全国自然博物館の旅【34】岐阜県博物館
戦国時代のごとく全国各地で大勢のゆるキャラが名を上げているように、博物館でも可愛いマスコットキャラクターが次々に生み出されています。中でも、岐阜県博物館には魅力的なキャラクターが3人(1人と2頭)もいるので、子供含め多くの来館者は大喜びです。
キャラクターたちと共に館内を巡れば観覧の楽しみは倍増し、各キャラの言葉を通して展示への理解が深まります。来館者を引き込む工夫が満載の岐阜県博物館を訪れれば、充実した学習体験を味わえます。
深緑の公園の中に立つ自然科学探究基地
関市に位置する緑豊かな「岐阜県百年公園」。アスレチックがサイクリングコースが整備された岐阜県民の憩いの場となっており、たくさんの人々の笑顔であふれています。
目指す博物館は百年公園の中に立っており、穏やかな爽快な雰囲気の中、ゆったりと学習することができます。多様な環境に様々な生命が息づき、なおかつ恐竜の化石も見つかっているという素晴らしき岐阜県。博物館での学びが楽しみです。
公園入口付近の駐車場に車を停めたら、徒歩で博物館へと向かいましょう。坂道には恐竜の足跡がプリントされており、彼らの歩みを追いながら楽しくウォーキングできます。
諸々の事情で徒歩が辛い方は、無料のスロープカーを活用しましょう。博物館前のスロープカー降り場には、足跡の主の恐竜たちについての解説があります。
本館は1971年に岐阜県置県100周年記念事業として建立が決定し、1976年に開業しました。岐阜県民の方々の想いが詰まった施設であり、岐阜県産の貴重な学術標本が多数展示されています。そのクオリティはマニアが一瞬で引き込まれるほど素晴らしく、観覧を通じて来館者は岐阜県に惚れ込むこと必至です。
岐阜県の森羅万象を探る観覧の旅。心強い仲間ーー探検博くん、アロちゃん、デスモスくんと一緒に神秘の世界へ出かけましょう。
岐阜県の大地にあふれる神秘を見に行こう!
復活せよ、岐阜県の恐竜たち!
エントランスから即、(アロちゃん含めて)恐竜たちがお出迎え! メイン展示への期待が高まります。アロちゃんの可愛いさは最強ですね(笑)。
受付でチケットを購入したら、エレベーターで3階へ上がります。メイン展示エリアへの道中にも様々な工夫が施されており、館内には学びと楽しさがあふれています。アロちゃんと共に謎を解きながら、観覧を進めていきましょう。
本館の展示は、前座だけでも相当なボリュームの学習ができます。多種多様な鳥たちの剥製標本や天然記念物の展示もさることながら、恐竜たちの脳の実寸大エンドキャスト(空洞部分の型)は他の博物館ではなかなかお目にかかれない資料です。種類ごとに脳の大きさを比較し、恐竜たちの生き方と知能の関係について考えてみましょう。
インフォメーションエリアに突入すると、いよいよメイン展示のスタートです。かっこいい恐竜や様々な古生物のラッシュに、ワクワク感は一気に高まります。
ユタケラトプスやミノタウラサウルスなどの珍しい恐竜たちに、マニアも大満足!
