本の面白さは関西弁のギャルから教わった
大学生になるまで、ほとんど読書はしてこなかった。
高校生の時、図書室へ行った記憶は無い。
部活漬けの毎日で、寝ても覚めても吹奏楽だった。
ただ小さい頃母が読んでくれた絵本は
何冊か暗唱していた。だから本は好きだったんだろう。
実家を離れ、大学生になり、親しい友達はいなくなり、京都で孤独を存分に味わった。
友達を作らなきゃ。
ひとりぼっちで学食なんてありえない。
高校の時は友達に囲まれていたのに
大学生になると、とたんに1人になった。
薄っぺらい友達作り、一緒に授業を受けるだけの
くだらない友達作りが次第に面倒くさくなった。
そんな時に、同じゼミのある女の子に出会った。
身長が高くて、茶髪のロングヘアー、ばっちりメイクでいつもひとりでいる印象で、手には文庫本があった。
なぜ仲良くなったのかもう覚えていないが
彼女が私に話しかけてくれるようになった。
「ウチな、一人になれない人間きらいやねん。」
隣でランチする女子大生の群れを見ながら言っていた。
「あとな、本読んでる時に何読んでんのー?って絡んでくるやつもきらいやねん。」
一瞬で惚れそうになった。笑
彼女は友達を作らなきゃなんて1ミリも考えていない。
話したいと思ったら仲良くなる。
一人になりたい時は本を読む。
一人を楽しめる生き方にかっこいいと思った。
なぜか私と気が合い、よく一緒に遊んだ。
一人の時間が好きな一方で喋り出したら止まらないのも彼女の特徴だった。
テキーラもウォッカもビールも日本酒も何を飲んでも顔色ひとつ変えず、タバコを吸いながら焼肉を焼いてくれるような子。
一緒に歩くとよくナンパされていたなあ。
もちろん全部無視。笑笑
彼女は私にコテコテの関西弁で
おすすめの小説のあらすじを説明してくれる。
これがいわゆるギャップというやつだ。
しかも勧めてくれる小説はまさかの時代小説。
浅田次郎の『天切り松 闇がたり』シリーズは一番面白かった。
そんな訳で、私の一人暮らしの部屋には文庫本がどんどん増えていった。
いわゆる普通の女子大生がするようなことを
彼女とした記憶はない。
古本屋へはよく行った。
仏像を見に行ったり
作家の作品展を見に行ったりした。
「他の子とは行きたいと思わんねん。蒸し子ちゃんなら、こういうの好きやと思うねん。」といつも誘ってくれた。
私は彼女から大切なことを教わった。
一人になるのもええやん。ということ。
人の目ばっかり気にせんと、自分のしたいことしたらええ。ということだ。
そして何より本の面白さを教えてもらった。
食堂でササミチーズカツを頬張りながら
コテコテの関西弁で
彼女が読んだ本のあらすじを
聞く時間が大好きだった。
彼女は今は日本にいないが
きっと我が道を進んでいるだろう。
久しぶりに会いたいなあ。
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