進むだろう。『未来の雇用』によれば、米労働省が定めた702の職業を先の3項目ごとに分析すると、雇用者の47%が10年後には職を失うと言う。21世紀のラッダイト運動が起こるかもしれないが、かつてと同様、流れは変わるまい。
 
 現在のAIはデータ学習型と知識推論型の二つに大別できる。前者は、ニューラルネットワークに基づくディープラーニングにより膨大なデータを学ばせ、パターンを発見する。顔認証システムが好例だ。後者はオントロジーと呼ばれる階層構造で知識を覚えさせ、それを手がかりに推論する。病気の診断システムがその一例である。ただし、いずれも因果性ではなく、相関性を見出せるだけである。データが良質であったとしても、因果性はベイズの確率の範囲内で確かめられる程度である。
 
 AIは人間が見逃してきた相関性のパターンを発見できる。しかし、隠れた因果性の変数を見つけることは不可能である。だから、AIは読者になれるけれども、作者にはなれない。人間が一生かけても目を通せない膨大な量の文献を読むことができる。表現者はしばしばAI作家の登場する作品を作るが、それはまったく想像力が貧困である。この驚異的な読者に向けて作品を作ることこそ表現者のやるべきことだ。
 
 夕食はカボチャともつのチゲ、食後は緑茶、パール柑をとる。美紀は満腹感が生じず、食べても体重も落ちていると話している。ウォーキングは10398歩だ。都内の新規陽性者数は18891人である。
 
参照文献
Carl Benedikt Frey† &d Michael A. Osborne, "THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?", University of Oxford, September 17, 2013
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
「コロナウイスの根絶は不可能=米ファウチ博士」、『Sputnik日本』、2022年2月10日02時45分更新
https://jp.sputniknews.com/20220210/10135182.html?fbclid=IwAR0Mxt3GGw2-srBA3jAK4P0SOdalYr6D1ybyyZJKdnKmYAsR1aUqWS6vMa8
「ロボット内蔵ソファー 『ロボ家具』ネットで話題に 福岡 大川」、『NHK』、2022年2月9日 16時01分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220209/k10013475621000.html?fbclid=IwAR2_H3yHv9d3-DkFwJX8Hce4jsoVhkOsvwaVb0KT8cDZexzyfxwUjUYhXfg
 

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