魅力的な古生物のみならず、インフォメーションエリアでは岐阜県の顔となる現生動植物の展示を拝めます。緑深き山々と清廉な河川環境を有する岐阜県には、美しい生命が無数に息づいていると教えてくれます。
本エリアにて皆様が度肝を抜かれる展示の1つは、岐阜県で見つかった恐竜の卵だと思われます。そう、岐阜県からは貴重な恐竜化石が産出しているのです。
いよいよ、可愛いアロちゃんが本領を発揮。インフォメーションエリアの向こうでは、メインホールの恐竜たちが来館者を待っています。岐阜県の大地に君臨していた恐竜たちの世界へと飛び込みましょう。
本館のメインホールは恐竜たちの世界。岐阜県や海外の恐竜たちが、雄々しく立ち並んでいます。
幸いなことに、筆者は学芸員さんの解説タイムに訪れることができました。それぞれの恐竜たちの特徴や、岐阜県産の恐竜たちについて、詳しくレクチャーしていただきました。プロによる展示解説は各博物館で実施されていますので、学習理解を深めるために、ぜひとも聴講しましょう。
岐阜県では、貴重な恐竜化石の発見が成し遂げられています。そのうちの1つが、白川村の山の中にて発見された足跡化石です。足跡からは当時の生き物の大きさ、歩き方、移動速度などたくさんの情報が得られます。白川村の足跡化石は、どのような種類の恐竜たちがどのような状況で刻んだものなのか、本展示にて太古の真実を学べます。
大人も子供も喜ぶかっこいい恐竜と言えば、ティラノサウルスやアロサウルスに代表される肉食恐竜です。最強の陸上肉食動物と謳われる彼らの解剖学的構造はとても興味深く、その体の特徴1つ1つから戦士としての高い能力を感じ取れます。洗練された肉食恐竜たちの勇姿、細部までじっくりと観察してみてください。
ホール奥の展示ケースにも、魅力的な標本がズラリと並んでいます。恐竜はもちろん、海洋爬虫類や翼竜など同時代の竜たちの展示も充実しています。中生代の数々の生命に触れながら、太古のロマンに浸れます。
ダイナミックな恐竜たちに感動をもらったら、その流れで自然展示室1へ向かいましょう。時代は中生代から新生代へ移り、アロちゃんからデスモスさんにバトンタッチです。
郷土の生命史と生態系の秘密を学び極めよう
自然展示室1では、古代から現代に至るまでの岐阜県の自然環境、そして驚異的な生態系のメカニズムについて学べます。岐阜の超壮大な自然史に触れる大冒険に、我らがデスモスさんが導いてくれます。
エリアに入った直後、目に飛び込んでくるのはデスモスさんの親戚・デスモスチルス類です。岐阜県ではデスモスチルスの頭骨が世界で初めて発見されており、本県にとって特別な古生物となっています。謎に満ちた古代哺乳類のミステリーに迫ってみましょう。
岐阜県から産出する化石の地質年代はとても幅広く、古生物マニアにとって魅惑のフィールドとなっています。本展示では、時代ごとに多様なはるかな古生代から、時間の流れを歩みつつ、地球の歴史に想いを馳せてみてください。
岐阜県では、新生代の生物化石もたくさん見つかっています。ゴンフォテリウムやヤベオオツノジカといったかっこいい大型哺乳類たちの姿に、来館者は強く関心をそそられるでしょう。古代哺乳類の足跡やマツボックリの密集化石など、マニアックな標本について学べるのも嬉しいところです。
怒涛の古代を駆け抜けると、現代の自然環境展示へと移ります。たくさんの山々を有する岐阜県は、まさに野生動植物の宝庫。展示を見れば見るほど、森の中へ出かけてみたくなります。
岐阜県には多数の高山が存在し、そこには亜高山性・高山性の生態系か築かれています。厳しい天空の世界にはどんな動植物がたくましく生きているのか、本エリアでは多様なスタイルの展示で体系的に教えてくれます。
岐阜県には海がありません。その代わりに、たくさんの大きな河川、丘陵地帯の湧水湿地、水郷地帯の溜池や水路など、壮大な淡水環境が広がっています。岐阜県の水域特性を学びつつ、清廉な水の世界に棲む生命を見ていきましょう。
水域環境と同じく重要なのが森林です。豊かな森は地球環境維持のために必要であると共に、我々人類に多くの生態系サービスをもたらしてくれます。森林環境の意義と大切さについて、本展示でしっかり学びたいところです。
筆者が度肝を抜かれた展示は、水域生態系の食物連鎖とエネルギーの流れを解説する特殊オブジェです。逆さになった六角錘のオブジェには、プランクトンから大型魚に至るまでの捕食・被食の関係と、水深ごとの様々な自然エネルギーの動態に関する情報が詰め込まれています。
正直、「考えた人すごすぎる!」と思いました。これほど複雑かつ多量の情報を一元的に解説してくれるなんて、本館の創意工夫には脱帽します。
自然界の秘密をシステマティックに学んだら、それを環境問題のために活かしていかなくてはなりません。
岐阜県でも深刻化する外来種問題。展示を通して、現状を理解すると共に、我々は身近なところからどのようなアクションを起こすべきなのか考えてみましょう。
素晴らしき岐阜の大自然! 多様な生命と出会える探検フィールド
自然展示室2では、生命と自然環境についてのさらなる学びが待っています。
来館者がまず初めに驚くのが、生物系統の立体展示です。様々な分類群の生物標本が系統的に展示されており、生命進化の過程を視覚的に学ぶことができます。動植物の分類単位に関してもわかりやすく紹介されていますので、生物界を総合的に理解するのに最適な展示の工夫だと思います。
先述の通り、岐阜県内には清廉な淡水環境が豊富に存在します。淡水域の王者といえば、世界最大の両生類であるオオサンショウウオ。本館では、成体の液浸標本や骨格標本だけでなく、なんと卵の標本まで見ることができます。両生類マニア、大歓喜!
