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お前なんかもう死んでいる〜プロ一発屋に学ぶ「生き残りの法則50」〜 有吉弘行

今日は、私が今まで読んだ中でトップクラスに好きな本を紹介したい。

https://www.amazon.co.jp/お前なんかもう死んでいる-プロ一発屋に学ぶ「生き残りの法則50」-双葉文庫-有吉-弘行/dp/4575713864

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どうしようもなく落ち込んだ時や、たまに人生に絶望を感じた時などについ読み返してしまうのがこの本であり、自分にとって特別な一冊だ。今やテレビで見ない日はないほどの大物芸人、有吉弘行さんの自伝的エッセイである。
好きな本はと聞かれたらその時によって多少変わるけれど、この本はいつでも必ず挙げているほど好きな、私の一種のバイブルです。

有吉さんといえば、若手時代に猿岩石というコンビとして人気番組から一世を風靡したが、そこから仕事のなくなった不遇の時代や解散を経験し、毒舌キャラで再ブレイク。今や人気MCとして各局に冠番組を持つ異例の経歴や怒涛の芸人人生でも知られる。

 この本は有吉さんが毒舌や有名人にあだ名をつける芸で再ブレイクしてから数年経ったタイミングで出版されており、その当時も彼はテレビで引っ張りだこの存在だったが、本書ではそんな売れっ子からは想像できないほどネガティブで謙虚な言葉が綴られている。

まずこの本の中で多く語られているのは、番組でブレイクしてから次第に人気がなくなっていく過程、そしてついに仕事がなくなって芸人として腐っていた時期のエピソードだ。猿岩石としてブレイクした当時、数々のテレビ番組出演、著書やCDやグッズを出すなど最高月収は2千万円にもおよび、芸人としては順風満帆のスタートだった。


ここで注目したいのが、これだけブレイクしていた当時も有吉さんは「この状態は長くは続かない」と考え、家賃の高い部屋に引っ越したり私生活で豪遊することもなく、多くを貯金していたということ。そんな元々倹約家で、ある程度計画性も持ち合わせていたはずの有吉さんだったが、そんな彼にさえ芸能界の厳しさは容赦なく襲いかかる。

「月収2千万からゼロに至るまでは、4年ぐらいでした。給料100万時代が2年くらいあって、そこから歩合制になって、あとは転がり落ちるようにどんどん減っていって(中略)、本当にゼロになったんです。」(本書より)

あんなにあったはずの芸人の仕事や収入も少しずつ減っていき、かつての人気芸人も全く需要のない存在となってしまう現実を我々は目の当たりにする。その上、有吉さんの場合は一度ブレイクして世間に顔が知られてしまっているばかり、「蔑まれたくない」というプライドが邪魔をして、芸人仕事のない時期に他のバイトもできずに家に引きこもって過ごすという「地獄の生活」が始まる。これは多くの一発屋芸人やブレイクした芸能人の多くが抱える知られざる苦悩なのだと、彼の独白で芸能界の闇の一端が明らかになる。

私が本書の中で最も衝撃的だったエピソードが「午後4時の電話」である。それは仕事がなくなったどん底時代に、唯一やらなくてはいけない仕事が「午後4時に事務所に電話をかけて、次の日の仕事の予定を確認する」というもので、それは当時の彼にとって毎日「明日は仕事がない=お前は必要とされていない」ことを確認する悪魔のような事務所のシステムだった。

一日ほぼ家にいて午後4時に仕事の確認を電話するだけの生活が7〜8年も続いたというのを知った時、彼が今も芸人を続けている事実が奇跡にすら思えた。

普段テレビに映される華やかな世界こそ芸能界のイメージであるが、この著書ではそんな世界の裏にある恐ろしさが次々と暴かれる。それは紛れもなく、芸能界の天国と地獄を見た有吉さんにしか語れない言葉だ。


どん底から奇跡的に再ブレイクを果たした稀有な存在である有吉さんは、どんなに仕事が増えて人気が出ても、長い間地獄の景色を見た経験から決して驕ることなく今も仕事に向き合い続ける。

芸能界の天下だけでなく、今年は結婚という新たな幸せまでも手に入れた。そんな彼の想像を絶する経験と教訓は、きっと私たちにも仕事やお金、人生への向き合い方を問うてくる。この本に溢れる彼の生き様を、ぜひあなたにも目撃して欲しい。

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