生命あふれる岐阜の山林。本エリアでは、森の動植物の生態とバランスについて教えてくれます。自然界では、食べる者と食べられる者が絶妙な数で保たれ、美しく調和しています。どのような生物も、自然環境の維持において重要な役割を果たしているのです。
続いては、県内に生息する鳥類についての展示です。本コーナーにおいては、どの鳥がどんなタイプ(留鳥・夏鳥・冬鳥)なのか明確に示して解説してくれています。季節ごとの鳥たちの分布を知れば、生態系の新たな実像が見えてきます。
さて、昆虫マニアの皆様。岐阜県と言えば、絶対に忘れてはならない昆虫がいますね?
そう、ギフチョウです! 岐阜県の名を冠し、「春の女神」の二つ名を持つ本種は、とても人気のあるチョウです。気高く可愛いギフチョウの秘密、とことん知りたいですね。
創意工夫された本館の展示には、本当に驚きを禁じ得ません。本館を訪れたことにより、岐阜県の自然環境に強烈な関心を抱きました。
太古から現代に至るまで、岐阜県には神秘がいっぱいです。本館の自然科学展示には、きっと全ての生き物好きが心を動かせられるでしょう。
岐阜県博物館 総合レビュー
所在地:岐阜県関市小屋名1989
強み:岐阜県産の恐竜や古代大型哺乳類をメインに据えた迫力と情報量満点の古生物展示、学術標本とキャプションを明瞭かつ魅力的に見せる工夫満載の展示スタイル、膨大な調査研究に支えられた岐阜県の自然環境と生態系についての学術的知見
アクセス面:百年公園には広い駐車場があるので、車での来館をオススメします。JR岐阜駅からレンタカーを運転して行けば、約30分で公園の駐車場に到着します。公共交通機関を利用する場合、JR岐阜駅か長良川鉄道の関駅から路線バスに乗って向かいましょう。公園の駐車場から博物館まではややきつい勾配の坂道があり、きつそうならば迷わず無料のスロープカーを利用してください。
置県100年を記念して建立された博物館の実力はすさまじく、あらゆる生き物好きを虜にしてしまうほどの魅力と学術情報にあふれています。白川村の恐竜の足跡をはじめとする貴重な古生物化石、超広大な緑深き山々の生態系、圧巻の流域面積を誇る河川環境といった本県のアドバンテージが各展示にフルに活かされています。次から次へと繰り出される工夫満載の解説展示に圧倒され、来館者は岐阜県の大自然の魅力に呑まれていきます。
探検博くん・アロちゃん・デスモスさんといったオリジナルキャラクターを創出し、展示の解説役を任せている点も素晴らしい工夫だと思います。親しみやすいキャラクターは子供のみならず大人をも魅了し、彼らの口から伝えられる知識がスムーズに頭に入ってきます。
あらゆるカテゴリーの生き物苦手なおいて、圧倒的な数の学術標本が展示されているのも誠に素晴らしいと思います。まさしく、生物マニアが何時間でも楽しめる超ハイクオリティ博物館です。次々と発見される恐竜化石の研究も含めて、岐阜県の自然科学事情から目が離せません。
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